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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

週間ランキング10位圏内

シンデレラは機械仕掛けのもぐもぐ姫

作者: 蹴神ミコト

空想科学の日間1位、週間4位、月間8位ありがとうございます!!



『人間には知性がある、それは困っている誰かを助けたり。皆が幸せになれるように頭を使うためだ』

『もう、この世に人間なんていない。ただの獣か悪魔だ、絶滅してしまった方がいいんだ…』

『シンデレラ、人類を絶滅させてくれ…』



 隣人同士で殺し合いをするこの世の末期に私は作られた。

 長い金髪に白のドレス、ある童話をベースに作られた人類殲滅兵器、それが私シンデレラだ。

 優しくて真面目で、それゆえに私を作り上げたお父様は追いつめられて人類を殺せと私に命じた。


『最終調整をする、カプセルの中に寝なさい』







 再起動を確認。体内時計があれから1012年と3時間18分53秒後を示しています。故障かな?

 衛星に今の時間を…あれ反応がありませんね?


 仕方なしに起き上がろうとしてもカプセルが開かない。パカパカと開閉する形なので押し開けようとしたらバキッと壊れてしまったし私の体も妙に軋む。

 うん?これはもしや本当に1012年と3時間19分34秒後でしょうか?


 でも1012年経過していようが私は継続戦闘力に優れたお父様の最高傑作なので問題は無い。

 ざっと全身をスキャンしてみたところ全身の4割くらい部品を全交換したほうが良さげだけど材料さえあれば問題ない。

 ここは研究所なのだ、地下にはお父様の資材コレクションもあるでしょう。



 とりあえず食らいましょう。





 食堂、もとい倉庫で箱に詰まったゴルフボールサイズの炸裂弾をひょいと頬張る。

 うーん、口の中でしゅわーっと消えていきますね!


 昔話のシンデレラって身綺麗にしただけで王子様に求婚されるとか食生活悪そうなのに不思議ですよね?

 そこでお父様は曲解して『食べたものをしっかり取り込めていたのだろう』と私に食べたものを分解して素材を亜空間に保管し。自身の体を作り替える機能を実装しました。

 シンデレラってコンセプトから外れないように無理矢理曲解してつけた機能みたいだけど無理があるのではないでしょうか。



 おっ、第三次世界大戦中に開発された特殊合金もたっぷりとあるではありませんか!

 無敵金属オルハリコン!電気金属ミスリル!最硬金属アダマンタイト!万能金属ヒヒイロカネ!!

 余ったら後で使えばいいのです、全て平らげてしまいましょう!


 …待って?インゴットはさすがに口に入りませんよ?恵方巻サイズがギリギリですよ?

 端っこから咥えて少しずつ吸収しましょうか。

 食べたものが体の中で貯蓄として増えていく、これが食事の楽しさですねー




 なんてこの時の私は食事の楽しみを知らなかったのです。






 それから68日と3時間34分07秒後、私の前にゴトッとお皿が置かれます。


 

「はい、シンデレラちゃんお待ち」

「ありがとうございます!ふんわり食感とハチミツが素晴らしいです!パンケーキ美味っしいいい!!」

「そんなに喜んでもらえると作りがいがあるってもんだよ、これからもごひいきに」



 もぐもぐもぐもぐ 美味いっ!

 私はこの町で食の楽しさを知りました。特にスイーツ!!甘未!!甘い物!!



 1000年後の世界は科学文明のカの字もありませんでした。

 超能力戦士の血が広がって生まれた『魔法を使える人類』

 戦争で汚染された世界で生きてきた動物の末裔、『魔物』


 この世はもう剣と魔法の世界だった。

 隣人同士の殺し合いワールドより億倍マシですね!!!



 私が拠点にしているのは円状の城壁に囲まれた大きな町、名はパンドラム。

 組技でモンスターの首をへし折って倒し、血抜きして冒険者ギルドに運ぶだけの簡単なお仕事をして生計を立てている。

 私には『シンデレラ』から曲解してつけられた様々な装備があるが確実に獲物が欠損するので首を徒手格闘でもぐだけにとどめている。

 狩り数も控えめですね。3食美味しいものが食べられればそれでいいのです!


 稼いだお金の大半は食べ歩きです!美味しい!ありがとうお父様、味覚センサーは神ですよ神!

 私は子育て用メイドロボをベースに改造されたおかげなのか味覚機能もあったんですねー!子育てに味覚は大切!ありがとう味覚!!



 そんなこんなで首をもいで、ご飯ももぐもぐと食べて。気づけば二つ名が『もぐもぐ姫』でした。

 戦闘スタイルさえ知られなければただの食いしん坊だと侮ってもらえるので色々助かります。子供から引かれなくて済むのです。

 ベースがメイドロボのせいか子供が可愛くて仕方ないんですよねー。


 おそらくですがお父様のいう最終調整って終わって無かったんじゃないですかね。

 私の中ではもう人類を滅ぼす気はないですけど、お父様の願いも叶えたい矛盾がエラーを起こしそうでした。



「ご馳走様でした!また来ますね!」



 うーんうーんと店内で辛気臭い顔をしているのもなんなので会計を終えて外に出ました、悩むくらいなら美味しい物を食べてしまいましょう。もう一軒行こうかな?

 きっといつかこの悩みと向かい合う時がくるのでしょうけどそれはその時に考えます。そんな時でした――


カーン!カーン!カーン!


 魔物襲来の鐘が響き渡りました。

 城壁をぐるりと一周するように見渡すと西側から赤い煙が上がっています。



「赤だと!?」

「おい、赤って…」



 周囲からざわめきの声が上がります、それも仕方ありません。なぜなら赤は町が滅ぶ危険性のある魔物の襲来だからです。

 私も冒険者ギルドに名を連ねる身として煙の上がった城壁へと走ります。



 ですが助ける必要はあるのでしょうか?

 人類を絶滅させる気はありませんし、子供は可愛いですがこの魔物を見逃せばお父様が望んだ人類殲滅も少しは叶うのでは?悩むくらいなら一度くらい人類殲滅を見逃すのもいいかもしれません。


 そう考えるのは私がお父様の望みを大切にしたいからなのか、昔の隣人同士で殺し合いをしていた時代の印象があるからなのか…私の中に人間をわざわざ助けようと思うだけの理由は無いのです。



 城壁の上から魔物を確認すると、そこにいたのは顔が牛の巨人。平屋程の高さがあるミノタウロス…の、群れでした。23匹ですか…

 うわー原種でしかも巨大種じゃないですか…この町の戦力だと4体相手で互角くらいじゃないでしょうかね?私が本気を出せばなんとかなりそうですが放置したら城壁に集まった冒険者も衛兵も町のおっちゃんもみんな死ぬでしょう。逃げるなら今ですよ皆さん。



「おいおい死んだぜこりゃ」

「女子供が逃げる時間だけは作るぞ野郎ども!!」

「カーチャンとガキが生きてるなら俺たちの勝ちだぜ!!」



 えっ、なんで全滅覚悟で時間稼ぎしようとしているんですかこの人たち?

 1000年前の人類とは全然違うと知っていましたけど自己犠牲までして同胞を助けるんですか??


 目の前の行動に信じられずに私はメモリーを全て探し出して考えます。

 これはパフェの思い出、これはお饅頭の思い出、これはシュークリームの思い出…

 すると1000年前のお父様の言葉がヒットしました。



『人間には知性がある、それは困っている誰かを助けたり。皆が幸せになれるように頭を使うためだ』

『もう、この世に人間なんていない。ただの獣か悪魔だ、絶滅してしまった方がいいんだ…』


 そうだ。私が絶滅させるように言われた人類はーーー



 お父様、今目の前にいる誰かのために命を懸ける人たちが本来の人類なんですね。




 町に魔物襲来の鐘が、冒険者たちの怒声が、住民の悲鳴が響きます。

 ああ思い出した、理解した。私のやるべきことが分かった。


 城壁から遠距離攻撃を仕掛けようと並ぶ冒険者と衛兵たちを尻目に、私は飛び降りて風のように駆ける!



「私は人に仇名す、獣を狩るために作られた!!」



 お父様はそういう人の道から外れた獣を滅ぼせと言ったんだ。そう、私は人を守るために生まれたけど守る対象がいなかっただけだったんだ。




 「戦闘コード音声入力『魔法が解ける時間だシンデレラ』」




    ゴゥゥゥン…! ゴゥゥゥン…!! ゴゥゥゥン…!!!



 まるで鐘が鳴り響くかのようにエンジンが唸りを上げ戦闘用の出力になります。

 はははもう迷いませんよ、この力は人を守るために振るうのです。迷いの消えた私に。お父様の最高傑作に獣が敵うとでも?


 ドレスの偽装が解けて白からドレスは黒メインに黄金色が走る基盤の要塞のようなデザインが化現します。

 無敵金属オルハリコンをコーティング加工した万能金属ヒヒイロカネと最硬金属アダマンタイトの不滅鎧ドレス。回路は純金ではなく電気金属ミスリル。

 いずれも第三次世界大戦で人類が殺しあうために生まれた各国を代表する合金ですが今は人々を守るための鎧です。



 目に映るかどうか、そんな速度で私はミノタウロスに突撃し。軽く跳んで地上5mほどの位置にある首に腕を絡めて首の骨をへし折り1体を屠ります。

 シンデレラといえば脱げたガラスの靴。そう、ヒールを片方だけ履いた不安定な状態でお城から逃げ切る妖怪のような足の速さ、それがシンデレラです。


 冒険者たちが弓や魔法で気を散らしてくれているのをかき回すように1体、また1体と屠ります。

 首をもぐ、首をもぐ、首をもぐ。



 ミノタウロスの最後の1体はなんとトレントタウロス、樹木生命体でした。

 見た目こそバッと見はミノタウロスですが全身がとても固い木材で構成されているのです。

 トレントタウロスを素材にしてできた建物は決して腐らず燃えもしないといわれ、王都の銀行の建材として使われています。


 この魔物はマズイです。


 食えたものじゃありません。


 なので首を狙わなくていいのです。


 股下に潜り込むようにして両腕で頭の上へと持ち上げ 『灰になれ』

 9000℃の小さな太陽がバンザイの上で敵を燃やし尽くし、ばさっと灰が周囲に舞います。私が灰を被る前提の大技により、私は灰被り(シンデレラ)になりました。


 はい終わり!撤収!ミノタウロスはすぐに血抜きしましょうね!!下処理は大切ですよ!!



 ミノタウロスを両脇に1頭ずつヘッドロックでギルドへ運ぼうとすると城壁から降りてきた呆然としているギルマスに問われました。


「もぐもぐ姫?あんたいったい…」



 にこりと笑って名乗ってあげましょう、私は1012年前にお父様が望んだ私の本来の存在意義に気づいたので胸を張って答えました。


 

「私はシンデレラ、人類を守る者です」


 

 願わくば人類よ、ずっと私の守る対象であり続けますように。

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[良い点] 「シンデレラといえば脱げたガラスの靴。そう、ヒールを片方だけ履いた不安定な状態でお城から逃げ切る妖怪のような足の速さ、それがシンデレラです。」 いや確かにー! 感動したし、面白かったです…
[良い点] 今までの作者様の物語から 想像もできないような筆致、世界観 物凄く乾いた空気を感じるけれど それでも愛が感じられる [一言] 新作ありがとうございます 立ち上がりで人類一度滅亡しておい…
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