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35. ミミロック

「グ、グギィ……」


「ふぅ、終わったか。」


 10層ボスである『ゴブリン:リーダー』の断末魔の呻き声を聞きつつ、剣に付いた血を振り払う。


 今回のボスはリーダーが片手剣を持った前衛型で、お供のゴブリン達は弓でその援護をするというパターンだった。


 弓の射線にリーダーを挟んで後衛の攻撃を通さないように立ち回り、剣戟の合間合間で魔法によってゴブリンの数を減らしていき。


 最後に残ったリーダーを1対1(タイマン)で下したのがついさっきの出来事だ。


 最近は魔法でワンパン! みたいな戦い方ばかりしていたので、こういった体を動かした堅実な戦いは久しぶりで楽しかった。


 SPの振り方がINT特化になっているため魔法を使うのはなんらおかしなことではないのだが、たまには違う戦い方をするのも悪くない。


 戦利品(ドロップアイテム)をマジックバッグに入れ、次の階層へと続く魔法陣に立つ。


 10階の攻略自体は数日前に終わっていたが、その後のレベリングはそれよりも上層で行っていたので11階に行くのはこれが初めてだ。


 転移特有の一瞬の浮遊感の後、足が地面に着く。


 目を開けると、見慣れた石壁の通路が続いていた。


 一瞬、乗る方間違えたか? という疑問が湧いたが、もう一方の魔法陣に乗っていたらロビーに戻るため、これでいいんだと思い直す。


 さて、ここからの階層で出現する魔物は石や岩モチーフの魔物がほとんどになり、『ロックストン(・・・・・・)ダンジョン』の名に相応しい様相になっていく。


 これらの魔物はDEF(防御力)が高く、物理攻撃に対しての耐性を持つものが多い。


 その分AGI(敏捷)は低く、初心者でも戦いやすくはあるのだが、如何せん倒すまでに時間がかかるというのが一種の序盤あるあるとなっている。


「とはいえ、魔法特化だとその限りではないんだけど。《ウォーターボール》!」


 前から飛んできた、野球ボールのような見た目の魔物───『リトロック』を盾でいなし、反撃の魔法を放つ。


 直撃したリトロックは光に変わり、その場には半透明の小さな魔石が落ちる。


「最低威力のボール系ですらワンパンだからなぁ……。手応えがなさすぎる。」


 『スライムゼリー』の納品依頼で手に入ったお金は、宿や食事代を除いてそのほとんどをMPポーションに費やしているのでMP切れの心配はない。


「ま、わざわざ時間をかける必要もないしサクサク行きますか。」






 攻略を進めること数時間。


 四方八方から飛んでくる(リトロック)を避けたり、動きの遅い亀(ストーンタートル)に魔法を連射したりしながら13階層へと辿り着いた。


 ここ、13階層からは新しい魔物が出現するようになる。


 その名も『ミミロック』。


 野球ボールこと『リトロック』と名前は似ているがその行動パターンは真逆と言ってもいい。


 この魔物の主な攻撃手段も体当たりだが、普段は通路の素材である石材に擬態し、人が通り過ぎた後に背後から奇襲を仕掛けてくるのだ。


 そこまで速度はないものの、それでも両手で抱える程の大きさの岩が無意識のところへぶつかってくるとなればかなり手痛い一撃になる。


 だが、この魔物の真に恐ろしい点は他にある。




 周囲を警戒しつつ歩いていると、不意に数メートル先の天井からパラパラと砂が落ちた。


 そう、これこそが『ミミロック』の真骨頂である、通称「落石」だ。


 背後であれば痛くとも急所にはならないが、頭は当たり所が悪ければそのまま死に至ることもある。


 『トリアル・ワールド』というゲームにはステータス……HPという概念はあるが、それはあくまでも『加護』であり、実際の怪我の度合いや状態とHPの数値に乖離があることが多々ある。


 例えば、HP100に対して50のダメージを受けたとする。


 この時、それが殴打によるものでも骨を折るような攻撃でも、数値上では50になることがある。


 だが、実際には殴打なら普通に動けたとしても、腕の骨が折られた場合はそれを直さない限りまともに動かすことはできない。


 これと同じことがこの「落石」でも起こりうる。


 考えてほしい、数キロはある大岩が頭上から落ちてきた時、ただ頭が痛いだけで終わればいいが、もしこれで首に負荷がかかって骨が折れたら……?


 言わずもがな即死である。


 一応DEFが高ければ肉体自体の耐久力も上がるため、そんな事態になる可能性は下がるが……急所などに当たった際に起こる『クリティカルヒット』には、DEFの一部を貫通するという仕様もあるので過信はできない。


 長くなってしまったが要するに、頭上からの大岩落下は危ないよね、ということだ。


 ここまでは前後左右にだけ気を付けていればよかったが、これからは天井にも注意を払わないといけない。


 とはいえ、ミミロックの感知範囲に近づけば先程のように前兆はあるので、それさえ見逃さなければどうということはない。




 砂が落ちたと思われる場所、その少し前で立ち止まる。


 急いで走り抜けたり、剣でつつくなど対処法はいくつかある。


「……記念すべき初エンカだしちゃんと戦ってみるか。」


 方針を決めると、上を見ながら少しだけ歩いて落下予想地点に体を出す。


 すると、ガコッという音と共に岩が落ち、大きな音を立てて地面にぶつかった。


 音がした時点で既に体を引いていたので被害はなし。


 相手の僅かな動きも見逃すまいと目を皿のようにする……が、暫く経ってもミミロックが動く気配はない。


「……もしかして、この期に及んでもただの岩として擬態してる、とか?」


 まさかそんな訳ないだろうと思いつつも、素通りして先を歩いてみる。


「……。」


 少し歩いたところでバッと後ろを振り返ると、何かが落ちる音が聞こえたが岩の位置は変わっていないように見える。


「……。」


 再び少し歩き、もう一度バッと後ろを振り返ると、何かが落ちる音が聞こえ、先程と同じ位置(・・・・・・・)に岩が落ちていた。


 今度は今までより長く歩いて後ろを振り返ってみた。


「───っ! あっぶね!」


 人が走るのと同じ程度の速度で飛んできたミミロックを寸でのところで躱す。


「こいつ、やっぱり奇襲を諦めていなかったのかよ!」


 無機物であるはずのミミロックへ驚きの入り混じったツッコミをしつつ、着地隙を狙って魔法を放つ。


 中層で出現する魔物なだけあって1発では倒せなかったが、何回か連続で水球を浴びせたところで音もなく光へと変わっていった。


全く意図した訳ではないんですが、某うさぎポ○モンと語感が似てるのでいつか間違えそうです()

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