32. メインイベント
「いや~、まさかレアイベントに遭遇するとはね。」
教会の大きさに関係なく、教会を訪れた時に極低確率で発生する「準神降臨」イベント。
この際降臨するのはその国を守護する準神と決まっていて、つまりこの国───『ガートランド王国』は先程見た光神『ガーティ』に守護されているということだ。
このイベントはどんなに早くてもゲーム開始から1か月が経たないと発生しなかったはずだが……なんでもかんでもゲーム通りではないということか。
とはいえ、当初想定していた「女神から邪神討伐のお礼をされる」というイベントは全く起こらなかった訳で。
邪神が生き残っている可能性はかなり高いと見ていいだろう。
「強くなる」という目標に変わりはないが、悠長にする余裕はなくなったな。
出鼻を挫いたことで多少の遅延はできたかもしれないが、次の依り代が見つかるまでにできるだけ強くなれるかだな。
今すぐにダンジョンに行きたいところではあるが……これからが今日のメインイベントだ。
予想外のイベントで忘れそうになるけど、元々教会に来たのはこのイベントまでの暇潰しみたいなものだったんだよな。
「時間は……よし。行くか。」
小さく深呼吸をし、開けっ放しの扉をくぐる。
昼過ぎの冒険者ギルドはピーク時と比べるとかなり空いているが、それでも賑やかな声で満ちていた。
目的の人物を頭に思い浮かべながらギルドの中を見回し……いた。
役割ごとに区分されている窓口の中央付近、冒険者が普段あまり使わない窓口に見知った後ろ姿を発見する。
取り込み中のようだし終わったら話しかけに行くか、と踵を返そうとしたその時。
「あ、クロトさん! ちょっといいですかー?」
目が合った受付嬢さんに呼び止められた。
「───そうです。彼が先程話していた、依頼を全部受けていただいた新人冒険者の方です。」
手招きに応じて近寄ると、そんな会話が聞こえてきた。
面識のない受付嬢さんに名前を呼ばれて内心驚いたけど……あの大量に残ってたスライムゼリーの依頼を片付けたことで多少有名になったりしているんだろうか?
「急に呼び止めてしまってすみません。是非クロトさんにお礼をしたいという方がいらっしゃっていまして。」
「───初めまして、ボクの名前はミスト。依頼を全て受けてくれたんだってね、本当にありがとう!」
そう言って振り返ったのは、艶やかな金髪を肩のあたりまで伸ばしたボーイッシュな美人さん。
年齢は20代前半くらい、切れ長でエメラルドのような瞳が印象的だ。
「いえいえ。報酬がとても魅力的でしたし、こちらこそありがとうございます。」
朗らかな笑みと共に差し出された手を握り、微笑む。
「ミスト様が今日いらっしゃったのはクロトさんへの指名依頼とのことです。登録したばかりの冒険者が指名依頼なんて滅多にないことですよ!」
「え、そうだったんですか!? ありがとうございます!」
興奮した様子で話す受付嬢さんに、さも驚いているかのようにそう返す。
「そうしましたら、ミスト様にはこちらの紙に依頼の内容や報酬金の情報を書いていただきまして───」
「あーごめん。やっぱり指名依頼キャンセルしてもらってもいいかな。」
その瞬間、空気が凍り付いた。
「え、あ、その、キャンセル……ですか?」
受付嬢さんが俺とミストさんの間で視線を彷徨わせながら動揺したように言う。
いやまぁ、驚くのも無理はない。
正直な話、俺も驚いている。
「うん。キャンセル。もしかしてできないのかな?」
「い、いえ! 勿論キャンセルはできますが……差し支えなければ理由を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「理由か……強いて言うなら勿体ないから、かな。」
「勿体ない……。」
「まぁそういう訳だから、申し訳ないけど指名依頼はキャンセルってことで。」
そう言うとミストさんは俺に向き直り、ガシッと肩を組んできた。
「それじゃ、行こうか。」
「え、ちょ待───」
言うや否や、有無を言わさずに歩き始めるミストさん。
(ちょっ、この人意外と力強いな!?)
試しに腕のロックを外そうと押してみるが、びくともしない。
俺は無駄な抵抗を諦めると同時に、ステータスがある世界では老若男女関係ないんだなということを思い知った。
そうして、俺は周りの人の視線を浴びながらギルドの外へ連れていかれるのだった。
最後に見えた、受付嬢さんのぽかんとした表情が面白かった。
一次創作のいいところ
癖 を 盛 れ る
今後ボーイッシュなキャラがたくさん出てきてもそういう病気なんだなと生暖かく見守ってください()




