23. とある日の記憶
時間遅くなってすみません!
無理やり1話に捻じ込んだらいつもより倍くらい文章量多くなってしまいました……。
楽しみにされている方、次回決着ですのでもう少々お付き合いください。
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とある土曜日、俺は電車をいくつか乗り換えて待ち合わせ場所へと向かっていた。
スマホの地図を見ながら、人でごった返している大通りを歩くこと暫く。
豪華な店構えの、いかにも高級そうなフレンチレストランに辿り着いた。
入る前にスマホの内カメラで髪型や服装に問題がないかをチェックし、意を決してドアの取っ手に手を伸ばす。
「いらっしゃいませ。ご予約されていますか?」
「えっと、『グレイ』という名前で予約しているらしいんですが……。」
「グレイ様のお連れ様ですね。ご案内いたします。」
綺麗な所作でお辞儀をしたお姉さんの後を追って歩く。
店内は豪華なシャンデリアや高そうな壺、絵画等が飾ってあり、普段行くファミレスやファストフード店との違いに圧倒される。
(一応来る前にお金下ろしてきたけど、もしかして足りないか? ネットで調べてみても値段は書いてなかったんだよなぁ……。こういう店の相場とか全く分からないんだけど!)
そんな風に内心で戦々恐々としていると、一つの部屋の前でお姉さんが止まった。
「グレイ様、お連れ様をお連れいたしました。」
「ありがとうございます。どうぞ~。」
「し、失礼します。」
緊張しながら部屋に足を踏み入れる。
部屋の中央には真っ白なテーブルクロスの敷かれた円卓があり、対面には椅子が1つずつ。
その片方に座っている彼こそ、俺の憧れの人物でありSNSのフォロワー数が1億人を超える世界的インフルエンサーにして、今日俺を招待した人物───Alex Grayだ。
「やぁクロト、久しぶり。今日は急に呼び出してごめんね。」
そう言って立ち上がる彼は申し訳なさそうにウィンクをした。
金茶でくせ毛混じりのミディアムヘアに、上品さと知性の宿った切れ長の瞳、端正で彫りの深い顔立ち。
現実離れした、という表現がピッタリな西洋風超絶イケメンがそこにいた。
余談だが、彼は見た目からも分かる通り日本人ではない。
身バレ防止のため、という理由で国籍は公表していないのだが、恐らくヨーロッパの方の出身なんじゃないかというのが専らの見解だ。
では何故こんなにも日本語が上手いかというと、実は今のように有名になる前は主に翻訳家として仕事をしていたそうで。
話せる言語はその数なんと20以上。
正直こんなに話せるのならいくらでも仕事がありそうだけど、好きなことを仕事にしたいという理由で現在は『トリワル』の実況者兼インフルエンサーとして活動している。
閑話休題。
「アレさんお久しぶりです! 急にだなんてそんなことないですよ。アレさんの誘いなら何においても優先されるので!」
そう熱く語ると、アレさんは照れたように頬を掻いた。
「はは、そう言ってくれると嬉しいよ。ささ、立ち話もなんだし座って座って。」
勧められるまま席に着くと、アレさんが「早速だけど」と話を切り出した。
「今日こうしてクロトを呼んだのはお願いがあるからなんだ。」
「お願い、ですか?」
どうしたんだろう、急に改まって。
アレさんとの付き合いは半年程。
トリワルの世界大会の舞台で初めて顔を合わせ、以後なんやかんやあったものの1か月に数回のペースで遊んでいる。
こちらから誘うこともあれば、向こうから誘われることもある。
まだ多少緊張はするものの割とカジュアルな関係になってきていると思っていたんだけど、そんなに大事な話なのだろうか。
「おっと、ごめんごめん。お願いとは言ったけどそんなにかしこまることはないよ。あくまでも『トリワル』の話だからさ。」
そんな内心が顔にも出ていたのか、柔らかく微笑むようにアレさんが言う。
この笑顔、俺が女だったら間違いなく堕ちてたな。
「クロトにお願いしたいことというのは邪神TAのことなんだけど───と、料理が来たみたいだし食べながら話すとしようか。」
「つまり、TAの手順を見つけたけど公表するには試行回数が足りないので俺にも手伝ってほしい、と。そういうことですか?」
メインディッシュである牛ロースを食べ終え、アレさんから聞いた話を整理する。
因みに、ここまで何皿か料理を食べたのだがその全てがめちゃくちゃ美味しかった。
「まとめるとそうだね。君なら周りに言いふらしたりもしないだろうし、実力的にも問題ないと思ってね。」
「えっと、信頼してくれているのは凄く嬉しいんですが……。」
「なんで自分にって感じかな。」
図星を突かれ、驚きつつもコクコクと頷く。
少しの間言葉を探していたアレさんが再び口を開く。
「クロト。君は楽しいことや面白い発見があった時、友達や身近な人に紹介したいと思ったことはない?」
「それは……。」
「それと同じさ。だから、そこまで難しく考える必要なんてないんだよ。」
こちらが何かを言うよりも早くアレさんが続ける。
「邪神を早く倒すことができるメリットは、君だって分かるでしょ?」
邪神を早く倒すメリット───それは邪神を倒した時に付与される『称号』のことだ。
キャラを強くする上では必須と言われるほど強力な称号。
この称号をいかに早く取得するかによってその後の育成にかかる手間は大きく変わる。
もし今アレさんから教えてもらったことが本当なら、間違いなく競技シーンには革命が起きる。
手間が減るということは即ちライバルが増えるということでもあるけど、そんなくだらないことを一切気にすることなく公表しようという判断ができるのは本当に流石としか言いようがない。
そういうことを少しでも考えてしまった俺はまだまだ未熟だな。
アレさんにここまで頼られているんだ、答えは決まっている。
「……分かりました。是非やらせてください!」
それに、どんなに人が増えようともその全てを薙ぎ倒せばいいだけの話だし。
「ふふ、そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとう。」
くっ! 笑顔が眩しい!
「そ、それで、さっき話に出た邪神を倒す魔法というのは……?」
「おっと、そうだったね。───これなんだけど、クロトならこれがどんな魔法か分かるかい?」
取り出したメモ用紙にサラサラと魔法陣を書いていくアレさん。
これは───!?
「この中心の記号……まさか神聖魔法!? でもこんなの初めて……いや、周りの文字から読み取ると───」
ブツブツと呟きながら解読を進め、数分後、1つの結論にたどり着いた。
「これは《神罰の光》から範囲、射程を極限まで削ることでINTとMPの要求値を最低ラインまで引き下げたんですね。名前は───《ミニ・レイ》。」
そう答えると、アレさんは満面の笑みを浮かべ何度も頷いた。
「うんうん、正解だよクロト。やっぱりクロトは頭が良いね。」
やったー、アレさんに褒められたぞー。
「あはは、ありがとうございます。───って、いつの間に神聖魔法のアレンジができるようになったんですか!? これは物凄い大発見ですよ!」
もう大分前からプレイヤー達が当たり前のように行っている、魔法のアレンジや創作。
火や水の基本的な属性に加え、幻影のような特殊な魔法でも可能なのだが、その中で唯一神聖魔法だけはこれまで誰一人として成功したことがない。
そんな神聖魔法のアレンジができたとあれば、もしかしたら邪神のTA以上の大ニュースになるかもしれない。
「これも一緒のタイミングで公表しようと思っているんだ。……ただ、方法についてはクロトを信用していない訳ではないんだけど、今はまだ秘密にさせてくれないかな。」
「分かりました。というか、アレンジができるというのが分かっただけでも十分すぎますって。」
そうか、アレンジできるのか。
それならゆくゆくは創り出すこともできるようになるのかもしれない。
やっぱトリワルって神ゲーだわ。
その後運ばれてきたデザートを食べ終え、お開きの雰囲気になってきた頃。
「あ、最後に1つ質問いいですか?」
「うん、何でも聞いてくれていいよ。」
「え、今何でもって……というのはさておき。アレさんはどのくらいの確率で、俺が初見で倒せると思いますか?」
そう聞くと、アレさんは手を顎に当てて暫し考え込む。
「うーん、100%と言いたいところだけど99%かな。」
「因みに、その1%というのは?」
「クロト自身の問題だね。」
あっ……はい。
確かにミスしないとは言い切れないしな……。
「ふふ。うそうそ、冗談だよ。」
「いやでも物事に100%ってないですし。アレさんの言う通り、俺がミスをする可能性はあると思いますよ。」
いや、不貞腐れてるとかじゃなくて本心でね?
「まぁ本当のことを言うと、運だね。ほら、勝負は時の運って言うでしょ?」
「運……。」
「そうそう、運だよ。僕はクロトは絶対にミスをしないと思っている。だけど、そんなクロトでも運命の歯車の前では無力だ。どんなに完璧だったとしても、たった一つの偶然で全てが狂ってしまうこともある。」
「それは……。」
「まぁ心配しなくても大丈夫だよ。そうなる確率は本当に低いし、さっきも言ったけど取り返しのつかないことにはならないからさ。それに───」
「あれ、最後何か言いました? 聞き取れなくて。」
「ううん、何でもないよ。さ、帰ろうか。」
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「……懐かしい夢だったな。」
窓の外は真っ暗だ。
───さぁ、行こうか。
なんだろう、すっごい久しぶりに元々考えていた軌道に戻ってきた気がします。
引き延ばそうとかっていうのは全くなくて、ライブ感でやっていたらこうなってしまいました……。
次回決着!(ガチ) お楽しみに!




