20. 哀れ、『リーダー・ゴブリン』
ボス部屋に入ると扉がひとりでに閉まり、それと同時に部屋の中央にある魔法陣が輝く。
現れた影は大きいのが1つと小さいのが4つ。
『ロックストンダンジョン』の10階層、最初のボスは『リーダー・ゴブリン』だ。
普通のゴブリンの身長が100センチ程なのに対し、『リーダー』の方は170センチくらいと、子供と大人くらいの身長差がある。
「持ってる武器は……弓か。」
この『リーダー・ゴブリン』は個体によって使う武器がそれぞれ異なり、それに合わせてお供のゴブリンの立ち回りも変わるという、バリエーションに富んだボスだ。
「ガガッギャ、ギャガギャ!」
早速『リーダー』がお供に指示を出し、弓を構える。
標的を取り囲んで足止めをし、その間に遠距離から一方的に攻撃しようという魂胆だろう。
「回避の練習で付き合っても良かったんだけど、残念ながら今は時間がないんだよね。」
時間をかけると追加のゴブリンを呼ばれてしまうため、今日のところは速攻で片づけさせてもらおう。
横一列で駆け寄ってくるゴブリンを左からAと呼称するとして、まずはAに狙いを付ける。
「《ファイヤーボール》。よし、まずは1体!」
回り込むような動きを見せるDは一旦無視し、Bとの距離を詰める。
「ぐっ、おらぁ!」
振り下ろされる棍棒を小盾で受け止め、スキルを使わない自身の筋力だけで突き飛ばす。
その直後、横合いから繰り出されたCの棍棒が脇腹に直撃する。
「痛っっった! でもこの距離なら……《ファイヤーボール》!」
痛みに耐え、盾を放した左手で棍棒を掴んでゼロ距離からの魔法を喰らわせる。
これで2体目。
(さっきあまり強く飛ばせなかったから次に来るのはBかな?)
そう考えて正面に目線を戻すもBの姿は既になく、見えるのは弓を弾き絞る『リーダー』のみ。
(あれどこ行った? いや待て、まさか!)
刹那の閃きに従って弾かれるように上体を反らすと、間一髪のところで矢を回避した。
「あっぶね! 神回避ナイスすぎ!」
その感動も束の間、今度はBとDが前後で同時に攻撃を仕掛けてきた。
「ローリングからの、《ファイヤーボール》《ファイヤーボール》!」
無防備な後隙へと魔法を放ち、B・Dも光へと変える
「さて、残りはお前だけだ。」
マジックバッグに盾をしまい、代わりに串を取り出して右手に構える。
部屋が静寂に包まれ、暫しの睨み合いが続く。
緊張感が張り詰める中、相手の一挙手一投足を観察しタイミングを計る。
「───今だ!」
『リーダー』の体が微かに動いた瞬間、左斜め前へと飛び出して飛んできた矢を躱す。
「『走突』!」
スキルの補助を受けた脚力が助走と合わせて驚異的な加速を生み出し、一直線に肉薄する。
突きまでが1セットのスキルなので、着地後に若干の隙を晒すが『リーダー』は矢を番えている途中のため問題ない。
そして、硬直が終わると同時に魔法を撃つ!
「《ファイヤーボール》!」
「グガッ」
避けにくい体の中心を狙って放たれた火球は『リーダー』の胸元に吸い込まれるように命中し、くぐもった声を漏らした。
「まだまだ! 《ファイヤーボール》《ファイヤーボール》《ファイヤーボール》《ファイヤーボール》『一段突き』《ファイヤーボール》《ファイヤーボール》─────」
そこからはずっと俺のターン。
現状の最大火力である《ファイヤーボール》を連発し、弓を構えたら『一段突き』で手首や腕を狙って中断させ、再び《ファイヤーボール》に戻る。
それをひたすら繰り返すと、3回目のループが終わったところで『リーダー』も光の粒子に変わっていった。
急いで懐中時計を取り出して確認すると、時刻は18時50分。
「よっしゃー、やり切ったぞー!」
両手を掲げ、喜びを全身で表現する。
多分行けるだろうとは思っていたし、だからこそ強行した訳だけど……それはそれとして上手くいって本当に嬉しい。
「さて、あんまりゆっくりしている時間もないしちゃちゃっと回収して帰りますか!」
5日目、これにて終了!
次話でステータスを載せますが、ファイヤーボールの使用回数で大体のレベルが分かります……(ボソッ)




