表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

1. ゲームの世界……?


 目を開けると、そこには青い空が広がっていた。


 ぽかぽかとした陽気と頬を撫でる風が心地よく、思わず二度寝してしまいそうになる……ん?青空?


 慌てて飛び起きて辺りを見回すと一面の緑が広がる草原だった。






「─────え?」


 ここは何処だ?


 なんとなく見覚えがあるような気がするが寝起きのせいで頭が働かない。


 目を閉じて暫くの間考え込み……


「───思い出した。ここは『トリワル』のゲーム開始(スポーン)地点の一つだ。」


 『トリアル・ワールド』通称『トリワル』。


 3年前に世界各国で同時発売され、その自由度の高さと、他のゲームと隔絶したクオリティから世界中で一大ブームを巻き起こした。


 自分も『トリワル』にハマった一人であり、総プレイ時間は9999時間以上。俗にいう廃人である。


 今いるこの場所は、通称『始まりの草原』と呼ばれている場所とそっくりだった。


「ここはゲームの世界なのか? いや、それよりもどうやってここに?」


 好きな作品の世界に入る─それは誰しも一度は考えたことがあるのではないだろうか。


 しかし、現実的に考えてそんなことはありえない。


 1万歩譲ってゲームと同じ世界がこの世のどこかにあるとしても、それは自分たちが住んでる世界とは文字通り次元が違うわけで。


 別世界にある以上、どうやってもその世界に辿り着くことはできないはずだ。


 22世紀産の某ネコ型ロボットの某電話ボックスがあればできるかもしれないが、現代の技術では現実改変できる道具を作ることはできない。

 

 ……とまぁ色々と理屈をこねてみたが、要するに今見ているこれは「でき(・・)のいい夢」だってことだ。


 大方、トリワルをプレイしているうちに寝落ちしてしまったとかそんなところだろう。


 夢で見る内容は寝る前の行動が関係しているとテレビの特集で見たことがあるし。


 それに、トリワルの夢を見るのは初めてって訳でもないしな。


 唯一違うのは、これを夢だと認識できている、ということか。


 例の特集番組ではこういうのを明晰夢って言ってたかな。


 夢の中で夢を自覚するというのは初めての経験で不思議な感覚だが、その番組では意図的に明晰夢を見ることができる人もいると紹介されていたっけ。


 その時は嘘だと思ってたけど……本当だったんだなぁ。


「それにしても夢とは思えないリアリティだ。この世界どこまで続いてるんだろう。」


 無限か有限か。もしかしたらゲームの世界そのままに構築されているのだろうか?


 普通に考えたら世界の端みたいなものがあるとは思えないけど……。


 そう考えると、所詮夢とはいえ現実のようなリアリティのあるこの世界に興味が湧いてきた。


 現実世界の自分が起きるまでどれほどの時間があるか分からないが、せっかく面白そうな体験ができるのだ。これに乗らない手はないだろう。


「ひとまずはここがトリワルの世界と仮定して、ここから一番近い町に向かってみよう。もしかしたら、何かあるかもしれない。」











 ───歩き出してから30分以上は経っただろうか。


 今歩いているのは打って変わって森の中だ。


 とりあえず、あの草原が永遠に続くという可能性は無くなったな。

 

 さて、森の中と言っても根が露出しておらず歩きやすくはあるのだが……


「暇すぎる。」


 この一言に尽きる。


 現在目指している『ネゴノーバ』という町は、ゲーム通りであれば、この森を抜けた先にある。


 このネゴノーバの近くには初心者向けのダンジョンがあり、『始まりの草原』スタートの場合の最初の町として設計されている。


 ゲームでは移動をスキップできたので分からなかったが、実際に歩くと思っていたより距離があり、何より暇だ。


 歩き始めは何もかもが新鮮で楽しかったが、変わり映えしない景色をずっと見ていると、さすがに飽きてくる。


「夢なんだから移動くらいスキップしてくれ───」


 誰に言うでもなく愚痴をこぼした瞬間、酷い頭痛と大量の情報が流れ込んでくる感覚に襲われる。


(何だ、コレ。頭が割れそうなくらい痛い。あ、なんか視界が暗くなってきた。死ぬのかな。いやこれ夢だから現実に戻るのか。せっかく面白そうなことになったのにな……。)


 近くの木に寄りかかろうとして体勢を崩し、そこで意識が途切れた─────











 目を開けると、目の前には人の背中があった。


 その先には石でできた外壁と門が見える。


 (……え、何が起こった? さっきまで確かに森にいたよな? まさかこの列ってネゴノーバに入る人たちの列なのか…?)


 突然の景色の変化に困惑していると、後ろからトントンと肩を叩かれる。


 意識外からの衝撃にビクッと体を震わせ、何事かと恐る恐る後ろを振り向く。


「おっと、驚かせちったか。体調が悪そうに見えたんだが大丈夫か?」


「なッ……!?」


 喋った!?


 予想外のことに一瞬脳がフリーズしたが、すぐに再起動し、頭をフル回転させる。


 ダイジョウブカ……大丈夫か?


 もしかして心配された? いやまぁたしかに、キョロキョロと挙動不審だったかもしれないけど……


(……っていやいや! そんなことより今間違いなく喋ったよな!? それに肩を叩かれた感覚もちゃんとある! これはまさか、夢ではない?)


「見たところ駆け出しのようだが……1人(ソロ)か?もし体調悪ぃなら水あるけど飲むか?」


 そう言って心配そうに見てくるのは自分より頭1つほど大きい、黒いタンクトップを着たスキンヘッドのマッチョマン。


 こんがりと焼けた肌に服の上からでも分かる盛り上がった大胸筋。露出しているムキムキの腕は自分の太(もも)くらいはありそうだ。


 ハリーウッド俳優でよく見るような体だな、という感想が頭を過る。


「ご心配おかけしてすみません。さっきまでは、その、歩き疲れていたといいますか……今は落ち着いたのでもう大丈夫です。」


 頭の中では処理しきれない情報が嵐の如く吹き荒れているが、なんとか平静を装って返事をする。


「そうか、ならいいんだ。兄ちゃんひょろっとしてるしちゃんと体力はつけたほうがいいぜ?」


「あはは……。どうもありがとうこざいます。」


 そう言ってガハハと笑うマッチョマンに感謝を伝え、会釈をして町の方へと向き直る。町に入る人の列は長く、町に入るにはまだ時間がかかりそうだ。


 さて、かなり衝撃的だったが1回落ち着こう。


 深呼吸して……すー、はー。よし、落ち着いた。


 まずは状況整理からしてみよう。


・目が覚めたら『始まりの草原』っぽいとこにいた

・夢の世界がどうなっているか気になったのでとりあえず1番近くの町に向かってみた

・気を失って気が付いたら目の前に『ネゴノーバ』っぽい町があった

・困惑していると後ろのマッチョマンに声をかけられた

・とりあえず状況整理 ←今ココ


 と、こんな感じか?


 色々気にはなるけど、今真っ先に考えるべきことは……これが現実かどうか、か?


 ……夢を終わらせたくなくてやらなかったけど覚悟を決めるしかない。


 これで夢から覚めても後悔はしない!


 そう意気込んで両手で頬を思いっきりつねる。


「痛っ!」


 力みすぎて必要以上に強くつねってしまったが、目が覚めることはなく、じんじんと痛む頬がこれが現実であるということを如実に物語っていた。


 念願が叶った嬉しさで思わず叫びたくなるが、僅かに残った理性で思いとどまる。


「いやいや、まだトリワルの世界と決まったわけじゃないんだ。」


 始まりの草原や今目の前にあるネゴノーバの町を見れば多分そうだろうという気もするけど、もっと確認する必要はあるよな。


(そうだ、さっき話したマッチョマンに色々聞いてみよう!)


 勢いよく振り返り、声をかけようとしたところで気が付く。


(これ、なんて声をかければいいんだ…...?)


 詰めの甘さを後悔するが時すでに遅し。


 目が合ったマッチョマンとの間に気まずい空気が流れる。


「……どうした?何か聞きたいことでもあるのか?」


 どう声をかけるか悩んでいると、こちらを気遣ってかマッチョさんから話しかけてくれた。


「えーと、ここってネゴノーバで合ってますか?」


 ミスった。咄嗟に焦って変な質問を……いや、何も知らない田舎者という設定なら色々と質問しやすいのでは?


「あぁそうだが……。もしかしてこの町に来るのは初めてか?」


「その、恥ずかしながらこの歳まで村から出たことがないのです。思い切って村を出たものの分からないことばかりで……。もしお時間よければいくつか質問してもいいですか?」


 我ながらかなり苦しい言い訳になってしまったが、どうだ?


「……なるほどな。いいぜ、どうせただ待つのも暇だと思ってたしな。」


 少し考える素振りをしていたマッチョさんだったが頷いてくれた。


 怪しまれてる気がしないでもないが、既にはたから見たら挙動不審だし今更だな!






 それから前に並んでいる人がいなくなるまでマッチョさん、もといジャスさんは色々と教えてくれた。


 ・魔法があり日常生活でも使われるくらい身近なものであること

 ・ダンジョンがあり、冒険者と呼ばれる職業があること

 ・ヒト以外にも知性を持った種族がいること

 ・創造神『ガリワディード』とそれを崇める『女神教』があること


 時間的にこれくらいしか聞けなかったが、これだけでもゲームと同じ世界だと判断するには十分だろう。


 神様や町の名前とかの固有名詞が被るなんてこと、滅多にないだろうしな。


 誰でも知っているような常識的なことを聞いたときは呆れた表情をされたりもしたが、質問にちゃんと答えてくれたマッチョさん、もといジャスさんには感謝しかない。


 とはいえ、なぜトリワルと同じ世界があるのか、どうやってこの世界にきたのか等々、疑問点はまだまだたくさんある。


 が、そんなことはひとまず置いておいて……


 夢にまで見た、リアル『トリワル』の世界を楽しもうじゃないか!


皆さん初めまして(たまき)です。

まずは、この作品を見つけていただきありがとうございます。

拙い表現、読みにくい箇所等、多いかと思いますが温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

投稿する前に必ず目は通しますが誤字や気になるところがあれば感想欄などで教えていただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ