かまきり
しずかな眠りの中で、ふいにこどうを感じた。
一つだったひびきは二つに、三つにふえ、やがていしきの回りを満たしていく。
目を開くと、そこにはいのちの銀河があった。
あれは、だれだい?
きみは、ぼくだ。
そうか。ぼくだ。あれもこれも。
思ってたより、区別はつかないのだ。
ぼくがみんなして立ち上がろうとするから揺りかごが揺れる。
あばれるな、みんな。ぼくはもうちょっと眠ってたいのだ。
でも、だめだ。揺りかごのぼくらはくす玉のように外へと放り出された。初めてふれる外の空気に目がかすんで、なみだがこぼれた。
外の世界は、ずっと苦しかった。
何でもない日常に潜んで、黒い鎧を被った誰かがやってくる。
大きなハサミをもって僕の体を切り裂くのだ。
全身が幾つにも別れた甲殻につつまれた大きな怪獣が迫り来る。
お腹を喰われた僕が僕に助けを乞うのだ。
いつの間にか宿る悪意が虎視眈眈と僕の命を狙っている。
水辺に着くや僕の体からずるりと抜け出て、命も一緒に持っていくのだ。
沢山の僕が死んだ。
その度に、心を失う様な喪失感に苛まれた。
それでも生き続ける。
ただ繋ぐために。
ある日、運命の相手に出会った。
どういう訳なのかは分からない。ただ、本能が相手を求めた。
そうして僕達は結ばれた。
間も無く、僕は死ぬ。
―――――え?
死ぬ?僕が?
どうして。僕がここまで生きてきた意味は
―――ああ、そうか。
繋ぐため、だった。
最期に、僕の頭が砕ける音がした。
どうか美味しく食べて欲しい。
僕の想いが定めでも。
僕の命が無意味でも。
ねぇ
ぼくはおいしかっただろうか
命の連続性
どうも、私です。
自分の生まれた意味が分からないという人は自分を自分としてでなく、ヒトという動物の一種であると考えると良いかもしれません。
特になにも変わりませんので。
最後に、この作品をお読み頂いた全ての人に感謝申し上げます。
ではでは。