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教科書

 納屋を掃除しておりましたら、娘の教科書が出てまいりました。

 三十年もよくもまぁこんな所にと思いましたが、案外汚れてはおりませんでした。

 

 国語、算数、理科、社会。

 学年別に綺麗に揃い、書き取り帳や習字、作文まで出てまいりました。

 

 よくもまぁ、綺麗にとっておいたこと。

 きっちり箱に納められておりましたが、私にはとんと覚えがございません。

 娘か主人か、孫贔屓だった義母の可能性も捨てきれません。

 それにしては、不思議と賞状や似顔絵などは見当たりません。

 やはり私が保管したものの、忘れてしまっただけなのでしょうか。

 とっておいたは良いものの、三十年誰にも触れられずただ静かにそこにいたのですね。

 よくある、タイムカプセルと言った所でしょうか。

 

 せっかくてすので掃除を中断し、縁側で教科書の虫干しを致しましょう。

 綺麗と言っても、やはり埃や虫食いが多少見受けられます。

 

 パラパラとページをめくってみれば、どうにも懐かしいものばかりです。

 特に国語の教科書なんかは、毎日音読の宿題があった為、もしかすれば娘よりしっかりと記憶に残っているのかもしれません。

 大人でも、大人だからこそ考えさせられるものもありますでしょう。

 

 一年生の国語の教科書『うしさん うふふ』

 娘はもちろん牛さんは知っておりましたが、絵本で見た程度。

 実物を見た事があるかないか、曖昧な時期だったのでしょう。

 『うしさん うふふ』を読んで、「何で尻尾にねずみがついてるの?」「体に蜘蛛?」と、幼い頭からたくさんの疑問を吹き出させておりました。

 動物図鑑を取りだし、「尻尾の先がね」や「蜘蛛じゃなくて、お空の雲よ」など、娘に話したのが昨日の事のように思い出されます。

 

 学校では少しずつ区切って教えてまいりますので、音読も少しずつ区切ってでございました。

 毎日決まった時間に少しずつ読み聞かせて貰っているようで、楽しみにしていたのを覚えております。

 

 『ごんぎつね』では、ごんの最後にショックを受け、何度も何度も「ごん、悪くないのに。知らなかったのに」と繰り返しておりました。

 『字のないはがき』はまだよく分からなかったようですが、聞いていた私の方が涙が止まらなくなり、娘に慰められてしまいました。

 

 孫の教科書は見たことがございませんが、きっと内容は様変わりしている事でしょう。

 無理を言って、今度音読を聞かせてもらいましょうか。

 娘は嫌がっておりましたが、まだあの宿題が健在だと良いのですが。

 うしさん うふふ  吉田定一 作

 ごんぎつね     新美南吉 作

 字のないはがき   向田邦子 作

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