一週間ぶりの再会!
「マルク! 目を覚ましたと聞いたぞ、おはよう!」
「もうっ、いつまで眠りこけてたのよっ、このお寝坊さんっ!」
「うおっとと、ずいぶん熱烈な歓迎だな、フリーダ、それにジル」
あらかた報告を聞き終えると、部屋に二人の女性が飛び込んできた。
フリーダとジルだ。ジルは俺に飛びついてまで喜んでいた。
「ず、ずるいぞジルちゃんっ、私もマルクに抱きつきたいのを我慢したのにっ!」
「はっ! ……こ、これは違うの、コケただけっ!」
「二人とも元気そうだな。事後処理でもしていてくれたのか?」
「うむ。といっても街を荒らされたわけではないから簡単なものだったが」
「あんたがいつでも冒険に出られるように、ね。感謝しなさいよねっ!」
「ありがとう、フリーダ、ジル。……そろそろ離れてくれてもいいんだがな」
「はっ! ……こ、これはサブミッションの練習だから、か、勘違いしないでよねっ! ……きゅん」
「はっはっは、フリーダ君の仲間は皆元気だね」
ジルが俺から体を退けると、最後にエルミナも部屋に入って来た。
歩きながら紅茶を飲むという奇妙な出で立ちだ。
部屋は女性達の良い香りでたちまちに一杯になってしまった。
「オリヴィアもありがとう。ずっと看病していてくれたんだな、一週間ぶりだというのにほら、もう立てるぞ」
「うふふ、マルク様、私目隠ししていますので、ほらと言われましても分かりませんですっ」
「おっと失礼。今取ってやろう」
俺はベッドから体を起こすと、オリヴィアの目元の黒い布を取ってやった。
その瞬間――ジルが絶叫した。
「ちょ、あんた……何たってるのよっ!」
「なんだジル、俺はもう元気だ、ピンピンしてるんだから怒らなくてもいいだろう」
「そ、そうじゃねぇよマルク! テ、テメェのその……そのっ!」
「お、おおう、騎士団長を長くやってきて人生経験豊富な私だが……こ、これは初めて見たっ、男性のその……突起物をっ」
「なっ、まさかっ!」
一週間ぶりの目覚め。そして女性だらけでいい香りな空間。
そんな空間で起こり得る現象。
「あらあら? 私の目の前にあるマルク様の股間が、モッコリと膨らんで、鼻先に触れて――」
「私は見たことあるぞこの現象! 薄い本で男の人がなるよく分からない謎の現象だっ!」
「くっ、俺としたことが、油断したっ!」
俺の〝俺〟が、服の下でお目覚めになったのである。
紳士たる俺が、なんたる失態だ!
いきなり死にそうになった俺は事態を収めようとしたが、無知な二人がとんでもない行動に出る。
「そして博識な私は治し方も知っているぞ! 薄い本ではこうやって手でしこしこっとすると、白い液体を吐き出して収まるのだっ! 口でもいいぞ、あー……んっ!」
「そうなのですねっ。って、い、いけませんフリーダさん、マルク様の股間がどんどん膨れあがってます! 急いでしこりましょう、えいっ!」
「わーっ! な、何してるのよあんた達! 男の人に……あたしのマルクにそんなことしちゃ、だめーっ!」
とか言いながら、どさくさ紛れにジルまで俺に手を出そうとしてくる。
そしてそして残る大人な二人も。
「こ、これも見識を広めるためだ。指でツンツンするくらいなら……貞操は守られるうちに入るだろう――ていっ!」
「デ、デカっ……こ、こんなデカイものなのか? それとも、マルクのがデカイのかっ? オ、オレも元ギルマスとして触っておかねぇとっ」
「触るな触るな! 全く、寝起き早々に、『本気』を出さざるを得ないとは――な!」
女性達の指やら顔やら口やらが、今にも触れそうな距離になった時。
俺は真の実力を発揮した。
「『紳士力10000%』――! ふ、これで収まったな」
「マ、マルクの股間が、いつも通りに戻ったぞおっ!?」
俺は紳士力たる謎パワーを全開にして、股間の〝俺〟を見事収めてしまったのである。
もちろん、白いの出してスッキリしたわけではない。
精神力――いや、紳士力だけで生理現象を抑え込んだのである。
「さぁ離れた離れた、女性が男の股間に群がるなど、あってはならない異常現象だぞ」
「そ、そうですね。よく分からないですが、なんだかよくないことのような気がしてきましたっ」
「そ、そうね、そんなエッチなことはダメよねっ! ……ちぇっ、既成事実作ってやろうと思ったのにっ」
もうなんかデレの部分を隠していない気もするが、ジルが最後にそう締めるのだった。
「そうだそうだマルク。王国から書状が山ほど届いてるぜ」
「ああ、現状報告とかそんなのか? 急いで取りかかる――」
「いやそうじゃねぇよ」
何はともあれ、全て平和に終わった。
そう俺が思っていると、ヴァネッサがこう続けた。
「王から直々の召喚状だ。英雄を表彰したいだってよ」
「……なんだって?」
ギルマスの次は、どうやら英雄に俺はなるらしい。




