清楚シスターは、遂に俺に堕ちる
「こ、こんなお外でするなんて……ほ、本当にここでするんでしょうか……?」
「すまないなオリヴィア、今は緊急事態だ。さぁ始めるぞ」
周りには樽や木箱が乱雑に置かれ、日の光が届かない薄暗い場所。
そんな薄暗い裏路地に連れ込まれたオリヴィアは不安そうだった。
「大丈夫、心配は要らない。フリーダやジルの時は耐性の桁がマイナス過ぎたために、事故が起きないよう明るくする必要があったが、君の場合は数値が高く、言わば保護されているわけだからな。そこに貫通スキルでバフをかけるだけだ、二人みたく事故って死を招くなんて危険はないから安心してくれ」
「わ、分かりました。この身、マルク様に捧げさせていただきます。……意外と危険な作業だったのですね……」
オリヴィアは両手を組んで、祈りを捧げる。
相手は俺か神かは分からないが、覚悟は決まったようだ。
するとオリヴィアが聞く。
「えとえと、どこかに寝そべった方がよろしいですか? ここに寝られる場所はなさそうなのですが……」
「立ったままやる。普通に俺のバフをかけるだけだからな、紋の規模も小さいんだ」
「立ったまま、お外でっ……!」
「恥ずかしいと思うが、服をめくってくれないか。下半身の部分だけでいい」
「っ……こ、この身はマルク様に捧げると誓いました。迷いは、ありませんっ」
オリヴィアは修道服の前を、両手でめくった。
一三神教の修道服はスカートの両脇部分にスリットが入っていて、垂れさがっている前部分を持ち上げれば簡単にめくれるのだ。
白いガーターベルトとオリヴィアの下着が俺の視界に入るが――集中する。
これは仕事、俺はプロの催眠術師だ。
「と、すまないオリヴィア、これを持っていてくれないか」
普段とは違うやり方なので俺もスムーズな段取りとまではいかない。
催眠用インクが入った瓶や鉢を両手で持ちながら作業なんて出来ないと気付いて、オリヴィアに頼み込む。
「は、はい、分かりました。……でも両手でこれもっちゃうと、スカートが」
「スカートの裾を口で咥えられないか? それならいけると思うんだが」
「なるほどっ。……はむっ、これでどうれふか?」
オリヴィアはスカート部分を口に咥えて前部分を露出させた。
とても無防備な格好で下着を晒すという行為に、さしものオリヴィアも恥ずかしいようで、顔を赤らめていた。
とりあえずこれで形になった。
俺は指にインクを付けて、オリヴィアの体に催眠紋を書き込む。
小規模とは言え、書く場所は決まっている。
へそと下着の間だくらいの下腹部。
フリーダが淫紋としつこく言っていた、あの部分に書くのだ。
「では失礼する。ああ、冷たいからな、リラックスは忘れずに」
「ひゃんっ! ……つ、冷たいですけど……ちょっと気持ちいいかも、です」
オリヴィアは口でスカートを咥えながら器用に喋る。
つつつ、と、俺が指で肌をなぞる度に、オリヴィアの吐息が漏れる。
それと同時に、彼女はこう呟く。
「ん、はぁっ……お、お許し下さい一三神様……これも、人々を救済するためでございます。神にこの身を捧げられなかったこと、お許し下さい……お許し、下さい……んっ、ぁ」
神に懺悔していたのだ。
なんだか罪悪感を感じるが、うら若き女性にこんなポーズで、こんな下半身に、こんな路地裏で、淫紋――じゃなくて催眠紋を刻んでいるのだ、まぁ罪みたいなものか。
俺はオリヴィアの懺悔の言葉を耳にしながら、彼女の肌に催眠紋を刻んでいく。
「マルク様の指使い、なんだかムズムズしてきます――下半身が」
「……こそばゆいだけだろう」
「そ、そうなのでしょうか……気持ち良くて、不思議な感覚です」
オリヴィアはスカートを口に咥え、うっとりとした表情で言った。
そうこうしているうちに下腹部分は終わり、俺は彼女の体から指を離すのだった。
「んっ……も、もう終わりなのですか……? ……もっと、欲しい、です……」
「……欲しがりさんだな」
オリヴィアは無防備なポーズのままそう言った。
その顔は赤く上気している。
俺はそんなオリヴィアの期待に応えるため、二度目を行うことにした。
「そうだな……次は脚の部分に書き込みたい」
「や、やった、ですっ! 脚の方は、一体どのような気持ちよさ……ではなくて、効果があるのですか?」
「素早さアップだな。オリヴィアは素早さが低めだったから、そこに力を入れるのもいいかもな」
俺はオリヴィアが手にしている催眠用インクに人さし指を付けると、その指を彼女の脚に持っていく。
そこは脚の付け根にかなり近い、内ももの辺りだった。
「そ、そんなところに書き込むのですねっ……」
「ああ。効果の高さもあるが、服に隠れる――つまり、カムフラージュの意味も兼ねてな。まぁこっちの紋はカムフラージュスキルでさらに隠すが、ただでさえ相手は催眠術師だ。やれるだけのことはやっておいた方がいいだろう」
「分かりました……今の私の体はマルク様のものです。お好きになさってくださいっ」
オリヴィアの覚悟を聞き入れた俺は、彼女の内もも部分に紋を書き込んでいく。
「あっ、凄いです……このムズムズ、やだ、凄いっ……」
やはり弱点故か、下腹部部分よりも敏感に脚を震わせて、吐息を漏らすオリヴィアなのだった。
――そうして全ての行程が終わる。
催眠紋は成功した。
「ふぅ、ふぅ……未知なる体験でございました、ありがとうございましたマルク様」
「どういたしまして。これで君にも俺のバフがかかったことになる。前回までは±120%が限界だったが、S級討伐がかなり効いて、恐らく200から250%くらいまではバフがかかっているはずだ」
「200%……! 私も、届くでしょうか。Tier5、『頂点』の場所へ」
「届く。君には生まれ持った才能がある。俺が保証するよ、間違いない」
俺は断言する。
俺のちょっとした後押しがなくてもその内辿り着いただろうが、今はそのちょっとの間も許されない状況だ。
この一件の最中に、彼女もTier5に届くことだろう。
後は――この俺だけだ。




