口数が少ないのには理由がある。キザなのと、それと ①
一人酒を楽しんで、翌日。
俺は宿で目を覚ますとすぐさま冒険者ギルドに向かった。
昨日の今日で少しためらう部分もあったが、金はいつか底をつく。
明日を生きるには嫌でも働かないといかないわけで、俺には下級なモンスターに下級な催眠術をかけることでしか生活を繋ぐ方法はないのだ。
「アタッカー募集、ヒーラー募集、デバッファーは……お、あったぞ、結構な募集がかかっているな。人気が無い役どころというわけではないからな」
ギルドに入ると、真っ先に俺はパーティ募集の掲示板に目を通した。
冒険者らしく乱雑に貼り付けられた張り紙の中からデバッファー募集をいくつか見つける。
これだけあるならば、ランクも自分と合っているところを吟味出来そうだった。
が――
「『ただし、募集は魔法使いタイプのみとする、催眠術師はお断り』、『催眠術師お断り、それ以外で』、か。……まぁ、昨日の催眠術師の評判を見たら、そうなって当然か」
物の見事に、全ての募集に『催眠術師お断り』の注意書きが書かれていたのである。
これは別に、わざわざジークが手を回したわけではない。
ジークら光の翼は皆が注目する新進気鋭のパーティ。
そんなパーティが酷評したのだ、評判が地に落ちるのは道理なのだ。
「ソロで依頼をこなすとなると……依頼ランクを一つか二つ下げないと、死ぬな。おまけに俺は催眠術師というデバッファーだ、効率は最低位だろうな」
デバッファーは直接攻撃の手段が豊富ではない。
昨晩は使用しなかったが、俺には一応直接攻撃スキルもある――のだが、それは限定的な状況でしか役立たないものだ。
いずれにしても依頼ランクを落とす必要があるが。
「装備も全て奪われた。一つ二つ下げたくらいでは、収まりそうにないな」
靴磨きにも間違われるような今の装備では、ほとんど新人と変わらない依頼しかこなせないことは確定的だった。
「……今晩も、一人酒を楽しめそうだ」
俺は皮肉たっぷりに、愚痴るのだった。
 




