オリヴィアの催眠紋は――後のお楽しみです
「まず君達の言い訳から聞こうか」
正座させられているフリーダとオリヴィア。
まずはフリーダからだ。
「そ、その、これからオリヴィアにも催眠紋を刻むのだろう? ならあらかじめ『こういうことだよ』と見せておいた方がいいと思って……マルクは信用出来るが、やっぱり恥ずかしいのは変わらないから」
「ふむ、確かにその通りだな。だがそれなら覗きではなく、事前に俺に言っておけばいい。ジルの同意さえ得られれば、覗かなくとも良かったはずだ。――次、オリヴィア」
「わ、私も同じ理由でございますマルク様。次は私が儀式を受ける番でございますからっ」
するとグラマラスなオリヴィアがパツパツな修道服を脱ぎ始めようとした。
胸がぶるんと強調されたが――俺は途中で止めた。
「脱ぐな脱ぐな。オリヴィアにはまだ催眠紋は施さない」
「え、ええっ!? ど、どうしてでございましょう、私がデブだからでしょうかっ? 最近ダイエットサボってますものでっ……すみません……」
「デブって、あんたみたいな体型でそんなこと言うと、世の中の本当に体重で悩んでる女、全員敵に回すわよ」
ジルが俺の代わりにツッコむ。
まさにその通りで、オリヴィアは太ってはいない。胸が大きくてそう見られがちかもしれないが。
まぁそんなどうでもいい理由で催眠紋を諦めたわけじゃなく。
オリヴィアが服を正すのを待ってから、俺は説明を始めた。
「オリヴィアの体質は『全基本耐性+10000%』だ。今の俺の催眠紋じゃあ、まるで効果を示さないだろう。しかもバフじゃなくてデバフをかけなくちゃならない。耐性を下げるんだから」
そう、オリヴィアの場合、フリーダやジルと事情が似てるようで、まるで性質が異なるのだ。
なので今の俺がオリヴィアに催眠紋を書き込んだところで、徒労に終わるだけなのである。
「な、なるほどそれででございますか……私はてっきり、覗きへの罰かと……ほっ」
「安心するのは早いんじゃないか?」
「ひ、ひぃ……こ、これも罪を犯した報い。マルク様、どうかお好きに……」
「冗談だ。まぁ今回はちゃんとした理由もあったし、俺がきっちり伝えていなかった面もある、許すよ。――二度目はないがな!」
「ど、どうしてそんなにぷりぷりしてるんだ、マルク。女の子同士だし、大目に見てくれても」
「紳士は覗きは嫌いなんだ……憎悪を感じるほどにな!」
覗きの話は一段落し、俺は催眠紋の話を続ける。
「とにかくオリヴィア、君の催眠紋はもう少し待て。色々カスタムして、さらに俺の『催眠力』自体も引上げなければ、君の体質に打ち勝てないだろうからな」
「でも果てしなさそうよね。だって『全基本耐性+10000%』の上から、催眠をかけるわけでしょ? どんな奥の手があったとしても、最初の一手からとんでもなく効果減衰するじゃない。何か根本的に方法変えないとダメそうな気がするけど」
「そこなんだよな。師匠と意見をぶつけ合いでもすれば良い案が出るかもしれないが……今どこをほっつき歩いているのか分からんからな。無理な願望か」
腕の立つ催眠術師なんて俺の他には師匠くらいしかいない。
相談相手がほしいところだったが、師匠の放浪癖を考えたら無理な話だと、俺はその線での攻略は諦めるのだった。
「残念ですが、理解いたしました。今はまだ待つことにします。でもその時が来たら――私の体、マルク様に捧げさせていただきとうございます」
「そんな大層な言い方するほどのことじゃないが……オリヴィア、君の催眠紋は後のお楽しみだ」
その大きく実った胸の前で手を重ね、祈りを捧げるオリヴィアだったが――
大丈夫、必ずやってやる。
俺はそう誓って、今この時から、催眠効果を高める方法を考え始めるのだった。
「良かったなオリヴィア! マルクの催眠紋に一度お世話になると、それはもうクセに――」
「ではフリーダ、次は君の番だ」
「ん? 次? 番? なんのことだマルク?」
「裸になれ」
「はだっ……!? い、いきなりなんだマルクっ、そ、そんな、まさかみんなの見てる前で、薄い本的な――」
何を勘違いしているのか知らないが、俺は一から説明した。
「君の催眠紋を書く番だ。……言わなかったか? 催眠紋の効果は二週間。時間の空いている今のうちに、君の催眠紋を書き直すぞ。さ、裸になれ」
「な、なんだってーっ!? ……そういえば聞いたような、聞いていないような……!?」
そう、催眠紋は二週間程度しか効果がないのだ。
俺がレベルアップすれば間隔は伸びていくだろうが、今はそれくらいが限界なのだった。
「うぅ……あたしも二週間後には、またマルクにみ、見られるのよね……お、おおお、おっぱいを……!」
「オリヴィアも観察するか? 覗かれるのも集中が削がれるしな」
「そ、そうですね。……フリーダさんのお腹の引っ込み具合を、目標にしたいですしっ」
何だか目当てが変わっちゃっているオリヴィアだったが。
とにかく俺は、ちゃっちゃとフリーダに二回目の催眠紋を施すのだった。




