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純白の女騎士に催眠術を――かけたりしませんなぜなら俺は ②

「く、くそっ、手、外れないっ!」

「あっ、こらあんた! 繋がっている手をムリヤリ動かすなっ、変なところ当たってるからっ!」

「あっ、ご、ごめん! ……っていうか、あんたってあたしより力弱いんだね……ジュルリ」

「な、なに、その最後の舌なめずり!?」


 若い女夜盗二人は手を繋ぎ合ったままやいやい言い合っている。

 両手を繋ぎ合わせているので夜盗同士の距離が近く、何だか妙な空気になってしまっているのが気になるが。

 意識を戻して、夜盗の一人が俺に向かって吐き捨てる。


「こ、この卑怯者! こんな勝ち方して嬉しいかっ!!」

「若い体に傷が付かなかっただけでも感謝してもらいたいものだがな。あとちょっと気にしていること言うのやめろ」


 中々辛辣な指摘にちょびっとだけ傷つく。

 とにかく、だ。


 すでに腕を下ろしていた俺だが、一度かかった催眠はその程度で解けやしない。

 相手のレベルが高ければかけることすら困難にはなるが、目の前の夜盗は靴磨きを襲うくらいに低レベルな相手だ。全体化――二人まとめて催眠にかけることくらい容易い。


「さて、と」


 俺は身動きの取れなくなった二人を見る。

 二人は若く――というより幼い、一〇代の獣人。それによく見ると結構美少女だ。

 肉付きもよく、男なら黙ってはいない外見をしていた。


 そんな二人に、俺は近づく。

 無抵抗で無防備な少女二人に、ゆっくりと。


「な……な、なんでこっち来るっ!」

「や、やめろっ、あたしたちに何するつもりだ!」

「こうするつもりだ。『膝をつけ』」


 俺は短く催眠(めいれい)すると、彼女たちは手を繋いだまま地面に両膝をつく。

 まだ一〇代の彼女たちでも理解はしているだろう。

 これから、何をされるか。


「お前たちは悪さをした。悪さをしたからには、報いを受けさせなければならない」

「や、やめろ、近づくな! ち、ち……近づかないで……っ!」

「ま、待って、待ってよ! こ、こっちの子は初めてなのっ! あ、あたしは……ち、知識だけならあるから、あたしが相手するっ! だからお願いっ、この子だけは!」

「知ったことか」


 両膝をついている少女に俺は構わず近寄る。

 涙を浮かべる二人の獣人少女。

 当初助けに入ったはずの女騎士も守りに入らない。

 なぜなら彼女は――


「ワタシはあなたの所有物デス、靴磨きサマ」


 このように、二人にしかかけていない『認識阻害』が、どういうわけか隣の女騎士仮面にも効いていて、しかもなぜか服従の催眠として効いているからだ。

 なんならこっちの女騎士の方が簡単に好き放題出来そうなくらいだ。


「覚悟はいいな」

「や、やだよ……ママ、ごめんなさい……」

「う、うぅっ……あたしの初めてが、こんなお外でなんてっ……!」


 目線を俺の顔から、もっと下の辺りに向けた少女たちは泣いて懇願する。

 だがもう遅い。

 犯した罪は、償わねばならない。


 俺は少女一人の体を掴み上げて――


「今から衛兵に突き出す。牢屋行きだ、そこでしっかり更正してこい、いいな」

「……ほぇっ?」

「は? ……はぁぁぁぁあっ!?」


 俺は、二人に無情の牢屋行きを宣告した。

 俺は二人を連れて行くため、少女の腕をただ掴んだだけ。

 膝をつかせたのは、他に凶器がないか確認しただけなのだ。


「さてはお前たち、何か勘違いしていただろ」

「あ、当たり前じゃないっ! ててて、てっきり、えええ、えっちなことされるかとっ……」

「ぜ、絶対そういう流れじゃん!? そう思うのが自然じゃん!? 無抵抗な美少女二人に催眠術師なんて、まさに最高の()()()じゃん!? 無抵抗な美少女だよ!?」

「俺はケダモノか。風評被害甚だしいが、まぁいい。俺は早く酒が飲みたいんだ、衛兵のところに行くぞ。それと、自分で美少女とか言うな」


「それも二度もな」と、ちょっとだけツッコミを入れた時。

 (勝手に)催眠にかかっていたもう一人の女が目を覚ました。


「ハッ!? わ、私は今何を……あっ、靴磨きの人、夜盗を捕まえたのか! 凄いな、最近の靴磨き職人は!」

「靴磨きじゃないところから記憶がないのか……面倒な女性だ」


 俺は、そんな女騎士のためにさらっと説明してやることにした。

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