表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/99

メドューサ戦 ⑤ もう一人の体質

「あたしに猫耳が生えた理由――マルクのバフのおかげで、分かった気がする。にゃん!」


 俺は全てを託すようにジルとフリーダを見る。

 ジルは空中で、その脚に力を溜めていた。


「拳闘スキルTier(ティア)5――『獣人化・兎』! そのものになれ、そういうことでしょっ! ()()()


 そして、瞬時に猫耳が兎耳(うさみみ)へと変化して、速度をさらに引き上げた。

 ふさふさの丸い尻尾が服の上に出たのは、現実的な存在というよりも、ぼうっとした魔法的性質のものだからだろう。


 ジルが見せた獣の型。

 それは更なる進化を遂げて、獣人へ変異できるレアスキルへと昇華した。

 いずれかのステータスに特化した種類に、好きなタイミングで変化を可能とする。


 ジルはそのレアスキルを駆使し、素早さ特化の兎になったのだ。

 そして一気に敵に肉迫して――さらに。


「『獣人化・狼』! あたしの全力を、叩き込む! ――Tier(ティア)5・『連拳狼牙』! わんわんっ」


 力を溜めていたのは脚だけではなく、拳にもだった。

 素早さと力に特化した狼へと変異して、ジルには珍しい拳中心の技を見せる。これもマルクの催眠の効果だろう。

 人を越えた速度と連撃をもろに浴びたメドゥーサは、魔眼の発動が一手遅れる。


「チ、チチチっ!?」

「崩れた! フリーダ、今よ!」

「ああ、ジルちゃん! 疾風怒濤の連撃、ならば私だって――Tier(ティア)5・『テンペストスラッシュ』!」


 そしてフリーダのトドメの一撃。

 新たなる技を閃き、ジルに迫る勢いの連続斬りを放った。

 メドゥーサの全身が切り刻まれて、血が噴き出る。


「これで、勝――」

「チチチ……甘いっ!」

「なにっ! こいつ、自分の体を石化させて――!?」


 これが本当の奥の手か。

 メドューサは自分の体を一部石化させて、防御力を高めていたのだ。

 一手遅れた魔眼、敵に放つのを諦めて、自分自身の体を見つめたのだ。

 致命傷を避けたメドゥーサが、俺達を()()


「チチチ! お前たちの変化はあっちの男が原因! だったら男を潰せば私の勝ち!」

「くぅっ、『獣人化・兎』! ――だめ、間に合わない! ぴょん」

「体勢が――やめてぇぇぇっ!」


 いくら頂点に辿り着いたといえど、大技を繰り出した後だ。

 フリーダとジルの攻撃は間に合いそうにない。


 だが――もう倒せるはずだ。

 メドゥーサは大きな傷を負っている。奴の石化が解けた後なら、Tier(ティア)4のスキルだって今なら通る。

 倒せるはずだ。


 俺が()()()()()()後だって。


「俺がもっと強ければな……! く、オリヴィア逃げろっ……俺はもう駄目だっ」

「いえ、まだ、まだ奇跡は――神よ、神よ、どうか私に声をっ!」

「チチチ、手遅れだ! 『石化の魔眼』!!」


 口惜しいのは、オリヴィアを守れなかったことか。

 メドューサの両目が光り、俺は覚悟を決めた。

 が――


「いえ、やはり――神など、いないのですね」


 オリヴィアは短く言って。


「させませんっ!」

「何っ、オリヴィア――」


 オリヴィアが両手を大きく広げて、俺の前に立ち塞がった。

 太陽を直視ししてしまったかのような閃光は、やがて収まって。


 俺は、まだ無事でいた。

 オリヴィアの自己犠牲の心によって、俺はどうにか事なきを得たようだが。

 オリヴィアは――


「ほら、ね……やはり、神などいないのです」

「無傷、だと……!?」


 体のどこも、石化していなかった。

 この場の全員――メドューサだって驚愕していた。


「チチチ!? ど、どういうことだい!? あたしの魔眼は、確実にあの娘を捉えた!」

「あ、有り得ない……並のスキルではないのだぞ、Tier(ティア)5、『頂点』のスキルだ。『催眠耐性-10000%』や、『ちょろちょろ耐性-10000%』にバフでもかけない限りは、絶対に――」

「はい。だって私は」


 オリヴィアだけは驚きはなく。

 振り返ってにこりと俺に微笑んだ。


「『全基本耐性+10000%』。こんな状況でも神の声を聞けない、神を信じられないシスターなのですから」


 事ある毎に神に祈りを捧げていたシスターは、これまでの行いを全て否定した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさかの催眠効かないキャラくるか!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ