☆ジーク視点 堕落していくパーティ
「へっ、やっと光の翼の荷が下りたって感じだな」
パーティのお荷物男を追い払った俺は、テーブルの酒を一口飲んだ。
一仕事終えたあとの酒は旨いもんだ、それがゴミ掃除だったとしてもな。
「ジーク様、お疲れ様でした。お注ぎいたしますわ」
「おおぅ、気が利くなユーニスは。ベラ、お前も飲めよ今日くらい」
「パス。それより、次の冒険はどうするのよ。三人で行くの? それとも一人増やすの?」
今日の仕事は終わりだというのに、ベラは真面目に次の仕事の話をしだす。
「真面目だな。ま、誰でも良いんじゃねぇの? あの無能の代わりなんて誰だって出来るんだ、暇そうな奴適当に入れりゃいい」
「ノープランってわけね。ハァ、どうすんのよ、次に入ってきた奴もあのキモ男みたいな無能だったら」
「うふふ! それはありえませんわベラ。あれほど無能な男など、私見たことありませんもの。誰が入って来たとしても、あの男より下回ることはありえませんでしょう。ねぇ、ジーク様」
「はははっ! 全くその通りだぜ、ユーニス」
話が分かる女だぜユーニスは。
俺が追放した無能を笑い飛ばしてやると、聞き耳立ててやがった他の冒険者達も釣られてクスクス笑った。
あのマルクとかいう催眠無能ゴミ野郎は、デバッファーのくせしてその肝心のデバフが通りづらくなっていたんだ。
苦し紛れのバフ――催眠紋だったか?
あれも効果がどうとかいうよりも、女共の悲鳴が大きくて効果を確認するどころじゃなかった。
まぁきっと――大した効果はねぇだろう。
デバフが通らないデバッファーのバフなんてな。
そんな男の後に入れる奴なんて、あの無能催眠野郎以外なら誰だって構わねぇのさ。
「まぁ次の奴はディフェンダーとかでいいんじゃねぇの? デバッファーも欲しいところだが……またアイツみたいなゴミが入ってくるのも困るしな、六・四でディフェンダーってとこでいいだろ」
俺は酒の回る頭で適当に決める。
「ディフェンダー……! さすがジーク様ですわ、その職業の方でしたら、ジーク様も安心して剣での攻撃に専念出来ますものね!」
「もう、ユーニスはジークの言うことだったら何でも聞くんだから」
ユーニスは俺に大賛成だ。本当に単純な女だった。
ベラは呆れちまっていたが――
表情をコロっと変えて、こう続けてきた。
「んで――その仲間は男? それとも、女?」
なんてことのない質問だ。
尋ねるほど重要な質問でもないな。
だが俺は、試すように二人に向かって、こう聞き返してやった。
「あー……二人はどっちがいい?」
やや間があって、女二人は互いに視線を交差させた後、
「――どっちも、イヤ」
同時に、そう口にした。
女二人は椅子から立ち上がると、俺の体に寄り添ってきた。
「ねぇ、やっと一人追い出したんだし……今夜、あなたのお部屋に行っても……いいわよね……?」
「おいおいベラ、真面目な女かと思っていたら――とんだ不良娘じゃねぇか」
「ねぇ、いいでしょう? お堅い風紀委員長はもう追い出したんだし、今夜は、いつもより激しくしていいから……」
「ずるいです、ベラ。……私もジーク様のお部屋に行きたい。行って、ジーク様の逞しい剣を磨いて差し上げたい。ジーク様、どうか三人一緒に……」
二人の女が俺の体を撫で回す。
俺の鍛え上げた胸筋から、内ももにかけてまで、つつつ、と、指を這わせながら。
一度スイッチが入ったら、周りに悟られようともお構いなしだ。
コッチの意味でも、催眠術師を追い出して正解だったな。
「やれやれ……こりゃしばらくは、三人旅が続きそうだ」
こうして俺たち光の翼は次の仕事なんて後回しにし、三人で激しい夜を愉しむのだった。
仕事よりも女遊びを優先するジークさん。
主人公と立場が逆転するのはまだ先のようですが、その過程もどうぞお楽しみくださいっ!