并州刺史との邂逅
今回は滅茶苦茶短いです。
「おいおい、嘘だろ……。あの張遼殿が打ち負かされたぞ……」
“并州最強の張遼が敗れた”。
このことは、先ほどの一騎討ちを見ていた者たちにとっては、雷に打たれたかのように衝撃的な出来事であった。
「…………」
一方、その張遼を負かした呂布は、張遼の腹部を殴打した際に、呂布の膂力に耐えきれず、真ん中辺りから折れた模擬戦用の槍をじっと見つめていた。
「──何じゃ、この騒ぎは」
唐突に、如何にも優しそうな顔の老爺がこのどよめきに割って入る。
「ッ!? ちょ、張遼が倒れているではないか!? 我が最大戦力の、張遼が!」
老爺は気絶している張遼を見た瞬間、慌ててこの場から張遼を運び出すよう、指示を出す。
そして、折れた槍を持っている呂布を見るや、鬼気迫る表情を浮かべ、訊ねる。
「ま、まさか、お主が張遼を倒したのか……?」
呂布は無言で頷く。すると老爺は、眼を見開き、益々驚嘆する。
「お主、名は何と言う?」
「姓を呂、名を布、字を奉先」
「ほう……呂布と言うのか……」
呂布の姓名を聞くと、老爺は考え込むように顎に手を当てる。
「取り敢えず、儂も名乗るとしよう。儂は并州刺史。姓名を丁原と言う」
一旦考え込むことをやめ、老爺──丁原は、快活な笑顔を浮かべ、名乗った。
このことは、後の三国志では、こう記されている。
──飛将、并州刺史・丁原と邂逅す。
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