盗賊退治
今回は少々読みにくいかもしれません。
183年。後漢王朝が十常侍を始めとした宦官達により、益々政の腐敗が酷くなってきた頃ーー
呂布は荒野を抜け、その先にあった村に立ち寄っていた。
だが、筋骨隆々とした巨漢である呂布を村人達は恐れた。
今の呂布の身長は、二十歳で190センチもあるのだ。
当時の中華の人々にしてみれば、異常でしかない。
しかし、一部の村人達は、呂布に対し一つの希望を抱いていた。
何故か、というと、この村は最近、盗賊に襲撃され、略奪を繰り返されている。
このままでは村は潰れる、という危機感があった最中、呂布が現れたのだ。
その為、村はあの巨漢に盗賊共を退治させようという風潮が流れる中、しかし、どうせ頼んでも断るだろう、又は多勢に無勢、行っても死ぬだけだろうという風潮も同じようにあった。
しかし、明くる日、呂布を泊めていた村の若者が遂に盗賊退治を依頼した。
村人達はどうせ断るだろ、と思っていた。しかし、返答は村人達にとっては意外なものであった。
「うむ、状況は分かった。すぐに支度し、退治してみせよう。」
呂布が快く承諾し、槍を構え、馬を駆らせ、すぐに向かって行ったからだ。
村人達は唖然とした後、どうせ負けるという雰囲気を出しながら、各々作業に戻っていった。
しかし、呂布に盗賊退治を依頼した若者、侯成は違った。
(あの者は必ずや賊共を退治してくれるだろう・・・!)
希望を抱えながら、侯成は馬を駆る呂布をただ、見えなくなるまで眺め続けていた。
一方、呂布は、盗賊が立て籠る山に馬で突貫し、賊の根城を目指していた。
「思ったよりも木が多いな」
呂布は、苦言を呟きながらも馬を駆らせ続ける。
しばらく駆らせ続けていると、古びた家屋が見え、その周辺に錆びた鎧を身に着けた者達が三人程見張りに就いていた。
「あれが賊共とやらの根城か・・・見たところ、強者は居なさそうだな。」
呂布は残念そうにしながらも、槍を構え直す。
「では、突撃するか」
そう言った途端、呂布は馬で突撃した。
見張りの賊達が気付き、呂布に一斉に斬りかかるも、逆に皆突き伏せられる。
呂布は下馬し、槍をもう一度構え直す。
襲撃者の存在に気付いた賊達が武装し、呂布を包囲する。
「烏合の衆が六十人程か、雑魚だな。」
その言葉に激怒した賊達が襲い掛かるも、呂布は槍を振るい、賊達を吹き飛ばす。
「フン!」
そこからは、一方的な殺戮の始まりだった。
ある賊は首がへし折れ、ある賊は胸に穴を開け、死に絶えていた。
やがて、呂布は全身を真っ赤な返り血に濡らしながら、賊だった屍が転がっている家屋の辺りを見渡す。
「また、殺したか」
呂布は無表情に呟くと、馬に乗り、村へと戻っていった。
呂布が村へと戻り、その際、全身が返り血まみれだった事から賊を倒したという報せが村中に行き届いた。
村人達は、掌を返したように呂布はやはり凄かったと口々に称賛する。
呂布は内心、それに悪態をつきながらも、称賛の言葉を受け続ける、
そうしていると、賊退治を依頼した若者、侯成が呂布の前へと踊り出る。
「呂布殿、貴方のおかげで村は救われた。本当にありがとう」
侯成は、呂布に感謝の念を述べる。
呂布は「気にするな、強者と戦いたかっただけだ。」とぶっきらぼうに返した。
そして、侯成は呂布を見て呟く。
「私もいつか、貴方のような強者になりたい。」
呂布は一瞬、立ち止まるも「そうか」とだけ言うと、その場を立ち去った。
呂布は立ち去った後、忍んで侯成の家屋に行き、持っていた銭を寝床に置き、「礼だ。」と言うと、槍を持ち、馬を駆り、再び放浪の旅へと出発した。