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トウモロコシの街にて

ゆっくり書きます。飽きたらポイします

———————————————————————




「は?お前それどこで見つけた?」


「地図だと確か、ゲンマ山脈の端っこ辺りの洞窟に…」


「何匹いたんだ」




「一匹いたのは確かですけど。他にいたかどうかは」


「はぁーっ!無欲さが呼び込むってやつかねぇ」

「そうなんですかねえ……いや、よく知りませんけども。もしかして絶滅危惧種かなんかですか?あれ」


「それさえもわかってねえのよ。個体数が少ないのは間違いないけどな」




——————————————————————————————————————————————




その国を『炎の国』と呼ぶにはあまりにも狭義的であった。水はぬるく、日差しは鋭く、気温は高く、国民性も……すべてが他国に比べ、段違いに熱かった。そこがあらゆる“熱さ”のるつぼであることをたたえ、あるいは皮肉って、古くよりフエゴジャ皇国は『熱の国』の異名を持っていた。




そして、熱を象徴するものといえば炎であるとして、その中心である炎心の形を『とうもろこし』に見立てた大昔のフエゴジャ民により、フエゴジャの首都はそのままとうもろこしを意味する名前で呼ばれるようになった。炎の国と呼ぶことを避けたのに、結局は炎に由来する名前を首都に付けるというのは何やら本末転倒な気もするが。


そも、炎心は炎の中心。一番熱いのは外側の外炎である。




そんなトウモロコシの都市。その城下町の酒場にて、かたや浅黒い肌にややクセっ気のある金髪の、20代後半とおぼしき痩せ気味の男。かたや190センチをうかがおうというほどに高い背丈が特徴的な黒髪の男がテーブルに向かい合って食事を摂りながら話をしていた。黒髪の男の方は顔立ちから推察するに、歳は20代前半といったところか。顔で年齢を推測しようにも、身長の高さに目移りしてしまい判断に悩むことだろう。




名前はそれぞれ、金髪の男はリヤドロ・ポルタ。黒髪の男はハーシーといった。二人ともに冒険家であり、冒険家としてリヤドロは先輩。ハーシーとは後輩の仲だ。冒頭のやりとりは二人が先ほどたまたま街で出くわしたところから始まる。


一国の首都の城下町という人が集まりやすい土地とはいえ、世界中を巡る冒険者がばったり遭遇したのだから、立ち話もなんだと酒場に寄ってお互いの冒険譚を聞かせ合っていた。




…その途中、ハーシーが“うずを巻いていない緑色の殻を背負ったカタツムリ”を見つけた話を始めたところで冒頭のリヤドロが素っ頓狂な声をあげたくだりに繋がるのだ。






「ゲンマ山脈の………端っこ?尖ってるところだな。その辺の洞窟ってことは……イヌンタロス領か?」




「ですね。ピスカール区のネムロザビレが最寄りです」




「あーダメだ田舎過ぎて行ったことねえわ。ドア繋げんのは無理だな………イヌンタロスかあ。知られずに保護できないもんかね?」




「あそこの焼き魚うまいですよ。皮パリパリしてて。………さっきから全然話に付いていけないんですけど。あのカタツムリなんかヤバイやつなんですか?珍しいってだけじゃなさそうですね」




「ヤバイもヤバイ。こんな酒場で誰かに話して聞かれたらまずいレベルだ。超大発見」




「マジですか」




リヤドロのその言葉を聞いた途端、ハーシーは辺りをキョロキョロと見回しながら声のボリュームを下げた小さい声でひそひそと、店内の喧騒に紛れないように顔を近づけてリヤドロに問いかけた。




「場所移します?」




「待て。まだ俺の注文した焼き飯が届いてない」




「リヤドロさんの中で大発見って焼き飯以下の価値なんですか?」




「お前が俺の分までバクバク食うから腹減ってるんだろうが!俺が頼んだ角ウサギの塩炒め返せよ!付いてきたタレだけ残して半分以上一口で食いやがって!この甘じょっぱいタレだけでどうしろってんだ!」




「それはマジですみません」




「それはってなんだよ……その後注文したニンニク炒めヌードル一すすりで全部食ったことは悪くないのか?えぇ?」




「いや、その時点で俺はすでにウサギほとんど食ってたわけですし、あの流れで俺を信用したリヤドロさんの非では?」




「ああ、そうか……ならまあ、俺にも多少………いやお前がそもそも食わないといいだけだよな?なあ?違うのか?」










リヤドロはハーシーのことを「無欲」と評価しているようだが、どうやらハーシーは無欲どころか人一倍でもきかないほどの食欲の持ち主らしい。なんなら、意地汚いと言っていいほどに。




「………で、そのカタツムリってなんです?」

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