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令嬢とは我が儘なものなのです。  作者: よもぎ団子
1章 幼少期 設定改革編ーそれでも世界はシナリオ通りにー
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17 メイドのすべきこと

ラビナ視点→リーシャ視点です。


 一方ラビナは前世培った経験により苛烈な(?)戦闘を繰り広げていた。



 (うーん、王宮の人達は手応えがないなぁ)



 木刀を構え、もう突進してくる相手をひらりと交わして背中を取る。

 相手に背中をとられたら死ぬと教わっていないのだろうか。流れるような手つきで一本打ち取り無力化すると、一瞥もせずに次の相手と対峙する。



 ああ、気迫が足りない。

 これならセイラお姉さまや庭師のお爺ちゃんのほうがよほど手応えがあった。


 特にセイラお姉さまは何故か剣の手合わせになると親の(かたき)のように決死の覚悟で切りつけてくるのだ。

 その上貴女を倒さなければ私の未来はないのよ…!なんて容赦なく喉元を狙ってくる。それをラビナは払いのけ、足払いしてセイラが仰向けに倒し、顔の直ぐ横の地面にグサッと刺す。のだが、それでもセイラは構え直して次こそは…!と挑んでくるのだ。

 そこに「私に勝とうと思ったら10年早いよ!」と余裕の笑みを浮かべて嬉しそうに反撃するのがいつもの流れだった。――鬼畜上司、鬼姫の君臨である――


 それぐらいの気合いが最近の若者には必要だと思うのだ。



 それに危機感が無さすぎて呆れる。

 ちょっと体制を崩すと直ぐ諦めの色を瞳に宿すのだ。自分がいつ死地に立つやもしれぬと分かっているのか。これじゃあまるで温室でぬくぬくと育てられた雛鳥のようではないか。






 そう考えている間にも10名ほどの騎士が一斉に襲いかかってくる。

 しかし慌てた様子はなく、木刀を一振りして闘気を放ち威圧。それだけで相手は顔をひきつらせ、腰を抜かして後ずさった。


 辺りを見渡すともう動ける者はいなく、三十数名の大の大人がことごとく倒れていた。

 ―――実際問題この王宮の騎士のレベルは確かに群は抜いていないが、周辺諸国に負けず劣らず強者揃いなのだ。…只、元鬼姫(ラビナ)が強すぎたのと、セイラがバッドエンド回避に躍起になっていたこと、それに庭師のお爺ちゃんは元ケーツ将軍、修羅の狼という異名を持った歴代きっての猛者だったことが重なったせいで王宮の騎士達にとって不幸なことになったのである。





 ふっ、と軽く息をつくと、何処かからパチパチと拍手する音が聞こえた。


 「こりゃあすごい。なあ、今日来た王妃様候補のお嬢さんだろ? 俺とも戦ってよ」


 そう告げてきた金色髪の青年は、キラキラと瞳を輝かしてニカッと笑った。

 見たところ邪気はなく、本当にラビナと戦いたいだけみたいだ。


 良くも悪くも素直(・・)な青年。



 そうラビナは青年を評価した。と同時にこの人が一番厄介だと感じる。

 世の中一番面倒くさいのはなに考えているかわからないお腹真っ黒な大人達だが、厄介なのは素直な者だとラビナは前世の経験により知っている。

 何しろ素直な者は伸び代があるし、考え方も柔軟。それでいてちゃんと芯があり、なかなかな頑固者が多い。見方になると頼もしいが、自分とは違う思想の持ち主だと途轍もなく厄介。それがラビナの認識だった。




 まあでも、この際どうでもいい。ラビナが重視することはただ一つ―――



 「金髪のお兄さんが一番面白そうだからいいよっ!」


 木刀を構え、獲物を前にした肉食獣のように目を光らせて嗤った。




 「そう来なくちゃね」


 心底楽しげな声色で軍人も殺気を携えて構えた。


 ピリピリと鋭い殺気を幾度となく交わし……ポキと何処からか枝の折れる音がしたその瞬間キンッと空気を震わせるような重い一撃が交わされる。


 戦いはまだ始まったばかりだ。







▫▪▫▪▫▪▫




 「……っ」

 その頃、リーシャは植え込みの下で身を縮めて涙目で踞っていた。

 先輩(ルナシー)の言葉を思いだし、自分に出来ることを考えていたらいつの間にか知らない森をさまよっていて、気づいたときにはもう時遅く、元来た道も分からなくなってしまっていたのである。

  

 訳もわからぬまま新緑の森を進んでーー意図せず枝を踏んだ瞬間途轍もない殺気が向けられ、続いてキンという刀音が響いた。

 それは一瞬の出来事で、しかし再度聞こえる空気を震わすの如く鳴る金属音に腰を抜かしそうになり、反射的に鳴っている方向を見た。


 音の主は、ラビナだった。



 リーシャの主(ラビナ)は、まるで野生に返ったかように恐ろしく獰猛に嗤っていた。



 (………ラビナ様、楽しそう、です)

 少し涙目で視界を滲ませながらもリーシャはラビナを見つめる。

 自分が仕えるべき主を守ることが、従者(リーシャ)のすべきこと。

 それは何も健康を管理するというだけではなくて、このようなラビナのしたいことが出来る環境、自由も守りたい。






 (…………したいこと…そういえば、悪役令嬢になる!ってこれまで見たことないくらいキラキラした笑顔で仰ってました、よね……)

 となればその『悪役令嬢』とやらの手助けになる技を身に付ければ良いのだろうか。

 しばらく考え込み、一つ縦に首を振る。

 方針は決まった。後は実行するのみ!と、その前に。





 「…………『悪役令嬢』とは、何でしょう………?」

ブックマークありがとうございます。

ふと見たら増えていて小躍りしてしまいました。やはり見てくださっている、とわかると嬉しいですね(〃´▽`)。

ご無沙汰してしまい申し訳ありません。これからもご視聴くださると嬉しいです。


因みに素直な青年はルナシーの言っていた人と同一人物です。

これからも宜しくお願い致します。

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