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令嬢とは我が儘なものなのです。  作者: よもぎ団子
1章 幼少期 設定改革編ーそれでも世界はシナリオ通りにー
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13 リーシャの焦り

 それから数日、ラビナは粗方王妃教育の座学の基礎を終えた。 


 そして明日からは待ちに待った武術(ごしんじゅつ)の演習である!

 いや、勿論本を読んで色々なことを知るのも楽しいし、前世の知識と比べたりあれからあったことを知るのはとても面白いのだが、元超危険指定種族(ぶどうは)としてはこっちの方が血が滾るものがあるのだ。


 しかも()()()()鍛えていると言ったら、本物の騎士の指導を受けさせてくれるとか。

 ああ、早く明日にならないかなあ…。

 

 学習を終えて夜、夕食を食べ終わったラビナはご機嫌で紅茶を飲んでいた。

 因みにここは王妃の間の後宮の一角、星稜殿だ。後宮という制度はとっくの昔、それこそ戦争をしていて王族でさえもいつ死ぬかわからないような時代以来機能していないが、“王族のすむ場所”という意味で使われているのである。

 そこにラビナの専属メイドとして一人、リーシャがついてきたのだ。



 「お疲れ様です。ラビナ様………………」


 「うん! いつも美味しい紅茶ありがとう! リーシャ」


 「いいえ、……………私はこの程度しか…………お役にたてないので………………」


 「む! お茶が美味しく飲めるように注ぐの凄さがわかってないでしょ?!」



 ラビナは休憩がてら紅茶をいれる特訓や料理の特訓等もさせられているのだ。

 その時に入れたお茶の渋いこと………。改めてリーシャのすごさを実感した時であった。

 他にも健康管理やお肌チェック、お菓子の差し入れから髪の手入れまで様々なことをしてくれている。

 勿論お菓子はカロリーが抑えられたものを。ここ重要!!ラビナは気づいていないが、無類のお菓子好きでありながらもちゃんと欲求は満たしつつ、健康的で将来有望そうな容姿を調えているのだ。


 一家に一人欲しい乙女の味方、リーシャである。


 しかしそれだけではリーシャは満足できないようで。悩ましげに眉を潜めた。



 「もっとお役にたてるようになりたいです………………」

 

 「ふふ、ありがとっ! リーシャ。ーーじゃあ私と同じように王宮(ここ)で鍛えてもらったらどう?」


 「………なる、ほど…………」



 ぶつぶつ考えこむリーシャを横目にラビナはまた紅茶唇に付けた。


 今リーシャに慰めを言っても耳に入らない。なら鍛えちゃえばいいじゃない。

 悩む暇あったら体を動かせ!これがラビナの前世の口癖であった。―――根っから上司思考の鬼畜鬼姫である。さぞ前世では部下が苦い思いをしただろう―――


 







 そうして夜は過ぎていく――――――。



 朝、ラビナは日の出と共に飛び起きた。

 軍事練習っ!!とベッドから躍り出て、鼻唄混じりに軍服に袖を通す。

 楽しみで楽しみで昨日の夜は早く寝てしまったのだ。遠足前みたいに眠れない…ということはない。しっかり8時間睡眠は取るラビナである。

 備え付けの洗面所で顔を洗い、ぱぱっと身なりを調える。

 おお、流石王宮。水関係の設備が素晴らしい、と洗面所を眺めていると、こんこん、とドアをノックする音が聞こえた。

 はーい!と元気よく返事するとリーシャが丁寧にドアを開けて入ってくる。現在5時、タイミングバッチリである。



 朝の挨拶をすると、示し合わせたでもなく自然とラビナはドレッサーの前に座り、リーシャは櫛を構えた。

 ラビナの白い、ペルシャ猫のような寝癖たっぷりの猫っ毛が優しく解きほぐされていく。その間ラビナはくすぐったそうに目を細めながらもなされるがままにされていた。



 今日の髪型は編み込みのポニーテールだ。動き回るのにも邪魔にならず、ほどけにくいので、今日のような日にはぴったりの髪型だろう。

 またそれが一見すると軍服の凛々しさと令嬢の上品さを引き立てていた。()()()()()だが。



 その出来映えにリーシャは満足して頷くと、少し控えめに言う。


 「すみません……今日は別の行動をしてよろしいでしょうか?」



 一晩寝てリーシャも考えが纏まった。

 このままでは何も変わらない。日々磨かれていくラビナと違い、何も変化のない自分に焦れていたのである。

 だからこそメイドや侍女の最高峰である王宮で、自分も何かしら役に立つものを会得したかった。


 しかしラビナのメイドとしては失格である。

 メイド足るもの自分の欲求を優先し、主をないがしろにしてはならない。自分の体が二つないことがとても歯痒かった。

 だからこその控えめである。因みにリーシャの“控えめ”とは今にも泣きそうに目に水分が過剰に含まれている状態を指す。

 そんなリーシャに苦笑し、ラビナは暖かく微笑んだ。



 「うん。お互い頑張ろ! その代わり夜になったら色々聞かせてね?」



 それは場合によっては、私から離れるんだからそれ相応の成果を持ってきなさいよ?夜聞くから逃げないでね?と言っているように聞こえる、がラビナは全くそのつもりはない。天性の鬼畜上司である。


 「はい……………!」



 それに健気に答えるリーシャもなかなかに天然だと思われる。お似合いな主従であった。

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