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令嬢とは我が儘なものなのです。  作者: よもぎ団子
1章 幼少期 設定改革編ーそれでも世界はシナリオ通りにー
11/26

10 変人一族ユートリア

遅くなってしまい、申し訳ありません。

セイラがサハレルをからかっている頃、ラビナ達は、王宮の一角、エリリア王妃の執務室にて二人して机に向かって黙々と作業をしていた。 






 かたや代々受け継がれてきた王妃の公務用机(オフィスデスク)、かたや2人がけソファに挟まれている応接用机(センターテーブル)の端、という違いがあるものの、その表情は真剣そのもの、見るものによっては張り詰めている気の強さに動転し、固まってしまうものも少なくないだろう。


 そんなラビナの机には、本の山が3つほど、それぞれ分厚い本が10冊ほど積まれてある。それが今日のノルマらしい。

 建国から現代までの歴史書が主で、大まかな歴史からかなり詳しい内容まで、幅広く載っている。建国200年を誇るフラネス王国の内容は多岐にわたり、それは子供が読むには随分難しく、それどころか大人でさえも顔を背けて逃げ出したくなるような内容の数々だ。

 明らかに齢5歳の子供が読むものではない。


 それでもラビナはエリィから渡されたそれを淡々と読み進めていた。―――いや、正確に言えば、時に奇声を発し、時に何かを一心不乱に書き留め、時に気になることができた、と言ってどこからともなく山をもう一つ持ってきたりと、色々と騒がしく、“淡々と”とは程遠いのだが。

 何故こんなにも規格外の量ををようやく文字を読めるようになったぐらいの年頃の少女が読んでいるのだろうか。

 それを苦情のひとつも言わず嬉々として読み進めているラビナもラビナだが、やっておいてね、と言ったっきり自分の執務に戻ってその世界から帰ってこないエリィもエリィである。




 いや、弁明させて欲しい。

 こうなったのには訳があるのだ。

 











▫▪▫▪▫▪▫▪▫▪▫



 あれからまずエリィはラビナに知能力テストをするよう命じた。どれくらい物事を知っているか、という現時点の習熟度テストは勿論、暗記力、思考力、物事を見通す力、理解力、様々な系統の力を測ったのだ。


 その結果、ラビナはいっそ笑いたくなるくらいあり得ない結果を取った。


 習熟度、知識としては平均より少しいい程度(何故か古典の教科、取り分け古代の文献については完璧だったが…)。

 計算能力や思考の幅も普通よりは高いがまあ公爵令嬢ならば出来て当然のレベルであった。


 しかしただ一つ、理解し、暗記する能力だけは、異常なほど高い力を見せた。

 一を聞けばそこから十のことを理解し、長ったらしい地域名を10教えればそっくりそのまま一度も復唱せずに覚えてしまう。

 それはもうこの国のトップレベルの文官と張り合っても勝らずとも劣らず、まだ他国の参謀か誰かが変装して解いたと言った方が納得できる。


 逆に何故他のことが平凡なのかが理解出来ないのだ。



 ――――お忘れではないだろうか、ラビナは前世、鬼の姫なのである。

 そして鬼とは弱肉強食、少しでも計算を間違えば死亡、名前を間違えば死亡、期限までに書類が提出出来なかったら死亡ーーとにかく一瞬でも気を抜いたら即死亡の鬼畜ゲーである。

 姫は特にその傾向が強い。それ故ラビナは思考力が人外レベルに高く、理解度は音速に達し、暗記機能は意識しなくとも自然と備わっている超絶ハイスペック人間となったのだ。

 但しまだ前世の記憶が戻って日が浅く、前世の記憶が戻ったと同時に眠っていたハイスペックが目を覚ましたので、まだこの世界の知識や計算方法、考え方が備わってない――――





 いまだかつて、フラネス王国にこのようなハイスペック人間は現れたことがなかった。

 “努力が全て”という風潮が高いフラネス王国において、ラビナはまざまざとその才能の片鱗を見せつけたのである。

 ―――いや、前世の努力ではあるのだが、そんなこと王妃(エリィ)にとっては知ったこっちゃない。


 それを見たエリィは驚愕に目を見開き突っ立ち、王族すらも凌ぐ才能の壁に戦慄する――――ことはなく、半眼になってラビナを見つめた。それはよくラビナ達が目にする、特有の眼差し。



 さすがはユートリア公爵家ね。 さすユーである。

 


 実は今までおまけのようにラビナ達の名前の後ろについていた“ユートリア”という家名、この国最高の変人一家として有名なのだ。

 生まれてくる子は全員優秀、しかしそれ以上に変人。

 例えば、最高位の地位をもらえるにもかかわらず面倒、早く帰って寝たい、と言って長男が蹴ったら、後ろから次男がポン、と王の肩に手をおいて腹黒い笑みを浮かべ、と思ったらそれを横目に三男は酪農に勢をだし、長女は『ちょっと軽くハイキングにいってきますわ』という置き手紙を出して悠然と大国の第一王子と駆け落ちし、ちょっと酔った勢いで魔王を討伐してしまうほど骨董無形な一家なのだ。

 因みにこれは先先代の話である。


 なお、長女が圧倒的に規格外すぎない?!という突っ込みは承っておりません。

 ユートリア公爵家の女はいっそ格好いいほどに度胸があるのだ。これぐらい日常茶飯事なのである。

 まあ他の二人も王を無下にしすぎだし、もう一人に至ってはお前貴族だろ!という言葉を何百回かけられているかわからないのだが。

 それでも皆それぞれのやり方でこの国に大きな利益を与えているのだ。この国はユートリア公爵家無しでは語れない、と言われるくらいには。

 それ故に人々は畏怖と尊敬、諦観と善望、それに微かな嘲笑を込めて言うのだ。



 さすがユートリア公爵家だ、と。







 そしてそこに暗記能力が優れすぎている面白いことに命を懸ける超絶ハイスペック人間が混ざったとしても違和感はない。


 だって彼らはユートリア公爵家!




 ちょっと魔法が出来すぎていても、軽く災害レベルのを引き起こしていても全く問題ない。白髪で赤目のまるで()()()()()容姿をした娘がいても、歯牙にも止めないだろう。


 だって彼らはユートリア公爵家!




 かの家ならば何を起こしても問題視されない。そんなんにいちいち構ってたらいくら心臓があっても足りないと人々は長い年月のなかで悟ったのだ。



 だって、彼らはユートリア公爵家なのだから。




 そしてその騒動は、必ず国の利益となるのだから。




 もしかしたらラビナの今世一番の幸運はユートリア公爵家に生まれたことかもしれない。


 ――――因みに悪役令嬢になっても“王子が聖女を手にいれる”ことで国の利益となっている。どんな行動をしてもそうなってしまうなんて…さすがユートリア公爵家、さすユーである。ここまで来るともう呪いね!と(くだん)の長女が不貞腐れていたのはまた別の話。

 

 





 ラ ビ ナ は さ す ユ ー の 称 号 を 手 に い れ た !


 【ラビナ・ユートリア】

 暗記 99〈max〉

 理解力 99〈max〉

 速読力 82〈+12〉

 フラネス王国ノ歴史 32〈+32〉

 呆れられ力 39〈+39〉

 称号 さすユー一族

    王妃見習い

    


▫前世、鬼姫の記憶が戻ったことにより暗記・理解力max に。

▪さすユーのくだりの間にラビナはフラネス王国の歴史を32%覚えた!

ラビナは歴史学者になれる才能を持っている!

 なりますか?→No

 とある歴史学者が泣いた(後日談)

▫[王妃の半目]により呆れられ力が39アップ

    

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