一章の④ 選定条件
やはり、普通じゃない学校の入学式は普通ではなかった。
入学者の再選定とクラス編成を行う試練がなんの予告も無く行われるのだった。
誼人は知的に見えていた周りも世間一般と変わらない行動をとっているので、少し気が楽になった。
人間は未知の世界に恐怖し過大評価してしまう事が多々ある、周りの知的な雰囲気は自分の思い違いだったのかもしれない。
いつのまにか誼人は会場の最前列付近に来ていた。会場の様子を見て偉そうにため息をついて考え事をしているうちに最前列まで来てしまっていたのだ。
来てしまったからには引き返すのも気が引けるので、最前列の左角というなんとも目立つ席に落ち着く事になってしまった。
誼人は携帯電話を学生鞄から取り出し、入学式の開始時間はまだかと時間を確認した。現在十一時丁度、開始は三十分後で、思っていた時間があった。
しかし、こういった場で携帯電話の世界に引きこもるのは、なんとなく心が貧しそうに見えると考えている誼人は、ステージを漠然と見つめ、時間が経過するのを待った。
今後の学校生活がどうなるのか、そもそもここはどんな学校なのか、と未来の事を夢想した。この三十分間も考え事していればあっという間だろうと考えていた。
夢想の世界は非常に楽しい物だ。何をやっても唯一無双の主人公になれる。
誼人は現実世界で積極的に行動できない分、空想世界の中では積極的になれるのだった。
「あの~。隣、空いてますか?」
未来の明るい学校生活の夢想から一気に現実に引き戻された。