一章の③ 選定条件
やはり、普通じゃない学校の入学式は普通ではなかった。
入学者の再選定とクラス編成を行う試練がなんの予告も無く行われるのだった。
建物の中は入学式らしく長方形の配列でパイプ椅子が綺麗に並べられていた。
異様な校舎と思われる建物群から一転、なんとも世間一般で想像される入学式のスタイルだった。
席に指定は無いようで、まばらに席が埋まっている、前の席と後ろの席の空席度を見た時、前は空席が多く、後方にいけばいくほど人が多く座っているというグラデーションは案の定といったところだった。
また、騒音の観点でもこのグラデーションは観測できたりする。
まだ入学式が始まっていないので、席に座った生徒達は思い思いの行動をとる。誼人のような一人ぼっちの人間以外は一緒に来た友人とのおしゃべりをするのが普通だ。
そして、そのおしゃべりのボリュームが後ろにいけばいくほど大きくなる。空席率のグラデーションとまったく同じである。
前方は空席が多いのだから、今この状況だけ見れば当たり前かもしれないが、仮に会場が満席になっても自分勝手なおしゃべりをいつまでもしているのは後方なのだ。
ひとりひとりに着目すると、カバン等を置いて席をとっている生徒がちらほらいた。
後から来る友人のためかな、と誼人は最初に思ったが、友人なら入学式に一緒に来るはずなのでただ単純な「拒絶」の意味かなと思った。
カバンを自分と相手との間に挟む事によって、相手との間に壁を作るのである。
それは物理的な壁ではなく、精神の壁であることがほとんどだったりする。その様子を見て誼人はため息をつく。
(はぁ、他人だらけで不安なのはわかるけど、最初から壁作ってちゃ誰からも話しかけられずに、ずーっと周りが他人のままだろう……)
興味を持った理由は不純だったが、心理学系の知識は少しだけあるのだった。