一章の② 選定条件
やはり、普通じゃない学校の入学式は普通ではなかった。
入学者の再選定とクラス編成を行う試練がなんの予告も無く行われるのだった。
それだけに、誼人は周囲の醸し出す知的さ、砕けた言葉で言えばちゃんとしてる感にとまどっていた。
自分は一体、何を評価されて特待生になったんだ? もしかして通知自体が何かの間違いなのか? と思い始めていた。
寝られずにいると、将来だとか、人間関係だとかを色々と悪い方向に考えてしまい、意味もなく不安になってしまうセンチメンタルな脳内で不安を余計に肥大させていた。
ふと気が付くと、周りの生徒達が講堂か体育館のような建物に吸い込まれていた。
人の波に逆らう事もなく開放された大きな扉に飲まれていった誼人は、正門からここまでの道のりが全く記憶にない事に気が付き、度々人から指摘されてきた自分のクセを思い出す事となる。
移動最中などの頭を使わなくてもいい時間は、いつもこうやって物思いにふけるクセが誼人にはあった。
それは電車での移動はもちろん、徒歩、自転車での移動も例外ではなかった。
事故にでもあっていれば、クセを治そうと思う事もあっただろうが、不思議と事故とは無縁なので、むしろ考え事をしているうちに目的地に到着しているのだから便利だと考えていた。
しかし、かなりの頻度で知人から「すれ違った時声かけたのに、なんで無視したの?」と言われる事に関してだけは困っていた。