プロローグ
ページを開いていただき、ありがとうございます。
(諸事情あり、1年半のブランクがありますが、どんどん続きを投稿していきます)
あらすじには、経済戦争の学園モノというような事が書いてありますが、まずは主人公たちには、普通じゃない入学試験が降りかかります。
具体的な試験内容は『一章 一話の⑨ 選定条件』あたりから本格的にスタートし、『一章 一話の⑪ 選定条件』にて物語の起承転結でいう「起」があります。
そこまでお目通しいただければとても嬉しく思います。(そのあたりから面白くなってくる……はず……)
零章 零話 始まりの日
「なんだこの高校は……。」
新品のブレザーに着られている松下誼人は、どう見ても高校とは思えない建物の前で独り言を漏らしていた。
高校とは思えない、というよりも何の施設かもよくわからない作りをしていた。
まず正門を挟むように2つそびえ立っている3メートルはありそうなオブジェが目を引く。
それは杖に蛇が二匹巻き付いており、てっぺんには大きな両翼が飾られていた。
謎のオブジェの後方に見て取れる内部には、ビルのように仰ぎ見なくてはならないようなモノや、二、三階程度だが横に見廻さなければ全貌をつかめないようなモノまで、そんな建物が都会からやや外れた地にひしめきあっていた。
増築を繰り返してきたと思われるその魔城を見渡した誼人の頭に浮かんだのはさながら『ホグワーツ魔法魔術学校』だった。
ただ、目の前にある建物群には魔法もファンタジーもまるで望めないという事だけは、中学時代に落第生と呼ばれた誼人にもわかるほど現代的で機械的であった。
空は青く澄み渡っていたが、少しばかりの灰色の雲が上空の強風を受け、歩くような速さで形を変えていた。
希望に満ちた晴天が不安そうな雲を携えている様は、地を行く新入生の心情との鏡合わせになっていた。
誼人は大勢の新入生と共に、事前に配達されてきたパンフレットを参考にして入学式が行われると表記されている施設に空を見上げる事もなく向かった。
一歩目を踏み出した時に吹いた温い風は、春先独特のむず痒さを運んできていた。