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仮想世界〈リアル・ワールド〉  作者:  
リアル・ワールド一周年記念
1/14

ベヒーモス戦

「そっち、行ったわよっ!」


「ああ、任せてくれ。ボスのタゲは俺がとるっ!」


そう言うとタンクの雄大が力強く大きな盾を叩き、大きな音を鳴らす。

彼がタゲとりの際に使う技、シ《ールドバッシュ》だ。

盾を力強く叩き、大きな音を立て、敵の注意を惹くスキルだ。


「ええ、任せたわッ!」


そう言いながらヒーラーである夏音が防御力を向上させる魔法、《プロテクション》を唱える。

それと同時に雄大の身体がオレンジ色に光る。

ボスの大きな手が振り下ろされる。雄大はその攻撃を受け止める。

その瞬間、轟音と共に火花が散る。

雄大と共にボスは一瞬、硬直状態に陥った。

その隙を逃すまいと、紫色に光る一本の線がボスの脳天に直撃した。

血しぶきが飛び、大きなうなり声と共に後ろへ大きく飛び後退する。


「遊撃は任せろ」


彼はアーチャーの東。そして、彼が放ったのは高位の弓スキルの《デス・スピア》だ。

低レベルのモンスターなら即死させることが出来るが、やはりボス級のモンスターには効かないみたいだ。

ボスが後ろへ下がったお陰で、ボスとの間ができた。


-この間合い...


右手に握られた片手直剣に力を籠める。

すると、次第に剣が黄色い光を帯び始めた。さらに力を籠め続けると、剣が微かに震えた。

それがスキルを発動するタイミングだ。


-片手剣スキル


「ストレート・ライン」


黄色く光る剣を突き出し、ボスを目掛けてもの凄い速度で一直線に間合いを詰める。


「いっけっ~!!」


夏音の叫ぶ声が聞こえた。

少しで遅れて東が叫ぶ。


「躱せっ!」


次の瞬間、俺は壁に打ち付けられていた。あまりにも刹那な出来事で何が起こったのか把握できずにいた。

取り敢えず、顔を上げると赤く光った双眼がこちらを睨んでいた。

左隅に目をやると、自分の体力ゲージがレッドゾーンまで減っていた。


「...急いで、回避、行動、をしなきゃ...」


ボスの口元から紅い炎が漏れていた。


「優真っ!ブレス攻撃が来るよっ!...避けてっ!」


-言われなくても分かっているっ!


よろめく身体に鞭を打って立ち上がる。

今から回避行動をしても遅い。なら...スキルを使って脱出か?

いや、それでも遅すぎる。スキル発動にも時間が掛かる。なら、どうする?


「雄大っ!援護してやれっ!」


「分かっているっ!」


視界の右隅に雄大がこちらに向かって走ってくるのが見えた。

高速の弓矢がボスを打ち抜く。

少しだけ東の方へ気を取られたが、すぐにこちらを振り向く。

東の援護もあって雄大は無事に辿り着くことが出来た。


「待たせたね」


「迷惑かけて、ごめん」


大きな雄たけびを上げるボス。

より一層、ボスの目が赤く光った気がした。


「...来るよ」


次の瞬間、灼熱のブレスが俺たちを包み込んだ。

夏音の《ヒート・レジスタント》により、耐熱耐性が付与され、幸いにも灼熱ブレスによるダメージは軽減できたが、俺の体力が減少していたことにより、俺は呆気なく死んでしまった。

体力がゼロのなると画面が暗くなり【You are Dead】と赤文字で表示された。

その表示がなくなると同時に、意識が現実に引き戻された。


-2098年。もう少しで21世紀が終わりを告げ、22世紀を迎えようとしていた2098年に全世界を揺るがす衝撃的なニュースが報道された。

それは、『仮想世界を体感できる機器の発売!!』といった内容のものだった。それまではVRなど、疑似仮想空間を体験できるものはあったが、自分自身が仮想世界に行くことが出来るのは初めてのことだった。

日本では10万台抽選発売されることになり、ニュースの翌日には一足早く予約しようと沢山の人が電気量販店などに足を運んだ。予約期間は一週間で、次の週には告知されていた。

購入できなかった者が店に押しかけ、さらには購入する際には色々と書類記入があり、購入するまでに時間が掛かることもあって、各地で暴動が起こるなどと社会現象化していた。

無事に購入できることが出来た俺は規則に則って、病院でICチップの埋め込み手術を受けた。

手術といっても麻酔などをかけるものではなく、頭に注射をするだけだった。

なんやかんやで朝に購入して、ようやく遊べたのは夜になってからだった。

まず、初めに仮想世界に慣れるために片っ端から色々なゲームをやってみた。

そして行き着いたのが...


-リアル・ワールド


このゲームはVRMMOで、荒廃した世界が舞台のファンタジーRPGだ。魔法や剣はもちろん、色々な武器が使え、色々な職業が体験できた。さらにゲーム内には人族だけではなくエルフやドワーフ、妖精といった類も用意されていた。自由度の高さに加え、綺麗なグラフィック、豊富すぎるコンテンツのお陰で発売されてから発売・ダウンロード数ともに一位をキープし続けている超傑作となった。

発売されてから一年...現在、一年記念で様々なイベントが開催されていた。

その中で、ボスラッシュというイベントがあった。12体のボスが出現し、倒したパーティーには特別なゲーム内アイテムが貰える。俺たちはその一体である〈ベヒーモス〉に挑んでいた。

だが、今回も俺のミスでパーティーは全滅してしまった。

挑んで6回目だ。全て俺の判断ミスで全滅してしまった。


『強かったね』


『また、挑もうか』


『今度は慎重にな』


『みんな、ごめん』


『気にしないでよ~』

『大丈夫さ』

『気にするな』


スマホアプリのチャットでそんなやり取りを交わした。

そう。これはゲーム。失敗しても何度でもやり直せる。

それが現実と仮想世界の違いだ。


-明日こそは...


「倒してみせる...!」





 



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