ヒロインに更に懐かれた
ガールズラブ注意です。
苦手な方、そっと閉じてくださいませ。
解せぬ
何が解せないかというと、ヒロインと入浴しているという事に対して。
今、私はヒロインに髪を洗われている。
そして、ヒロイン…髪を洗いながら首筋の匂いを嗅ぐのは変態みたいなので、やめて欲しい。
お願いだから…。
何故こんな事になっているかというと、時間は遡ること30分程前。
相変わらず懐いてくるヒロインを左腕にぶら下げながら、婚約者様がいる図書室へ向かおうとしていた。
図書室へ向かうには、一度教室棟から中庭を抜けて、図書室が入っている特別棟へ向かうのが近道だ。
なので、本日もそのルートで行こうとしたら、上から水が降ってきたのだ。
バシャっと。
大量の水が。
ヒロインめがけて。
主に水を被ったのは、私だったけど。
何故左腕にぶら下がってるヒロインは無傷なのだろう?
私が鈍化さいだけとか言わないよね?
上から水をかけた女生徒の声が聞こえる。
逃げる相談かしら?
平民を狙ったつもりなのに、被害を受けたのが、侯爵家の令嬢ですものね。
見つかったら、それはマズイでしょうね。
それにしても…。
こんなシーンあったなぁ。
ゲームの中ではちゃんとヒロインが水を被ってた。
そして、濡れてボーゼンとしているところに、図書室で待ち合わせしていた婚約者様が、その姿を発見して、自分の制服の上着をそっとかけてくれるシーンが。
全身に水を浴びて、小刻みに震えているヒロイン。
だけど、貸して貰った制服の上着を、「これも濡れちゃいますから。私なら大丈夫です。」と、返そうとする。
それを、「目に毒だから自分の為にも着て欲しい。」と告げる婚約者様。
その言葉にハッとして、改めて自分の姿を見ると、水に濡れたため、制服が身体のラインが分かるくらいにしっかりと張り付いており、下着も薄っすらと透けて見えていた。
恥ずかしくて座り込むヒロイン。
そんな彼女の姿を愛しく思い、お姫様抱っこして、救護室に運ぶ婚約者様。
その一連の流れを上から見て悔しがってたのは、水を浴びせた張本人の悪役令嬢な私。
そんなシーンな筈だが、現実では、水を被ったのは、犯人の筈の悪役令嬢な私で、傍には攻略対象者の婚約者様ではなく、ヒロイン。
「大変!大変!!」
と、ボーゼンとしている私の顔や髪をハンカチで拭いてくれている。
ヒロイン優しい…。惚れてまうやろ…。
そんなちょっとお馬鹿さんな思想になっていたら、婚約者様が、こちらに走ってきた。
私の姿をみて、慌てて制服の上着を被せようとしてくれる。
あ、ここはゲームの通りなんだなと、思った。
私、ヒロインじゃなくて、悪役令嬢なのに。
嬉しくて、ニッコリ笑ってお礼を言おうとしたら、ヒロインが婚約者様の上着を乱暴に受け取り、それを私に掛けてそのまま自分の胸元に引き寄せ抱きしめた。
おぉう、メロンに顔が埋もれますよ。
「男は見ないで。見ちゃダメ。」
風邪引いちゃうから、このまま私の寮のお部屋に連れて行きます。
運ぶとかバカ言わないで。触らないでよ。
ここから近いから大丈夫。
寮は男性禁止なんだから。
この上着だけ借りていくわ。
そう言って、ヒロインは私を自分の寮のお部屋に連れて行ってくれた。
で、今お風呂。
着ていた制服を剥ぎ取られ、何故かヒロインも自分の制服を脱いで、そのまま浴室へと連れ込まれた。
私の制服を脱がしている時のヒロインの目が、肉食獣のアレだったと伝えれば、その時の私の気持ちが分かって貰えるでしょうか?
で、冒頭のシーン。
綺麗な髪とお肌だよね。
羨ましいなぁ。
尚も首筋に顔を寄せて囁くヒロイン。
本当に貴女、変態っぽいですわよ?
もう、自分で洗えますから、やめてくださる?
と、ヒロインの方向を振り向いた。
その時、私の目に写ったのは、メロンなお胸ではなく(勿論それも見たが)泣きそうな顔をしたヒロインだった。
「ごめんね、私のせいで、酷い目にあわせて」
本当は、私が水を被る筈だったんだよね?
私がくっついていたから、かわりに被っちゃったんだよね?
ごめんなさい
でも、離れるのは、ヤダ
本当は近くにいたら、また同じ目に合わせちゃうかもしれないから、離れなきゃいけないけど
でも…
はじめての女の子のお友達なの…。
ううん…お友達になりたいって思ってるの。
聞こえるか聞こえないか位の小さな、本当に小さな声で呟いた言葉は。
私のこの小さな胸に十分に響いたもので。
確かにゲームの中では、ヒロインに女の子のお友達は1人もいなかった。
十分過ぎるほどイケメンはいたけど…。
寧ろイケメンしかいなかった。
現実も、ヒロインの魅力にやられたイケメンがホイホイ湧き出ており、それに嫉妬して女の子は寄り付かなく、無視しているような状態だ。
私だって、婚約者様を取られるかもしれないので、お友達とは言いづらい関係だけど…それでも。
友達と思ってくれてるのなら。
「今度は、私が貴女の髪を洗ってあげますわ。」
お友達なら、一方的にしてもらう訳にはいけませんからね。
お友達宣言なんて恥ずかしいけど。
それでも、泣きそうな顔を笑顔に変えてくれるなら。
「さぁ、こっちにいらして、洗ってあげますわ。」
そう、答えると、感激してくれたヒロインにより、私はまた、メロンなお胸に顔を埋める事になったのだ。
だから、知らなかった。
再び、ヒロインの目が肉食獣のアレになってたなんて。