攻略対象者、悪役令嬢(仮)とデートする
またまた、攻略対象者目線。
デートしてます!多分!!
窓から入る日差しも陰り、薄暗い部屋で男女の声が響く。
「ねぇ、婚約者様。私はデートがしたいのです。」
本を読んでいる男の背中にしなだれかかり、甘えるような声で男の耳に囁いた。
「…今、まさにデート中だろう?」
読んでいる本から目を離さず、素っ気なく答えた。
そう、今日は休日。
婚約者殿にデートをせがまれ、2人は伴って、王立図書館に出向いているのだ。
「…そうですけど、違うのです。私がしたいのは、これじゃないのです。これは、いつもの日常なのです。」
最初は大人しく、本を読んでいた婚約者殿が、いきなりおんぶお化けになりながら、抗議してきた。
何処が違う?
男女2人が、連れ立ち、休日を共に過ごす。
デートとは、そういうものではないのか?
首を傾げ、デートの定義を考えていたら、最早半泣きになっている婚約者殿が、背中から這い上がり首にしがみつきながら、更に抗議してきた。
そうですけど!
違うのです!
私が求めているのは、甘い世界なのです〜〜!
2人だけで手を繋ぎながら、街を歩き、疲れたねって言いながら、1つの果汁水を飲みあい、夜も更けたら、「今夜は帰したくない」って、婚約者様に言われたいのです。
なんだそれは…。
購入予定もないのに、疲れるまで、街を彷徨い歩くのか?
それは楽しいのだろうか?
それに、自分たちは貴族の子息子女なのだから、完全に2人だけで外を歩けるわけが無いだろう?
護衛がつくに決まっているしな。
あと、2人で1つの飲み物とか、それは貴族として、金がないと思われてマズイのではないか?
最後の今夜は帰したくないは、何時も思っているから、大丈夫だ。安心して欲しい。
むしろ、今夜は帰りたくないのです。と、言ってくれても良いのだが?
許しが出るのなら、速攻で、侯爵家にお泊まりのお知らせを飛ばしますが?
と、心の中で思いを巡らせていたが、何時もの如く、敢えて口にはださない。
勿体ぶっているわけではなく、感情を言葉に乗せるのが苦手なだけだ。
その点、婚約者殿は、俺と逆なのだろう。
何事も言葉にする。気持ちいいほどに。
そこが、好ましくもあり、羨ましい。
とても可愛らしい自分の婚約者から、真っ直ぐに愛情を向けられ、好意を寄せられて嫌な男なんて居ないだろう?
尚も、婚約者様とデートがしたいのです〜!
大好きな人と、2人だけで過ごしたいのです。
と、訴える婚約者殿を背中から剥がし、自分の膝の上に乗せた。
そして、腕の中に閉じ込める。
俺は婚約者殿と一緒に過ごす日常が、とても好きで大事だと思っている。
だから、こうして一番好きな本を読む時も、婚約者殿を伴っているわけで。
「静かにしろ。ここは図書館だ。だまって、ここにいれば良い。」
そう言いながら、婚約者殿の髪にキスを落とせば…。
真っ赤になって、目を潤ませた可愛らしい顔を慌てて縦にふり、頷いている。
本当に、可愛いなぁ。
ここが、2人だけじゃないのを、感謝して欲しいくらいだ。
2人だけだったら、とっくに…ね。




