どっちにする?
2話連続投稿です。
最新話で来た方は、注意です。
私は、ゲームの中では、悪役令嬢。
ヒロインでは、ない。
ヒロインは、どこまでも真っ直ぐで、眩しい存在。
敵わないなぁと、思ってしまった。
悪足掻きするだけ、無駄なの?
敵わないなら、諦めた方が楽?
そんな思考が、グルグルと巡る。
部屋のドアがノックされた。
慌てて、クッションに埋もれさせていた身体を起きあげ、答える。
「…夕食は、いらないわ。少しだけ、調子が悪いの。お父様、お母様、お兄様に申し訳ありませんと、謝っておいて…。」
夕食の時間だと、呼びに来た侍女にそう断りを入れ、またポプンと、クッションを抱えたまま、ソファーに横たわる。
お行儀が悪いとかは、もうどうでもいい。
早く、この堂々巡りの思考から抜け出したい。
今までは、軽く考えてた。
ヒロインがゲーム通りに攻略してなかったし。
婚約者様も、ヒロインには興味なさそうだったし。
でも、今日、ゲーム通りに攻略者様がヒロインに告白してた。
今は、大丈夫でも、そのうち、婚約者様も…。
ひょっとして、まだ、ゲームのルートから、抜け出せていないのなら…私は…。
私には、婚約者様を繋ぎとめておくことは、無理なの?
思考が、絶望に、染まりそうになった時、再びドアがノックされた。
また、侍女が食事を伝えにきたのだろう。
「…さっきも伝えたけど、今日は夕食は、いらないわ。」
今度は入ってきた人物を見ずに、そう答えた。
「夕食はいらないのなら、これはどうだ?」
声の主はお兄様だ。
右手に白い封筒。
左手に怪しい色と臭いのするグラスが握られていた。
どちらか1つをお前にあげよう。
どちらでも、お前の今の悩みに役に立つと思うよ。
さて、どっちがいい?
「…お兄様…。」
私の、悩み、わかりますの?
「可愛い妹のことだからね。」
そう言って、まず右側の封筒をテーブルの上に置いた。
「これは、お前がヒロインと呼んでいる娘の秘密が書かれているもの。」
情報の使い方は、後でちゃんと教えてあげるよ。
人も貸してあげる。
3日もあれば、あの娘はあの学園から出て行くんじゃないかな?
…それって、ヒロインを追い出すってことですの?
そんな事したら、あの娘は…。
でも、あの娘がいなければ、婚約者様は私だけの…もの?
「こっちは、お前の兄が直々に作成した、魅惑的な身体になる…汁?」
首をかしげながら、テーブルに置く。
何故疑問形ですの?
何故、首を傾げますの?
怪しすぎますわ。
「さあ、どっちにする?」
俺のオススメは…聞かなくても、わかるよね?
さあ、選べ。
…正解は右だろう。
左は、悪足掻きし続けるだけ。
最悪、ヒロインに取られて、死亡エンド真っしぐら。
そんなの、答えは、決まってるじゃないか…。
震える手で、グラスを握る。
そして、一気に煽った。
ゲホッ…グッ…ゲホッ…。
口に入れた瞬間、吐き出すところでした。
お兄様、これ、中身はなんですの?
人が飲んでいい味と臭いじゃ無いと思います。
いくら、魅惑的な身体になると言われても、2度と飲みたく無いです。
それから、その封筒の中身は、捨ててください。
必要ありませんから。
私の言葉を聞いて、目を見開き、そして空になったグラスを見てから、お兄様は大爆笑した。
「相変わらず、お前はバカだなぁ」
言葉は辛辣だけど、優しく頭を撫でてくれた。
そして、封筒の中身をビリビリに破き、暖炉の中へ放り込む。
仮病で家族団欒時間をサボるのはもう、無しな。
父上と母上を心配させるなよ。
医者を手配しようとしているぞ。
後で、ちゃんと父上と母上に、顔を見せなさい。
それが出来たら、また腕立て伏せ、付き合ってやるよ。
そう言って、部屋を出て行った。
お兄様が言うように、私はバカなのだろう。
でも、悪足掻きしよう。
私には、それしか、出来ないのだから。
それが、今、再確認出来たのだから。
お兄様!色仕掛け、頑張ります!!
…でも、今、お腹痛いから腕立て伏せは明日からで、お願い致します…。
…あのグラスの中身は、何だったのですか?
前回、大暴落したお兄様株は、少しは上がりましたでしょうか?




