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Losing Penta  作者: なっちー
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0 〈Day.-67〉プロローグ

初めて投稿させていただきます。なっちーです。

拙い部分もあるかと思われますが、精一杯、描きたいことを書かせていただきます。

これから、どうか、よろしくお願いします。

 見えたのは黒いカタマリだった。そう、カタマリ。もう、眼前目一杯に広がりつつある。まるで壁だ。やけにゆっくり、全てがゆっくり動いてるように見える。そのカタマリも。自分も。

 ああ、そっか、どっかで読んだな。人間、死ぬ寸前になると、思考がバカみたいに速くなるって。

 聞こえたのは風切り音だった。それ以外は、何も聞こえない。鋭く、重く。まるで、何かが何かを引っ掻いてる音みたいだ。

 それが全てだった。今のオレの全て。それ以外の、これからオレは死ぬだとか、遺言も残せないとか、そんな思考はとうにどこか、明後日の方向に消し飛んでいた。オレとカタマリ。世界にあるのはその2つだけ。だから、次の瞬間に起こることなんて全然予想してなかった。

「うぁあ―――」

気が付けばオレは、上を見ていた。そして、背中に鋭い痛み。

その瞬間に全てが、再び動きだした。


 今は午後9時ぐらいだろうか。遅くなったバイトの帰り道、何とはなしに興味本位で入った、建ち並ぶ建物の隙間。そこから小道に出たオレは、やめときゃいいのに、探検しようなどと考えてしまった。全く知らない場所でフロンティア精神だけ携えて行動しても上手くいくはずなどない。やはり、そこでオレは少々道に迷い、わけもわからず、当てずっぽうにグルグルと歩いていた。

そうして、見てしまったのだ。

あの黒い、何か。一応生き物、なのだろうか。アレは。

身体は人の形をとり、黒く、そして、これまた黒い、煙を纏っていた。顔と思わしき部分には、2つの赤い目のようなもの。


逃げろ!


本能がそう叫んだ時にはもう遅かった。バッチリ目があってしまったオレは、一目散に背を向け逃げ出した。

だが、錯乱状態で土地勘のない道を走ったところで結果は火を見るより明らかだ。案の定、オレは袋小路に追い詰められた。

オレとその『何か』の間には3メートルほどの間合い。

ソイツはその間合いを、なんと一瞬で詰め、力任せのパンチを放ってきた。

なんの芸もない。その代わりに恐ろしく速い。

オレは、半ば無意識に腰を落としてそれを避け、ソイツの横に回った。

まぐれだった。空を切った拳は、しかし壁に直撃し、そこにヒビを作った。オレはなにをするでもなく、ただ構えて逃げる隙を窺う。

当たり前だ。戦うとか夢にも思わない。

黒い『何か』がまた動いた。今度はさっきより速かった。超速のパンチが真っ直ぐに顔に向かってくる。

さっきのようなまぐれ、起きようもない。

オレには分かった。

あの拳からこの頭に衝撃を受ければ、絶対助からない。でも足は動いてくれやしなかった。恐怖からか。絶体絶命。

どうやら、その時のようだった。オレは後ろから伸びてきた手に肩をつかまれ、そうかと思えば次の瞬間、この身体は宙を舞っていた。


「がはッ……」


気がつくと、オレは仰向けの状態から回復し、でも、無様に尻餅をついた体になっていた。黒い壁は消え、あの引っ掻き音もない。

 時計が動き出す。世界が広がる。

 あ、そっか。引きずり飛ばされたのか。オレ。

「オイ、坊主――」

 正しい世界を認識したオレの耳にまず入ってきた――というより、乱入してきたのは、如何にも粗野な感じの野太い男の声だった。

「オイッ、坊主!」

「ハ、ハイィィィ!?」

 素頓狂な声を上げたオレが認めたのは、黒い男だった。四十ぐらいだろうか。黒いボロボロの外套を着て、全く手入れの行き届いていない黒髪を風になびかせ、左手に刀。

 顔だけこちらに向けて、オレを見ている。

 足元には何か、黒いカタマリ。さっきまであんなに素早く動いてたのに。いつの間に倒れ伏している。

 ああ、この人が斬ったのか。オレは助けられたのか。状況が少しずつ呑み込めてきた。

「大丈夫か」

「···ハイ。」

 ようやくショックから立ち直った頭でオレはなんとか答えた。

「フ····」

 安心した、そう言うように男は少し笑って、オレに向き直る。

 オレはこの瞬間を、今も鮮明に覚えてる。距離は約2メートル、オレは尻餅をついて、半ばポカンとした顔で男を見上げていた。男は悠然と立ち、精悍な、そして、半ば見下したような顔つきでオレを見下ろしていた。


 遠い。果てしなく遠い。


 2メートルなのか、2万光年なのか。また時計が止まる。でもさっきとは違う。オレが捉えた世界にはその男が独りで立っているだけ。他には誰もいない。オレさえも。

 男が口を開く。

「坊主、ここは助けてやる。でもそっから先は自分で帰れ。」

 野太く、ガラガラの声が、オレに厳かに、冷ややかに、それでいてキザったらしく告げた。

「男だろ?」

今回は、プロローグのみとさせていただきました。

「掴み」というにも量の足りない文章ですが、心の隅にでも留めていただければ幸いです。

これから、なるべく毎週月曜日に投稿させていただきます。たま(?)に早くなったり、遅くなったりしますが、ご容赦ください。

それでは、よろしくお願いします!

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