二羽の水鳥と自由の騎士
あるところに二羽の水鳥がいました。スーとピーです。
二羽の住みかの湖にはいじわるな灰色のわしがいました。灰色のわしは湖を自分の好き勝手に飛びまわっていました。気に喰わない鳥や虫やお魚をいじめてしまうのです。
「おれのいうことを聞かないやつはいじめてやる」
ある日、スーとピーは絵本で“自由”というものをしりました。
「みんながありのままに生きられるなんて、いじめられないなんて、なんて素晴らしいことなんだろう」
スーが言いました。
「灰色のわしさんにもおしえてあげようよ」
ピーも言いました。
スーとピーは灰色わしに言いに行きました。
「自由はとってもたのしいよ。いじわるなんかはやめようよ。」
「みんなが笑顔になれば、きっとたのしいよ」
いじわるわしは胸をはって言いました。
「この湖がよそのわるいとりからいじめられないのは、おれが飛び回っているおかげなんだぞ。おれはみんなのためにやっているんだ。湖のみんなの自由のためにやっているんだ。それがいやなら、ここからでていけ」
スーとピーは湖から追い出されてしまいました。湖の鳥や虫や魚はしらんぷりをしました。
スーとピーは考えました。スーは言いました。
「きっとみんな、自由を持ってきてあげれば、自由のよさにきっと気づくよ」
そう言って、スーとピーは自由をさがす旅に出ました。
「でも、いったいぜんたい、自由って、どこにあるんだろう」
***
スーとピーは自由を求めて、山をこえて、川をこえて、がけをのぼって、どうやら、静かな森の中に“自由の騎士”がいるという話を聞きました。
「自由の騎士さんなら、きっと自由の在りかをしってるよね」
「会いに行ってきいてみよう」
スーとピーはまた、山をこえて、川をこえて、がけをのぼって、自由の騎士の家にいきました。
自由の騎士の家はとてもしっそのものでした。スーとピーはドンドンとドアをたたきました。
「ごめんください。ごめんください。自由の騎士さん、いらっしゃいますか?」
すると、ドアが開いて、中から自由の騎士が出てきました。
「やあ、こんにちは、二羽の水鳥さん。どんなごようじできたのかな?」
スーとピーは言いました。
「ぼくたちは自由がどこにあるのかがしりたいんです。おしえてください」
それをきいた自由の騎士は、
「そうか、そうか。教えてあげよう」
と言って、家の中へとスーとピーをまねきました。
スーとピーは自由の騎士がくれたココアとビスケットをたべながら、
「自由の騎士さん、自由っていったいどこにあるの?」
と、聞きました。すると自由の騎士は答えます。
「もう、君たちの手元にあるよ。君たちが自由なんだよ」
スーとピーは驚きました。「ええっ!」
自由の騎士はさらに続けました。
「自由というのはね、自分をたんきゅうすることなんだ。みずからのゆえを求める、だから自由だ。君たちのことなんだよ。自由は得たり、与えられたりするものではないんだ。わがままがいえることや、好き勝手にできること、お金があることだけでは自由とはいえないんだ」
「でも、みんなみんな、毎日いろんなことを感じたり、考えたりしながら暮らしているよ。湖のみんなも。それでも、やっぱり湖のみんなは自由ではないよ」
「湖のみんなの、感じたりすること、考えたりすることは、とても寂しいものなんじゃないかな。きっと、いじわる灰色わしのいうとおりに考えたり、感じたりしているのではないかな。それは、自分をたんきゅうしてはいないんだよ」
「でも、いじわる灰色わしのいうことにしたがわないと、いじめられてしまうんだ。自由であろうとしたら、灰色わしにいじめられる。ぼくたちはなにをしていいかわからないよ」
スーとピーは頭をかかえてしまいました。自由の騎士はいいました。
「君たちは、湖のみんなが自由になったらいいな、とおもっているんだよね?」
スーとピーはコクリとうなずきます。
「なら、それが君たちの自由だ。“湖のみんなが自由に楽しく暮らせるようにする”ことが、君たちの自由なんだ」
「それが、自由なの?よくわかんないよ。」
「でも、湖にはいじわるな灰色わしがいて、みんなを自由にしてくれないんだ。」
スーとピーが悲しそうなかおをして言うと、
「私がそのいじわるな灰色わしと戦うためのけんじゅつをおしえてあげよう。」
するとそこに、いじわる灰色わしが飛んできました。
***
「なにが自由だ!自分のたんきゅうだ!そんなくだらぬことをいっているから俺様が要らぬ苦労をするはめになるんだ!本当なら徴兵制にすべきなんだ!ファッシズムこそ至上なんだ!おまえらのような異分子は殺してやる!死ね。死ね。死ねぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇ!」
いじわる灰色わしは自由の騎士の目玉をつつきました。「ぐぇ」といって、自由の騎士は目玉を失ってしまいました。
「おまえのような危険な思想はいちゃいけないいんだぁ。拷問して死体になった後、おまえの穴という穴にヒルをつめこんで、大腸には全部の臓器をミンチにして詰め込んでできそこないのゲロクソソーセージにして、頭蓋骨は顔面をハンマーで砕いて頭の部分だけ残した総統の大便入れにして、筋繊維とを一本一本裂いて押しつぶしてから絵の具で着色して絨毯を作って50ドルで売ってやる」
目が見えない自由の騎士さんは一方的に痛めつけられて、甲冑の間からのぞいていた皮膚を全部はがされて死んでしまいました。
「ああ!自由の騎士さんっ!」
自由の騎士をころし終えた灰色わしは、
「おまえ達も異分子だ!もれなく殺処分だ!」
スーとピーもいじわる灰色わしに目玉をつつかれて、視力をなくしてしまいました。
「おまえ達は顔みしりだからひとおもいにころしてやる」
スーとピーはぶるぶるとふるえながら、いじわる灰色わしに聞きました。
「ねぇ。自由であろうとすることは、そんなにいけないことなの?」
「罪悪だっ!!」
スーとピーはいじわる灰色わしにくびをばきりと切り裂かれ、死にました。
その後、二度とスーとピーのような考えがおきないように、いじわる灰色わしはよその湖にいじわるをして、全部の湖をひとり占めにしてしまいました。二度とスーとピーのように自由になりたいというものはいませんでした。誰一人、自分がわからなかったのですから。
***
スーとピーは死後の世界で、自由、自分とはなんだろうとたんきゅうしながら生きました。
スーは、走るのが得意だったので、たくさん動くような生き方をしてみようと思いました。
なので、死後の世界では陸地で生きることにしました。すると、スーの孫はダチョウやチーターやカブトムシになりました。
ピーは、泳ぐのが好きだったので、ゆったりと海の底で浮かぶような生き方をしてみようと思いました。
なので、死後の世界では海の中で生きることにしました。すると、ピーの孫はペンギンやサケやクラゲになりました。
スーとピーの孫の中にはへんてこな進化をして、絶滅してしまった孫もいました。けれど、そんな孫達も、スーとピーの思いを守って、自由であり続けました。だから、スーとピーはそんな孫達を誇りに思っていました。
自由の騎士は、いじわる灰色わしにころされてしまいましたが、いまだに自由のために剣に思いを込めて、いじわる灰色わしと戦い続けています。
「私がいじわる灰色わしと戦わなかったら、自由を、自分をたんきゅうすることをだいじにしなくなった人類が、またせんそうをおこしてしまうからだよ」
<未完>
できたら、もっと童話らしいハッピーエンドを見てみたかったのですが、徳もないので説教ができず、七点八倒する話になってしまいました。わたしはこのような形でしか表現、常に自問自答し、蛮戦する姿しかないのかもしれません。
拙いながらも一表現者として私は、自由の騎士でありたいなぁ、と思うばかりです。