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6日目

 ■■■


 モモの体がなんとも気持ちがいい。

 あ”-このぷにぷにふにふにした感触がなんとも堪らん。


 ……最初は特に他意はなかったけど、2回目となるとその感触を堪能する僕です。どうにも僕自身誘惑によわいことがわかりました。それでも性的なものはないはず。はず……だと思う。


 今日は侵入者もいないことですし、昨日に引き続き『侵食』の実験もとい特訓に合わせて夢の実現に一歩踏み出そうかと思います。



 魔物化。またの名を魔堕ち。ネット小説やイラストなどで確立されたジャンルで、エロイ意味でよく描かれるものである。

 具体的に言えば、人間が魔物に成り代わってしまうこと。人間を高尚なものとすれば、動物や魔物といった低い存在へ堕ちることである。人によっては嫌いなジャンルかもしれない。だが、僕はこのジャンルが好きだ。ネット小説にしてもこのジャンルを扱っているものを漁りまくったものだ。


 この魔物化の最大の魅力は、人間の女の子が自らの意志を無視して魔物になってしまい姿形がそれまでのものと変わってしまうことにある。穢されることで浮かび上がる美。不可逆性に嘆く美。人間の意識と魔物の本能が鬩ぎ合う様がなんとも美しい物だろう。


 魔物化と一口に言っても、いろんな種類がある。どの魔物に変わるのか、それがポイントだ。


 一つは獣人だ。獣人とは獣と人間が融合したもので、俗にケモノ度と言われる程度がある。軽いものならば普通の人間にケモノ耳と尻尾が生えたぐらいだが、重いものになると姿が二足歩行ないし四足歩行の獣同然になり、獣に人間の意識が宿った感じになる。僕としては中間の体毛が生え人間の感じを残しつつ獣人化した姿が好きだ。

 獣の種類は千差万別で、犬や猫、狐に加え、獣という獣ならば獣人の範疇に入る。馬の獣人ならばケンタウロス、蜥蜴の獣人ならばリザードマンというようにそれぞれ名前がついていたりする。


 魔物化の中にあるもので外せないものが、スライムに代表される不定形体だ。特定の姿に囚われることなく自由自在に肉体を変化させることができるのがこの魔物だ。獣人と比べ、より肉体的に変化するのが醍醐味である。スライム娘へ魔物化してしまった女の子の、驚愕・絶望・葛藤などの感情が想像するだけでぞくぞくしてくる。そもそも生物としてどうなっているのか、という疑問を感じなくもないが、そこは魔物だからと片づけられる問題だ。現にスライム娘と形容出来る『クイーンスライム(幼)』のモモがいる。体を変化できるため、乳やお尻の大きさの変更が容易に行える。不定形であるが、自意識の存在により以前の人間の姿になろうとそれを模した姿を取るがスライムであるが故に完全にうまくいかない、というもどかしさを感じるようなところがスライム娘の良さだ。


 その他にも植物系のアルラウネや昆虫系のアラクネ、無機物体のゴーレムといった様々な種類の魔物がある。


 その中で、僕はミリンをどのように変えていくか。




 といっても、もう決まっているんだけどね。


 僕はモモを部屋に置いて、監禁部屋に向かった。苗床化したエリスがいる場所でもなく、すでに解放したサトウがいた場所でもなく。防音加工され外の様子が一切窺えない監禁部屋の一室に、ミリンが捕えられている。捕まえてから一度も様子を見ずにすでに丸二日経ってしまっているが、どうなっていることだろう。さすがにそのままにしておくことはせず、食事やバイタルチェックのためにスライム達に世話させている。ミリンは目を覚ましてから今までスライムしか見ていないことになる。はたして精神状態はどうなっているか、気になるな。



「やぁやぁ、ご機嫌いかがかな?」

「……最悪よ」


 いきなり部屋の扉が開いて驚いたらしく目をぱちぱち瞬かせながら、僕に悪態をつくポニーテールファイターガールのミリン。ここに来たときはノースリーブのシャツにフレアの飾りのついたショートパンツという軽装だったが、今では服のほとんどをミリンを覆うスライムによって溶かされていた。

 スライム達の手厚い看護のおかげなのかなんなのか、憔悴しているということはないようだ。それは重畳。


「つれないな、せっかく言葉を掛けてやったというのに」

「あなたは誰!? そして、ここはどこ!?」

「やれやれ、いきなり質問を矢継ぎ早にするなんて躾がなっていないね。どこの野蛮人なんだい?」

「うぐ……いいから答えて!」

「そんな言い方で答えると思う? ちょっと考えてみればわかるでしょ?」


 まったく弄り甲斐のありそうな子だ。だからこそ、魔物化させてみたいと思う。


「……教えてください、あなたは誰ですか、ここはどこですか?」

「ふん、まだ言い方が礼儀さに欠けているけどまぁいいだろう。ここはダンジョンだ、覚えているだろう、君は無謀にもここに侵入しそして敗北した。僕はそのダンジョンマスターさ」

「ダンジョンマスターっ! 私をどうするつもりっ!」

「どうもこうも、それは君次第さ。君がいい子にしているならば捕虜として好待遇で置いておこう。僕ができる範囲内で君の要望を叶えよう。

 しかし、もしも君が悪い子ならば。そうしたらお仕置きをしなければならないね。魔物たちの苗床として奉仕してもらうことも考えているよ」


 このいい子悪い子という言い方も大概だなと僕は思う。そもそもいい・悪いの判断はどこで付けるかという問題だな。あくまで主観的な判断できず、この場合僕の思惑通りいい・悪いを判断してしまえる。いい子にしていたミリンを悪い子と断定してしまうこともできてしまう。

 つくづく意地の悪い言い方だな、と思いつつ僕は鎖に繋がれたミリンの顎に手を当てて顔をこちらを見る様に持ち上げた。


「君はいったいどっちなんだい? いい子? 悪い子?」


 質問を重ねると同時に『侵食』を展開する。

 狙うはミリンの意識。『侵食』は完全に変化させるのに時間がかかるとはいえ、繊細な意識に割り込むように『侵食』してあげれば『侵食』の効果が出なくとも意識が朦朧として来る。


 今、ミリンの意識は『侵食』の影響でかなり朦朧としてきているようだ。目が虚ろになり、体から余計な力が抜けてきている。しかし、ミリンの顔は引き攣っている。それも無理はない。僕が今『侵食』でイメージしているのは、感覚の拡張なのだから。『侵食』の影響で意識が朦朧としながらも、どんどん意識が侵食され感覚が鋭敏になっていく。僕の声が頭に鳴り響き、手に結び付けられた鎖が体を縛り付け、体がじんじんと痛んでいることだろう。


「ねぇ、教えてよ」







 ■■■


 とりあえずミリンをちょっと虐めてだけに止めておいた。こういうのはじっくりじんわりとやるのが良くて、あんまり性急にやっても効果がないんだよね。継続は力なりとはよく言ったものだ。


「ねぇ、パパ」


 部屋に戻った僕にモモがすり寄って来た。モモにいろいろと勉強を教えてきてからだいぶモモも成長した。僕が教えるだけでなく魔力を使って教材を取り寄せてモモに使わせている。なぜ教材が魔力で取り寄せられるのかは考えないでおく。教材と一口に言ってもあれだが、絵本とか小説といった娯楽的なものから、学校で使う様な教科書やドリルなんかまである。

 ただの魔物というよりダンジョンマスターの参謀と呼べるくらいまでに成長している。現に高校生だった僕より頭がいいくらいだ。たった6日でだ。『クイーンスライム(幼)』ってそこまで呑み込みが早い魔物だったのか。ちょっと驚き。


「ここがわからないんだけど」

「えっと、何々? C¹‐級関数? 不動点定理?……ごめん、たぶんこれ大学の内容だと思うんだけど」

「そうなの? うーん、ごめんなさい」

「いいっていいって」



 その後、ダンジョンの設備の整備やスライム達の様子を見たりしてその日は終わりを迎えた。

 それは、寝る前のことだった。


 さて寝ようとして、寝床にモモと一緒に寝ようとして、モモが僕にもじもじとしながら何かを伝えようとした。


「あの……」

「どうしたんだ、モモ。今日はもう眠いんだけど」

「あ……あのね、パパ。あ、明日、大事な話するから」

「あ、うん」



 そう言うなりいそいそと僕の体に抱き付いて来たモモ。

 いったいどうしたんだということだろう。




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