3日目
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次の日。
いつものようにモモと戯れ、ダンジョンの設備を整えていると、新たな侵入者がやって来た。
どうやら今度は昨日見たくモンスターではなく冒険者のようだ。
冒険者とは、主に魔物を相手にしたりダンジョンに潜ってお宝を手に入れたりする職業である。冒険者の多くは荒事に向いた男が多いが、誰でもなれる上に腕に自信のある人なら楽に稼げるということで女の人もそこそこ冒険者になっている。魔物やダンジョンを相手にする他に、街からの雑多な依頼を受けて仕事することもあるので、荒事メインの何でも屋という位置付けだ。体力に自信がある人はもちろんのこと、強力な魔法が使えればそれだけ冒険者としてやっていける。
冒険者には、その職業に就く人たちが互いに助け合うために設立した『冒険者ギルド』という団体がある。冒険者ギルドは、冒険者に必要なものを取りそろえ、冒険者たちから集めた魔物やダンジョンの情報を他の冒険者に役立てる様に開示するという機能を持つ。
ダンジョンと言えば、冒険者。僕はそういう認識を持っているので、初めにダンジョンを作るという話を聞いた時に真っ先に冒険者の存在を思い浮かべた。ラノベやゲームでは定番の存在だもの。ダンジョンに冒険者が挑み、中からお宝を持ち帰る。それが冒険者なのだろうと僕は思っている。異世界に行ったらぜひ冒険者になって未知のダンジョンを攻略して名を馳せたいなと思っていた時期もあったが、今の僕は残念ながらそれは果たせそうにない。なんていったって、僕はダンジョンマスターなんだからね。
ダンジョンマスターにとって冒険者は、倒すべき侵入者であり、貴重な魔力供給源であり、そして時にはダンジョンに解き放つ魔物を生み出す苗床になりえる稀有な存在だ。
ダンジョンを運営するにあたって大事なポイントは、いかにして冒険者を招き入れ、いかにして冒険者から魔力を搾り取るかである。冒険者から魔力を搾り取る方法として、一番は冒険者を殺し肉体から直接がっぽり魔力を吸い出すことである。しかし、それではその冒険者から一回しか魔力を取ることはできないし、なにより次に来るであろう冒険者が委縮してしまうので最後の手段だ。殺す以外にも魔力を搾り取る方法があり、それは魔力を持っている冒険者から魔力を消費させてそこから吸い取っていく方法である。冒険者は、というよりこの世界に人は誰しもが魔力を持っているが、特に活動的な冒険者は往々にして常人より多くの魔力を持っていて、魔法を使ったり体力を消耗することによって魔力を周辺の空間に撒き散らす。ダンジョンに入って来た冒険者はダンジョンに入って活動するだけで魔力を撒き散らし、その撒き散らされた魔力をダンジョンは頂く。そうやって相互関係ができているのだ。殺しすぎず、適度に間引いていくのがダンジョンにとってあるべき態度だと僕は思う。
さて、僕のダンジョンにやって来た冒険者は3人。男が一人に女が二人か……なんあだ、ハーレム野郎め。羨まし、ごほん。創作系ではよくあるハーレムパーティ、実際だとそもそも女冒険者は体格的に向かず数が少なく、性的に身を守るために女だけでまとまるもんだと思っていたけど。いるんだね、こういうハーレムパーティも。ハーレムと呼ぶには少し数が少ないがするけども。
男は小ざっぱりとした感じのまだ少年って言ってもいいくらいの男で、いわゆるややイケメンだ。装備は革鎧に、両手に握るバスタードソードで、見たところ避けて攻撃するっていうスタンスかな。バスタードソードは両手で握っても片手で握ってもいいかっこいい剣だけど、使いこなすにはかなりの修練が必要だって何かで読んだとがあるけど、こいつはどうなのかな。そもそもこのダンジョンだと剣はほとんど用を為さないんだけど。スライム相手だと斬撃はほとんど無効化できるからね。次点で打撃武器、狙うなら魔法攻撃なんだよね、スライム相手だと。そこのところ考えて僕のダンジョンのスライム達には一工夫加えてあるけど。
女の一人はというと、ポニーテールがぴょこんと跳ねるカモシカのような女の子だった。男と同じくらいの年齢層だから、幼馴染とかそんな感じなのかな。装備は男の方と似た感じで革鎧を着ていて、拳には頑丈そうなガントレットが嵌めてあった。たぶん拳で殴るんだろうな。千切って投げるんだろうな、敵を。だが、残念なことにうちはスライムなんだよ、何度も言うようだけど。
もう片方の女はというと、黒いローブに身を包んだ小さな女の子だった。顔とか髪とかはローブで隠されていてうまく見えないけど、たぶん美少女と見た。手には木の杖が握られていて、おそらく魔法使いなんだろうな。実際明かりの魔法を使って辺りを見渡しているもの。
このパーティの特徴としては、男とポニテの女の子が前衛で、黒ローブの女の子が後衛ってところだろう。ダンジョンマスターとして注意すべきは、黒ローブの女の子だな。魔法使ってきそうだし。最優先で対処しないと。
このぐらいのパーティなら今の僕のダンジョンでも十分対処できそうだな。殺さないで生け捕りができそう。せっかくの異世界だ、やってみたいことがある。
さてさて、とりあえずモモを通じてスライム達に指示を出そう。
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結果。無事に全員生け捕りに出来ました。
まず最初に黒ローブの女の子を処理するために、『コモンスライム』の集団をけしかけて注意を惹いたところで背後から『ウルフスライム』を突っ込ませた。
攻撃力はほとんどないけど、機動力がある『ウルフスライム』が突っ込んでいったら軽めの黒ローブの女の子は呆気なく転んじゃったんだよ。いやー驚かせる程度のつもりが上手く行っちゃったんだよね。転んだ黒ローブの女の子は魔法詠唱させる前に『ウルフスライム』がぱっくり咥えてお持ち帰り。さすがに口をふさがれたら魔法詠唱は使えないからね。中には無詠唱で魔法を使える魔法使いがいるらしいけど、この子は違ったみたいだね。
黒ローブの女の子を処理した後は、呆気なかったね。まず男はスライム相手に何もできないし、ポニテの女の子はスライムを気持ち悪がって殴れなかったからね。無駄な消耗はさせたくなかったからがばっと包み込んでもぐもぐさせたんだけど、そうしたら二人仲良く気絶しちゃってね。あれは傑作だったよ。
もぐもぐしたスライムには丁重に愚かな冒険者たちをここまで運ばせた。目の前に並んで気絶する冒険者パーティはなかなか見てて面白かった。
僕は彼らが気絶から目を覚ます前にさっさと、今いる部屋の隣に作っておいた監禁部屋に彼らを運んで鎖に繋いでおいた。あぁ、もちろん部屋は別々だよ。その方がいろいろと面白いし。
黒ローブの女の子にはそこからさらに魔法が使えないように適度な魔力を吸い取るよう調節したスライムを体にへばりつかせておいた。こうしておくとあら不思議。口をふさがなくても魔法が使えなくなるんだよね。僕もこの世界に来てから魔力を持つようになったせいか、魔法が使えるようになったんだよ。それでそのスライムをテストしてみたんだけど、たしかに魔法が使えなくなったから効果は確かだ。
彼らが目を覚ましたら楽しみだな。
男はそのまま情報吐かせて殺すつもりだけど、女の子の方はどうしようかな。
捕えた女の子達にはいろいろ利用方法があって、1つは簡単に魔物用の苗床にすることだね。これだと苗床用の卵を埋め込むだけで準備はお終いだ。
もう一つはというと、これは僕自身やってみたかったことなんだけど、人を魔物化するってこと。ダンジョンマスターとなった僕の頭の中にそのやり方はすでにインプットされているんだけど、結構そのやり方が面倒くさい。でもやりがいはある。
さーてさて、どうしようかな。
僕はそのことの頭を巡らせながら、明日実行する用意を進めた。今日はちょいとばかし時間が足りない。お楽しみは時間のある明日に取っておくべきだろう。




