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7promise

兄が主人公の世界のはず……?

作者:

えーっと

ここはどこ?

なんで私の目の前でイケメンが心配そうな顔をしているのでしょう…



結理(ゆり)!気が付いたか?」

イケメンさんが私の頭を撫でながら何度も確認してきます。

ゆり?

それが私の名前?

でもってこの目の前のイケメンさんはだれ?


「だあれ?」

私の言葉にイケメンさんは驚いた表情を浮かべた。

「結理!俺のこと分からないのか?」

ショックを受けているイケメンさん。

「ゆり…って私の名前?」

さらなる私の言葉にイケメンさんは目を大きく開くと慌てて部屋の外に出て行った。

改めて周囲を見渡すとここはどうやら病院らしい。

どうしてわかったか?

だって枕元にプレートがあって一番下に聖病院(ひじりびょういん)って書いてあるから。

プレートには私の名前らしきものも書いてある。

碧海(あおみ)結理(ゆり) 16歳 O型』

へー、16歳なんだ

でもおかしいな……

私、数年前に成人式迎えたはずなんだけど……


ん?

碧海…?

碧海結理…………!?


<(゜ロ゜;)>ノォオオオオオ!!


たぶん、顔文字で表現するならこれだろう…


な………なんで!?

え?

私が碧海結理!?

え?

うーそーでーしょーーーーー!!



だって…


だって………


だって碧海結理って……


昔やり込んだエロゲー(男性向け)の主人公の妹の名前じゃん!!!!!



お、落ちつけ私

うん、まずは落ち着こう……

確か、昨夜は高校時代の友人の結婚式の二次会に参加した。

仕事の関係で披露宴には参加できないけど、二次会には必ず参加すると約束したからな。

で、帰りに酔っぱらった友人たちをタクシーに突っ込んで送り出した。

うん、鮮明に思い出してきたぞ。

そのあと、自分もタクシーに乗って帰ろうかと空車を捕まえて乗り込んだ。

タクシーの運ちゃんが今迄の乗客で面白かった人の話をしてくれたから退屈しなかった。

自宅まであと数メートルというところで、正面から車が突っ込んできた。


私が覚えているのはここまで…

でもって、なぜか今の私は『碧海結理』らしい…


あー

これは夢だよね……

うん、夢だ……

夢に違いない……



「結理!大丈夫か!?」

現実逃避をしていた私に再びイケメンさんが心配そうに顔を覗き込んでくる。

彼の後ろには白衣を着た医者と看護師が立っていた。

イケメンさんは看護師さんたちに追い出され、医者が診察を始めた。


「君の名前は?」

「えっと………碧海……結理……?」

「ふむ、ではさっきの青年の事は知っているかい?」

優しい声の医者(せんせい)に私は全てを打ち明けた。

え?なんで打ち明けたのかって?

だって、結理としての記憶ほとんどないんだもん。

いや、かすかにあるけど…はっきりとは覚えていないんだよね



「一種の記憶障害かな」

医者の言葉に私はがっくりと肩を落とした。

まあ、信じてくれるとは思ってなかったけどね。

医者たちは診察を終えるとさっさと退室していった。

ふむ、これからどうするか…

秋人(あに)に本当のこと言うか

結理の振りをするか…


幸い、結理の性格や行動パターンはある程度わかる。

かすかな結理本人の記憶とゲームの記憶で覚えている。

そもそもなぜ、私はこのゲームの世界にいるのだろうか。

え?なぜゲームの世界だって断言できるのかって?


医者と話している間にはっきりと思い出したんだよ。

ここは私が好きだった絵師が関わったエロゲー(男性向け)の世界そのものだってね。

前世の私が死ぬ間際に正体不明の男から

『君が大好きな世界に転生させてあげるから楽しんでね』

とかわけのわからんことを言われたことも思い出したわ。

はあ…

漫画や小説の中だけの出来事だと思ったけど……

まさか自分がゲームの世界に転生するとは思わなかったわ。


ん?

でも待てよ。

なぜエロゲー(この世界)なんだ?

どちらかと言えば乙女ゲームのほうが大好物なんだが…

とくに、乙女ゲーの元祖と言われる育成シュミレーションゲームが大のお気に入りなんだよ。

今年発売○十周年記念のイベントがあるから仕事休んで参加したいくらいに大好きだったんだよ。

なのになぜ、エロゲー(この世界)

まあ、このエロゲー(世界)も思い入れがあると言えばあるが…納得いかん


『な~に、ブツブツ言ってるの?』

突然、頭に素晴らしく私好みの美声の男の声が響いた。

「え!?」

きょろきょろする私に声の主はクククと笑った。

『ここは君が思っているとおりの世界だ』

「どういうこと?」

『声に出して言わなくても大丈夫だぞ。むしろ、独り言を聞かれたいか?』

くっ、このイケボ主の言うとおりだ。

私だけ声を出していたら盛大な独り言だ…

『理解が早くて助かる。さて、君が転生する前にも告げたけど』

覚えていません。

『うん、だからこうしてもう一度説明しに来たんだよ。本来なら転生後はノータッチなんだけどね。君は僕の同僚のせいで説明途中でこの世界に放り出されちゃったからね』

同僚のせい?どういうこと?

『まあ、そこは思い出さなくていいよ。まず簡単に説明すると、ここは君が思っている通り【七つの夢と七つの約束】の世界だ』

ああ、やっぱりな…

『あれ?なにそのがっかり感は……君の大好きな彼がいる世界だよ』

そりゃ……彼のことは好きだったよ。

二次元でなら…

『ふーん、他の子は喜ぶのに君は違うんだね』

当たり前だ!

イケメンは二次元に限るんだよ!

現実のイケメンは観賞用だけで十分!

そばにいたら確実に自分が惨めになるからな!いろんな意味で…

『うーん、でももう転生の手続き終わっちゃったし…今更変更出来ないんだよね~』

アハハと笑うイケボ主。

くそ、無駄にいい声してやがる……

『あ、そうそう。この世界はゲームの世界そっくりだけど現実だからね』

ゲーム通りに動かなくていいってこと?

『正解!ゲームどおり秋人(おにいさん)の恋の手伝いをするアシストキャラになるもよし、好きな人を見つけて自分の恋愛を楽しむのもよし、自由にしていいよ』

本当にいいの?

『うん、自由にしていいよ。君の新しい人生なんだから』

へえ~じゃあ、しばらくは様子見で自由に過ごしてみようかな。

『うんうん、新しい人生を謳歌してね♪あ、もう一つ』

なに?

まだ何かあるの?

『君にとっては重要かな?』

私にとって重要なこと?

『うん、この世界、ゲームそっくりだからゲームに登場したキャラの声はそのままだから』

!?

な、なんですと!?

『あはは、やっぱり反応した!君、声フェチだったもんね』

う、うるさい!

『だから、頑張ってね』

なにをがんばるんだよ

『え?だって君の好きな声の人物(キャラ)を落せばいつでもあの甘い声が聞けるんだよ?頑張らないの?』

ぐ……くやしい~~~

このイケボ主に反論できねえ~~~~

ああ、頑張るさ。

あの声がただで聴けるなら頑張ろうじゃねえか!

『あはは~頑張ってね♪あ、言葉遣いには気を付けなよ~じゃあ、良い人生を~』


それ以来、あのイケボ主の声は二度と聞こえてこなかった。



さて、イケボ主と脳内会話を終わらせると同時に病室の扉が開いた。

「結理ちゃん、目が覚めたんだって!?」

兄の秋人かと思ったら違った。

兄の秋人の親友であり幼馴染の柿木原(かきはら)知哉(ともや)だった。

「おい、知哉!勝手に病室に入るな!」

知哉の後から秋人も入室してきた。

「悪い、でも1か月も目が覚めなかった結理ちゃんが目を覚ましたと聞いたらいてもたってもいられなくて」

どうやら、私は1か月も昏睡状態が続いていて、先ほど目が覚めたらしい。

ふむ、状況的にはゲームの序盤(プロローグ)あたりかな?

兄の秋人は非常にモテる。

勉強もそこそこできて、運動もできる。

顔立ちもすっきりしているらしく、世間ではイケメンに分類される。

まあ、主人公だから当然と言えば当然だな。

でもって、妹の結理はかわいいといえばかわいいが平凡だ。

秋人とははっきり言って似てない!

まあ、異母兄弟だからな。

秋人と結理は両方とも母親似だ。

だから、兄妹だと一目見ただけではわからない。

なので、それを知らない女共の嫉妬をうけまくっていた。

いくら兄妹だと言っても信じてもらえず、1か月前に階段から突き落とされ意識を失い、現在に至る。


うん、簡単に言えば、秋人の事が好きな女共に妹だと信じてもらえず突き落とされたということだ。

犯人は防犯カメラにバッチリ映っていたらしいから、秋人は知り合いの弁護士に連絡して突き落とした人達(はんにん)の両親に証拠品を送りつけたらしい。

その後のことは聞いていない。

被害者の私を無視して話し進められたから『うん、現状どうなっているか分からないから、詳しいことは大人に任せる』って事になってしまったんだよね。




「で、退院はいつなんだ?」

「2~3日後だとさっき聞いたぞ」

「じゃあ、入学式に間に合うね。よかったね」

入学式?

なんのことだ?


・・・・・・・・・!


ああ!そういえば、ゲームでは結理が同じ高校に入学してくるところから始まったんだった。

つまり秋人の物語としてはまだ始まってもなかったのか…

ちなみに結理の誕生日は4月2日だ。

同学年の中で誰よりも早い誕生日なんだよ。


秋人と知哉は結理より2つ年上だから今年高校3年になる。

秋人は帰宅部でふらふらしているが、知哉は生徒会に所属している。

知哉もイケメンの分類だ。

爽やかイケメン。

私が一番好きだった(キャラ)でもあった。

ふむ、学校では必要以上に近づかないでおこう。(秋人にも)

遠くから大人しく鑑賞することにしようっと♪



何度も言うが、イケメンは二次元に限るのよ!

側にイケメンがいたら私の命がいくつあっても足りないわ!




*********


「結理ちゃん、生徒会に入らない?」

目の前で微笑んでいらっしゃる爽やかなイケメンさんは何をおっしゃっているのでしょうか。

残りの春休みを病院で過ごし、高校の入学式の前日にやっと退院できた私。

制服などは兄がしっかりと揃えてくれていた。

兄よ…

なぜ妹の服のサイズを知っている…教えたことないぞ。

問いただしたら

「結理の事ならなんでもわかるぞ!」

と胸を張って主張してきました。

うん、それ以上突っ込むと倍になって返ってくるのは分かっているので反論するのはやめました。

兄も恋人を見つければ(結理)から離れてくれるだろう……多分……


さて、話を戻して入学式から数日後。

知哉さんが私のクラスを訪ねてきました。

知哉さんが姿を見せた瞬間、女生徒たちから黄色い声が上がったのは言うまでもありません。

知哉さんはなんと生徒会の会長様でした。

その会長様直々のお誘い。

はい、断る事などできませんでした。

クラスメートたちの『イケメン生徒会メンバーの情報ヨロシク!』という熱い視線に負けました。

ええ、友人(クラスメート)たちを敵に回してはなりません。

なぜ会長、副会長以外は会長推薦なんだよ。

全員選挙で決めてくれ。

私の生徒会入りの話はあっという間に学校内を駆け巡り、兄と知哉さんの間でちょっとしたケンカが起きたのだった。

兄曰く『可愛い俺の妹を扱き使うつもりか!』

知哉さん曰く『かわいい子には旅をさせよというだろ?(いい加減妹離れしろ)』

もちろん、勝者は知哉さん。

ブツブツと文句を言う兄に上目づかいで涙を浮かべながら『お兄ちゃんは私の事、応援してくれないの?』って言ったらあっさりと了承した。

…ちょろいぜ。


さて、この学校の生徒会メンバー。

みんな、顔で選んでないか?

男も女もみんな美形なんですけど……ついでに顧問も……

平凡な私には辛いわ……

初めて生徒会室に連行された(連れて行かれた)時、すぐさま回れ右をしたかった。

……知哉さんにがっちり腰と腕を掴まれていたので出来ませんでしたが……

さすが幼馴染。

私の行動を先読みしておりました。


美男・美女ばかりの生徒会+各委員会の委員長たち。

これは、兄のファンクラブ+生徒会(+各委員会長)のファンクラブの相手にしなければいけないフラグですか!?



一通り自己紹介を終えた後、副会長と書記の先輩(兄の攻略キャラ達)から

「ふふ、可愛らしい子だこと。あの碧海君の妹とは思えないわ~」

「でも、碧海君が可愛がるのわかる気がするわ。ずっとそばに置いておきたいほどかわいいんですもの~」

と両側から抱きしめられました。

あれ?

なんで?

なんで麗しの全校生徒(男女問わず)の憧れのお姉様方から私抱きしめられているの!?

あ、兄に近づくため!?

でもそれにしては兄を貶しているような…

少々パニックです。

それを助けてくれたのは知哉さんですが…

「ダーメ!この子は俺のモノなの。手を出すなよ」

その場にいた全員に告げ、さらに私をパニックにしてくださいました。

その素敵なお声で私の耳元で言わないでください。

私の大好きなお声なんですから……

「その割には『柿木原先輩』なんだな」

ぼそっと誰かがつぶやくとお姉様たち+残りの生徒会メンバーが知哉さんに口撃を開始しました。


一対多数


勝敗は明らかでした。

お姉様方は知哉さん+男性役員に『結理ちゃんは私たちのかわいい後輩()、あんた達に絶対に渡すもんですか!』と宣戦布告をしておりました。

うーん、どうしてこうなった?


ちなみに知哉さんの言葉は兄にも伝わり、殴り合いの喧嘩になったとか…

お姉様方はそれはそれは美しい微笑を浮かべながら喧嘩を眺めていたそうです。

いったい誰が止めたんだろう…いまだ謎です。


その後、なぜか、各委員会の先輩方やクラス委員長など、やたらイケメンに付きまとわれるんだけど…

いったいどうなっているの?

そして、こいつらも無駄にいい声している。

私好みの声ばかりなのは気のせいか?



付きまとわれているけど、面白いくらいに恋愛には発展しておりません。

みな、お友達状態です。

すべて、兄のせいです。

一緒に勉強しようと誘われれば、兄も強制的に加わり。

休日遊びに行こうと誘われれば勝手に断りのメールや電話を送る。

こっそり出かけてもすぐに見つかる。


その割には兄はしっかり自分の恋愛を楽しんでいるようだ。

(わたし)』という駒をうまく使って美少女たちを次々と虜にしている…

若干ハーレム気味なのが気になるが…


兄よ…

自分の恋愛を謳歌するなら私のことは無視してくれないかな~

私も一応年頃だから恋愛はしたいんだよ……


兄の世界だから無理なのかな~











******



『あらら~あの子、自分の立場わかってないんじゃないの?』

「誰のせいでこうなったんだよ。説明なしで放り込みやがって……」

『だって、あの子本当にあのゲームのキャラの虜になっていたんですもの』

「だからって、【七つの夢と七つの約束】の世界に転生させることないだろうが」

『あら、【七つの夢と七つの約束】の兄妹作品(と同じ世界の)【七つの思い出と約束】の主人公に転生させることは決まっていたことでしょ?』

「だが、彼女はその作品をプレイする前に死んだんだぞ」

『だからこそ面白いんでしょ?予備知識なしでどういう行動をするか楽しみね~』

「おまえ……わざとだな」

『あったりまえじゃないの!こんな面白い事見逃すなんてできないわよ』

「まあ、兄の妨害から逃れて恋愛できるかは楽しみではあるけどな」

『でしょ?どうやって妨害をクリアするのか男性陣にも注目よね~』

「…………ココから先は俺たちは干渉できないから、高見の見物を楽しむか…」

『ええ、楽しみね~彼女は誰を選ぶのかしら…』



という会話が別次元でされているなど私が知ることはなかった……



補足という蛇足?

R指定ゲーム『七つの夢と七つの約束』

碧海秋人が主人公の青春ラブストーリー

交流を重ねることでヒロインたちの将来の夢が形になり、主人公がそれを手助け親交を深める。

ヒロインはシークレットを含めて7人。

妹の結理も攻略キャラだと匂わせておいて攻略出来ない完全サブキャラだったことが発売後に公式より正式発表され、一部ユーザーから追加コンテンツでもいいから結理を攻略させてくれと頻繁にメーカーに意見が届いていた。


しかし、メーカー側は結理を主人公とした乙女ゲーム『七つの思い出と約束』の制作を発表。

『七つの思い出と約束』は『七つの夢と七つの約束』と同じ世界観で主人公を女に変えて年齢制限無しにして制作。

メインキャラは男4人+女友達3人

恋愛だけじゃなくて、女同士の友情も描いている。

絵師の人気や人気声優のキャスティングもあり人気作品に。

こちらでも兄(秋人)を攻略できないことで一部ユーザーから兄を攻略させて欲しいという要望から、FDが発売されることが決定された。

FDでは兄視点・妹視点でプレイできたため男性ユーザーにも人気が出た。


という裏設定がありました。

主人公に関しては前世はヲタクでした。

気になるゲーム、漫画、小説のチェックはすさまじいもの。

特に声のいい声優(男女問わず)チェックは周りがドン引きするほど…(笑)

『七つの夢と七つの約束』は人生初のR指定ゲームでどっぷり嵌っていた。

主人公の友人キャラに惚れこんでいました。

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