ツーリング
初めての投稿です。
精一杯努力しますのでよろしくお願いします。
ある夏の日。俺はツーリングと称して自転車でエロ本を買いに行った。
いや、健全な高校二年生だったら仕方がないのではないか?まあ、童貞も卒業してないし……。
そういう部分も含めて俺は購入に踏み切ったのである。
俺の住んでいる町は山の上にあるので最寄りの本屋までは坂道をくだらないといけない。
リュックサックを背負い準備万端。行ってまいります。
坂道を自転車で下る。向かってくる風が心地よい。下りなのですごく楽。まあこれが上り坂になると大変つらいのだが……。
本屋にて保健体育の参考書を購入。我、満足なり。しかし実はこれが初めての購入なのだ。
あとは家に帰ってのお楽しみだ。
「ぜえ……ぜえ……疲れた……」
夏の暑い真昼間に自転車を押して帰るということがこんなにつらいとは思わなかった。
中学校時代は体育会系の部活に所属していたし、かといって文化系クラブに入っている今でも運動を疎かにしているとは思わない。
「仕方がない。近道を通るか」
近道というのは山道を通るという意味なのだが、いかんせん険しいのである。
だからあまり非常事態でも起きない限り通ることはないのだ。
しかし今は早く家に帰って読みたい。つまり今はそういう事態なのではないのだろうか。
俺は行き先を山のほうへ向けた。
山の麓に到着し山を見上げる。人気もなく、あるのは山の圧倒的な雰囲気だけだ。
意を決して山の中に俺は足を踏み込んだ。
おかしい。
さっきから全然進んでない気がする。もう家についてもいいはずなのに。
そしてなぜだか進むほど目の前に出現した霧は濃くなっているようにも思える。
目の前にあるのは緑だけ。と思っていたら人影のようなものが見える。
さくさくと山道を進んでいるように見える。あの人に聞いてみよう。
「すいませーん。道に迷ったんですけどー」
地元民の俺が迷うというのもおかしな話ではあるけれども、これは本当に迷ったかもしれないのだ。
人影はというと聞こえなかったのか、歩みを止めない。
俺は再度声をかける。
「すいませーん、ではこちらから向かいまーす」
ちょっと大声で言ったからか人影は肩をビクッと震わせた。
自転車を押して向かいに行こうとした瞬間、人影は急に走り出した。
「……………………」
え、ええと……………
「逃げないで下さいよーーー!!!」
俺は自転車にまたがり人影の後を追う。
徐々に距離を詰めていっている。この調子だと追いつくことができそうだ。
もう手を伸ばせば届く距離にある。
不意に人影の姿が消えた。いや、見失ったというべきか。
それを認識している最中、俺は何かに落ちた感覚を覚えた。
そして、俺は痛みもないまま気を失った。