第一章「夏の始まり」
大阪府の某市、ここの某所に平凡な某市立のH中学校が建っている。季節は夏で、天気は雲ひとつない快晴である。つまり、日光を遮るものがないということだ。
H中学校の二階の真ん中に位置する教室3-6では、ただいま授業が行われていた。時刻は三時十分、五十分授業で、二時二十五分から始まっているので残り五分である。そんな微妙な時間に、教室は殺伐とした雰囲気をかもし出していた。前記のとおり天気は快晴、季節は夏。夕方に差し掛かる頃なので、太陽はやや西に傾いている。その太陽は彼らを直撃していた。冷房はかかっているのだが、気温のせいか湿度のせいか、教室は快適な環境とは言いづらい状況にあった。まさに焼石に水。
六コマ目ということもあるのだが、体力的にも精神的にも誰もがその暑さに参っていた。その鬱憤を少しでも晴らすかのように、口々に愚痴をつぶやいていた。流石にもう限界と思った瞬間、救いのチャイムが鳴り響いた。学級委員長が号令をかけると、皆はそれぞの帰宅の準備を始めた。
しばらくすると、SHLが始まった。流石に皆も早く帰りたかったのか、極力しゃべらないようにしている。
だが、それも長くは続かなかった。H中学校は全クラスに冷房が完備してある。教室の左上側に前後二台設置している。しかし、それが稼動するのは授業中のみ、つまり、SHLでは冷房はただの機械の塊でしかならないのだ。無論、西日の直射による熱気は、教室内を蒸し風呂状態にし、次第に「暑い」や「まだぁ」の声が口々に漏れてきた。担任も早く終わりSHLを終わらせたいのか、話すスピードを少し速めた。よし、早く終わると思ったとき、担任のしゃべる口が止まった。どうやら、アレ(・・)を見つけてしまったらしい。
アレとは、後ろの黒板にある落書きである。「ANB最高」「俺様参上!?」「EDZAIL魂」など、しょうもないものである。だが、担任はそれを見逃さなかった。黒板に向かって指をさし、嫌悪の表情を浮かべながら言った。
「おい、誰や黒板に落書きしたヤツ。早く消してや、毛さんとずっとこのままやからな」
担任はそういうと、じっと落書きのほうを凝視している。この作業は、入学当初からされてきたことである。落書きしたらわかるだろうに、わざわざそれを消さないのはなぜだろうか。
結局、その数十分後にいやいやと書いた本人がその文字を消した。時刻は既に四時五分を越えている。SHLの終わる時間は、三時五十分なので十五分もオーバーしている。担任は、淡々と用を告げると学級委員が号令をし、やっとSHLは終わりを告げた。




