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過去へ

この小説はフィクションであり、実在する人物名、団体名、その他の名称とは、一切関係ありません。

 来栖 徹が住む新国寺市は、東京から少し離れた郊外にある。一之瀬家と来栖家は、江戸初期からこの土地に定住していることになっていた。近くに大きな川が流れていて、昔はよく氾濫して農作物に被害を与えていた。だが、川から少し離れると小高い丘隆地帯になっており、農耕で安定した収穫を得ていた。一之瀬家の寺は、ここの丘隆地帯の土地を領地としていて、僧兵も居たらしい。来栖家は、一之瀬家を補佐するような役割で、お寺の中の事務雑事を受け持っていた。


 徹が生まれた頃には、回りは田圃だらけであったが、急速に住宅開発が進み、高校に進学する頃には、田圃も市の中心では見かけなくなっていた。市の人口はどんどん膨らみ、都心から移住する人が増え、完全な都市型の街に生まれ変わった。


・・・!!!!!!!????・・・


眩しさがやっと収まり、目を開けられるようになったとき、周りが田圃だらけの道の真ん中に立っていることに、来栖達は気がついた。今まで、部室の中にいたのに、どうしたことなのだろうか?自分の身に起こったことに説明がつかず、来栖達は茫然と立ちつくしていた。ふと、来栖が我に返り、一之瀬 香織に詰め寄った。


「おい、いったい何をしたんだ?ってか、ここはどこなんだよ!部室はどうなったんだ?」


 周りを良く見てみると、道の先には学校が建っていた。しかし、見なれた近代的な建物ではなく、古めかしい校舎がそこにたたずんでいた。


「そうねぇ、何から説明しようかしら?」


「何でもいい、ひとつずつ説明してくれ!」


「うん、そうね。私たちは、12年前に来たのよ。」


「12年前?」


「そう」


「と言うことは、丁度、俺が幼稚園年長のときか?」


「そうね。そこにいる幼稚園児の来栖 徹ちゃんが、時代にピッタリね」


「ってことは、幼稚園児の来栖 徹にしてみれば、自分の時代に戻った、と言うことか。」


「そういうことね、逆に言うと、さっきは幼稚園児の来栖 徹ちゃんが、過去からわたし達の時代に来たということよ。」


「なるほど。さっきまでは、幼稚園児の来栖 徹は、過去からの訪問者だったが、今度は、俺達が未来からの訪問者になったわけだな。」


来栖は、自分の立場を理解した。たが、まだ謎は多い。急いで解決しようとすれば混乱を招くだけだ。ここはゆっくりと時間をかけて謎を解いて行こう、と来栖は考えた。まずは、一番の謎だ。


「香織、俺達が過去に来た目的は何なんだ?」


「ちょっと複雑だけど良い?」


 来栖は頷いた。


「まず、幼稚園児の徹ちゃん、面倒だから、とおるちゃんと呼ぶわね、とおるちゃんは、未来のわたしが過去から現在に送ったの。未来のわたしが、なぜ過去に行ったかは解からないわ。解るのは、私達がいた時代に『時間移動が起こった』ってことだけ。」


 来栖は、そこまで聞いて、また謎が深まったような顔をした。


「徹兄がいぶしむのも、もっともよ。ただ、未来のわたしが過去で窮地に陥っている事はわかったの。」


「そうか、それで過去に戻って、みんなで救出しようと考えたんだな?」


 香織は頷いた。どのような窮地に陥っているのかは、幼稚園児の徹に詳しく聞いてみなければならない。


「とおるちゃん、(何か自分で言うのも可笑しいが)、助けなくちゃならない小母さんは、どこにいるかわかるかい?」


「うん、わかるよ。幼稚園のすぐ近くだよ。」


 よし、と来栖は気合を入れた。救出に行く前に、事前に十分の情報と準備が必要だな、と考えた。途端に急にお腹が空いてきた。その時、タイミングよく、グゥゥゥゥとお腹の鳴く音が聞こえた。大野だった。


「あの~、お話中すみませんが~、俺、今日、早弁したからさぁ~、腹へっちゃた。さっきはもう夕方だったろ?ちょうど夕飯時だよ。」


「お、そうだった、徹、ラーメン食いに行こうぜ。約束しただろ?」


 渡瀬は、今の状況を理解していないようであった。まあ、周りがどう変わろうと、委細構わないのが渡瀬たる所以ゆえんではあるが。来栖は、ちょっと考えて言った。


「そうだな。もう少し状況を、とおるから聞かないといけないし、腹が減っては戦もできないからな。」


 おぅ、と渡瀬は返事をした。


 んじゃ、喜楽に行こう、と言うことになった。喜楽は、昔からこの土地で開いている中華屋である。今は、季節は、いつなんだろうか?それより、今、何時なんだ?喜楽に行ってから、色々確かめないとな、と来栖は思いながら、皆を促して喜楽に向った。

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