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「愛することはない」が流行っているそうなので、取引終了をお伝えします

作者: 紡里
掲載日:2026/05/26

 お久しぶりですね。

 王都から三日もかけてのご訪問、どうされましたか?

 なぜ敬語で話すのか、ですか?

 卒業以来初めて会うのですから、ただの知人ですよね。綿花の取引はしておりますが、こちらまで来るのは使用人でしたから。

 王都に社交に来ればいい……ですか。弟に跡継ぎが変更されましたので、私が行く意味がないですね。


 あの、私のことは結構ですので、本題に入っていただけますか。こんな田舎ですが、私も暇ではないので。

 息子さんが初夜に花嫁にむかって「お前を愛することはない」と言って、離婚の危機だと。

 はあ、王都ではそういう言葉が流行しているのですか。甥にはそんな馬鹿なことを言わないよう、注意した方がいいかな。

 え、会ったこともない息子さんに親身になれと言われましても……。

 離婚するしかないんじゃないですか?

 お嫁さんの実家の方が爵位は上なんですよね? 資金援助をしてもらうから、機嫌を損ねるわけにいかない状況なんですよね?

 結婚までこぎ着けた理由は、お嫁さんの一目惚れなんでしょう? 頼みの綱をブツリと切ってしまった。それも最悪のタイミングで。

 修復するのは、どう考えても無理じゃないですか。


 そもそも、そんな恋愛話を、なぜ中年男の私に相談するんです?

 私と妻はお見合いですよ。爵位を継承しないので、妻の実家は裕福な平民ですし。


 は? 学生時代にちょっとした諍いがあったけれど、仲直りできた? だから機嫌を直す助言ができるはずだと?

 ちょっと待ってください。

 仲直り? 誰と誰が?

 ――あなたと私が?


 …………。


 いえ、ちょっと、認識のズレがひどくて、目眩がしただけです。


 ふう。

 私の認識では、あなたの行為はイジメです。

 最初の試験で、あなたより良い成績を取ってしまった。爵位が下の田舎者なのに。

 そこから文具を隠されたり壊されたり、悪口を広められたりしましたね。とても辛い学生生活になりました。窃盗と名誉毀損です。

 ……ああ、それに暴行もありましたね。あなたの家の方が爵位は上ですし、父に反撃はするなと言い含められていました。体の痛みと悔しさで、うつむいて歩いた王都の道――嫌な思い出しかありません。


 話が逸れましたね。

 おかげ様で結婚相手を探すどころではありませんでした。

 あそこまで評判が地に落ちたら、卒業後の社交活動も難しいでしょう。仕方なく弟に跡継ぎの座を譲り、私には領地で弟の補佐をする将来が決定しました。

 あなたの頭の出来が良くなかったばかりに……実に理不尽な話ですよね。


 弟にも、私の悪い評判のせいで苦労をかけました。ただでさえ田舎の男爵家ですから、相手にしてくれる令嬢が少ないというのに。


 今さら反省されても、何も変わりません。

 綿をそちらに卸していたのは、父があなたの父君に恩義があったからです。息子の名誉より自分の受けた恩義を優先する、ご立派な父です。


 来年、父が弟に家督を譲ります。

 弟は、綿の取引先を私が決めていいと言ってくれているんですよ。ですから、そちらに納めるのは今年が最後かもしれません。

 専属契約? いいえ、一昨年の契約更新のときから、ただの「契約」になっています。帰ったら、よくご確認ください。


 ふふふ、うっかりミスで失点するのは相変わらずですね。

 三年かけて次の取引先を吟味しましたから、来年以降が楽しみで仕方ありませんよ。

 ああ、恨みがあるといっても、最後まで仕事に手は抜きませんのでご安心ください。


 ……花嫁に謝罪するのではなく、往復六日間もかけてここへ来る。それって、どうなんでしょうね。


ラストをちょっと修正。(2026年5月26日)

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― 新着の感想 ―
この元いじめっ子はここに何しに来たのか? 爵位が上の息子嫁の実家がこの田舎の男爵家と何か関係があったのでしょうか? 田舎の男爵家と?後ろ盾がある男爵家ならここまで酷いいじめはされないような気もしますが…
最後はスッキリグッバイポンコツ一家となり モヤる父親も退場しました。(予定かな?) ありがとうございますฅ^•ﻌ•^ฅ しかし、主人公父親がとにかくイラモヤしてしまった。(個人的に) 私も加害者の癖…
判断は致命的にアホそのものだけど、そのおかげで来年の取引停止という危機を知ることができた……! なんだかんだで持ってるのかもしれないな、このいじめっ子。 あらゆる所に地雷が埋まってるだけかもしれんが。…
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