表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

桜の山へむかう人

桜が散る夜だった。


花びらが風に舞って、

街の光に溶けていく。


深山さんは静かだった。

いつもより言葉が少なかった。



「山に行きませんか」


突然、そう言った。


理由は聞かなかった。

もう、分かっていた。



夜の貴船は、人がいない。


川の音だけが聞こえる。

春の終わりの水の音。


深山さんは、振り返らずに歩いていた。


迷いがなかった。



「私、分かるんです」


小さな声だった。


「ずっと待ってくれてる人がいるんです」


足が止まった。


それでも、引き止めなかった。



桜が散っていた。


風が吹くたび、

花びらが闇に消えていく。


深山さんが立ち止まった。


振り返った。


少し泣きそうな顔で笑った。


「ありがとう」


それだけだった。



その時、声がした。


僕の知らない声だった。


静かで、低い声。


「かえで」


初めて聞く名前だった。


深山さんが、微笑んだ。


その顔を見て分かった。


ああ、これが本当の名前なのだと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ