表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

桜の夜に君はおちた

夜の清水寺は、思っていたより静かだった。


観光客はまだいるのに、

昼間とは別の場所みたいだった。


舞台の上から見える京都の夜景は、

遠くまで光が続いていた。


深山さんは、しばらく黙って景色を見ていた。


「全部、見えますね」


ぽつりと呟いた。


何が、とは言わなかった。



告白しようと思っていた。


今日しかないと思った。

理由はないのに、なぜかそう思った。


言葉を探していた。


言えば何かが変わる気がした。


「深山さん」


名前を呼ぶだけで、声が少し震えた。


深山さんは振り返った。

風が吹いて、髪が揺れた。


その時、

足元で小さな音がした。


石が転がる音。


一瞬だった。


深山さんの体が傾いた。


手を伸ばした。

届かなかった。



時間が止まったように見えた。


落ちていく影。

遠くなる白い服。


何も理解できなかった。


何も間に合わなかった。



次の瞬間。


僕は円山公園に立っていた。


夜桜の下。

提灯の光。

屋台の煙。


誰かが笑っている。


夢だと思った。


でも、前にも見た光景だった。



振り返る。


深山さんが、桜を見上げていた。


何も起きていない顔で。

初めて会う夜の顔で。


その時、初めて思った。


春が、巻き戻ったのだと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ