26 メアリー・リード 2
園遊会には、どのみち出席するつもりだった。貴族として当然の事だ。兄と一緒に入場してなかで友達と一緒になれば良い。
だけど、友人はすぐに、お父様と待ち合わせとか、従姉妹を見かけたからとか言うと、さっさと行ってしまう。
ちょっと気の弱い友人を強引に捕まえて、一緒に過ごす事にした。
会場をちょっと歩くとアレクがいたが、結婚相手がぴったりくっついている。
その女となにか話すと二人が立ち上がった。
するとあっという間に人が集まって、女が一人になった。
こうなったら女になにか言ってやろうと思って、近づいた。女は一人でも楽しそうに、お皿に料理を載せてもらっている。
「ちょっと、あなた」と声をかけると、立ち止まってこちらを見て、黙っている。
「わたしはアレク様の婚約者だったのよ」と言うと、
「あら、そうでしたの」と軽く返された。
「それでは、失礼します」と軽く会釈して行こうとする彼女を、引きとめようと腕をつかんでしまった。
その拍子にお皿が落ちてしまった。
「わたくしはこれでも侯爵ですのよ。騒ぎになる前に、どこかに行って下さいな」と女に言われて、怒りが沸いてきた。
後から来たくせに大きな顔をして・・・・・アレクの妻はわたしだったのに・・・・・あの時、ちょっと気が動転したお父様が、ことを大きくしたから・・・・アレクももう一度、訪ねて来て誠意を尽くしてくれたら、結婚してあげたのに・・・・そんな思いが、いろんな思いがこみ上げて来て、
「なんですって!侯爵ですって・・・・嘘ついて・・・・酷いわ・・・・彼の事を知らないくせに・・・わたしは彼のご家族とも仲良しなのよ・・・」と怒鳴ったらしい。
正直、あまり覚えていないのだ。
それから、アレクがやって来て、あの女をかばった所。お父様がやって来て彼にくってかかった所。友人が、
「わたしは連れてこられただけ」と泣く所。あの女がその友人を慰める所。そんな光景が、頭のなかをくるくると回っていた。
気がついたら、わたしは自分の部屋にいた。
お部屋にやって来たお兄様が、
「どうして、あんな馬鹿なことをしたんだ。おまえは婚約解消した際に、ニック公爵の状態をぺらぺら喋って、わたしは、そっとおわびに行ったんだぞ。あちらは寛大で、なにもなかったからよかったものの、今日もなんであちらの夫人に絡んだりしたんだ。今回もあちらが問題にしないように、してくれた。
ただ、世の中は面白いもので、おまえと結婚したいと言う申し込みが来た。まぁ相手は年寄りで、隠居してる。茶飲み友達になって欲しいそうだ。来週、顔合わせだが、もう話は決まっている。話は以上だ。今回は父上に口出しはさせないからな」
そういうとお兄様は部屋を出て行った。
そしてわたしは、その人と結婚した。爵位は譲ったから、元ブリード辺境伯。武門の家柄らしくお父様より年上なのに、鍛えた体の持ち主だった。
少し怖い想像をしていたが、まともな性癖と言っていいと思う。痛い目に合う事もないし、王都の屋敷で暮らしていて、実家にいる時より自由だと言ってもいい。
それで、お友達との付き合いも、少しずつ復活して来た。そうだ、あの園遊会の時の気の弱い友達は、ちゃっかりアレクの奥さんと仲良しになって、勇者の弟と婚約したそうだ。
きっかけを作ったのはわたしなんだから、結婚式に呼べと言ったら、びっくりしていたが、ちゃんと招待状が届いた。式の後は、お兄さんの勇者、パーシー・レイバーグ公爵の屋敷で披露宴を兼ねたお茶会をするらしく、そちらへも招待された。
ドレスを作って楽しみに待っていたら、また神託が降りて、アレクの顔が元に戻ったらしい。そして結婚式とかパレードとかするので、弟さんの結婚式は、延期になったと連絡が来た。
がっかりしていたら、元辺境伯に勇者合同の園遊会の招待状が届いた。招待状のある園遊会。とても楽しみだ。
今度こそアレクと落ち着いて話そう。前はお父様とかあちらの奥様が邪魔してゆっくり話せなかった。
でも次は違う。アレクが遠慮しなくていいように、ゆっくりお話するんだ。
アレクの目の色の青い装身具を揃えて、わたしはその日を待った。
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