23 神託
その神託が降りたのは、後で確認すると魔王が封印されてから、五百五十五日目だった。
とにかく、その朝、司祭は王宮に使いを出した。が、すぐに思い直した司祭が自分で王宮に行った。
その知らせを聞いて王宮は勇者に使いを出した。
両目を捧げたパーシーは、朝、目覚めて今日は明るいなと思った。
「明るいなんて、久しぶりだな」と妻に話しかけて、見える事に気づいた。
「これっていいことなのか、悪いことなのか」と考え込んでいると、妻が抱きついてきて、
「いいことよ、いいことよ。この子の顔を見られるのよ」とお腹を撫でると泣いた。
「そうだね、そうだよね。良かった」と妻の背を撫でていると、王宮からの呼び出しだと知らせが来た。
こんな時にと腹が立ったが、魔王になにかあったかな?そう言えば最後にまた来るとか言ってたな・・・・と思いながら、久しぶりに妻をエスコートした。
右手をなくしたポールは、体に重い丸太が乗っている夢を見ていた。半分目覚めた時それをつかんで、どかそうとして違和感に気づいた。
違和感の正体は右腕だった。
「あなた、それどうしたの?」と言う妻の一言に彼は、
「起きたらあった」と答えた。
その会話はその後、二人でふざける時の楽しい約束事になった。
妻は馬車のなかでも右腕にすがっていた。
右足をなくしたジョージはその朝、一人だった。妻は実家に遊びに行っていたのだ。
彼は朝、起きて普通に歩いて浴室に行った。その時、彼の発した
「うわーー」と言う叫び声は彼しか聞かなかった。
王宮に出向くにあたって身支度を手伝った執事は、主人を見てびくっとしたが、冷静に騒ぐことなく対処した。
記憶をなくしたロバートは、王宮からの呼び出しに首をかしげたが、急ぎ支度するといつものように妻が支度するのを見た。
婚約時代は、こんなことさせてくれなかったから、やっぱり結婚はいいなと思ったが、それがおかしいことに気付かなかった。
城に着いたロバートは、案内の侍従について歩いたが、庭のバラを見て妻に言った、
「エスコートの真似事をしてここを散歩したのは、十の年だったかな?君と一緒にいて僕は得意でならなかったよ」
「ロバート、あなた思い出したのでは?」と妻が言うと
「思い出す?心外だな!君の事を忘れたりしないよ?忘れる?あれ?俺?みんな知ってることだ」
「あなた・・・・・よかった・・・」と二人は抱き合った。
アレクサンダー夫妻は領地にいた。それで王宮に来るのは、みなよりかなり遅れた。アレクはなんの違和感も感じず、いつものように仮面をつけていた。
アーデリアは最近、領地の土産として売り出している、片目を隠す仮面モチーフの髪飾りをつけていた。
二人のノックに答えてドアを開けたのは、ジョージだった。
「おぉみんな揃ってるな。俺たちが最後か。領地にいたから」とそこでアレクの言葉が途切れた。
「ジョォォジ!足!!」とアレクは、大声を出し、お茶を入れているポールを見て、
「ポールまで!どうして!!」と叫んだ。
すると、パーシーが立ち上がり、アレクの前まで歩いて来た。
「パーシーさん」「パーシー」とアレクとアーデリアが、驚くと、
「アレク、仮面をとってみよう」と言った。
「仮面を?だって、仮面は・・・・・大事・・・・」とアレクが、言うと、アーデリアが、
アレクの手をとって部屋の隅に向かった。アレクが仮面をとると、アーデリアがうなずいた。
久しぶりに見る、アレクがそこにいた。
国王が、勇者を城に呼んだのは、神託通りに体が元に戻ったのかを確認する為と、魔王の最後の言葉を伝える為だった。
「皆、体は元に戻ったと言う事で間違いないな」
「神託のなかで、魔王が言ったそうだ『こいつら、魔王の試練を涼しい顔で、受け止めやがって・・・・へらへらしやがって・・・・封印が解けなくなった・・・・復活も出来ない・・・・』とか」と国王が言うと、勇者たちは、
そう言えば、そんな事を言っていたなと思い出した。
「陛下、と言う事は、魔王の討伐が終わったのは、あの時ではなくて、今と言う事ですか?」とジョージが言うと
「そうだと司祭が言っておる。今、教会は過去の記録を調べておる。封印までは記録があるそうだが、その後の事は今回が初めてだそうで・・・・」
「結婚後に凱旋パレードの予定だったが、教会から待ったがかかっておってな。待たせて申し訳ない」
「凱旋パレードですか?」とパーシーが言うと、勇者たちはお互いに顔を見合わせた。
「今更だが、これはやって貰うからな」と国王が笑いながら言うと、返ってきたのはため息まじりの
「「「「「かしこまりました」」」」」だった。
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