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妹がいらないと言った婚約者は最高でした  作者: 朝山 みどり


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22/30

22 こんなことって

「役立たずの二人は起きなさい」とカールの声で二人は目を覚ました。



「食べたらすぐに薪を運んでくださいね」と言うとパンを二人に手渡した。



「なんてことなの。わたしを誰だと」とセーラが言ってると


「お母様、さっさと食べた方がいいですよ」とリリベルはパンを齧った。




「わたしは薪なんか運ばないわよ」とセーラは言うと昨日と同じように薪に座った。


 リリベルは、黙って薪を運んだ。


「あなたたちがリリベルさんとセーラさんね」と明るい声がした。見ると、気軽なワンピースを着た若い女が立っていた。


 リリベルはその服は、いい生地を使い細部のレースは質のいい物だと見てとった。


「あなたは?」


「わたしは、ルイーズ・グールド。孤児でしたが引き取られました」と答えた。


「なんですって」と言ったのはセーラだった。


「父は優しいから、あなたがたは贅沢に暮らしたでしょ・・・・・まぁわたくしもそれなりの暮らしでしたが」とルイーズが言うと手入れの行き届いた髪がさらっと動いた。


「と言うことはあなたは、これからわたくしに尽くしなさい」とセーラが言うと、


「いやよ。愚か者を見に来ただけですもの。縁が切れたって聞いたでしょ?もう忘れたのかしら」とルイーズはくすくす笑った。


「ルイーズ、一人ではダメだと言っただろう」


 この声!とリリベルがそちらを見ると、果たしてそこに立っていたのは、サイラス・ブールだった。


「お兄様、出てくるのが早いわ」とルイーズが言うと、


「早くないよ、心配じゃないか。久しぶりだね、リリベル。下手うったんだね。大抵のやつらは儲けたのに・・・・」


 反応のない二人に向かって


「もう、忘れちゃったの?ショックだな」とサイラス・ブールはお手上げと両手をあげた。


「お前も・・・・あの人の・・・・」とセーラが言うと


「あぁ、このルイーズのお兄様だよ。血はつながってないけど。同じく孤児だったんだ。本名はレイシスって言うんだ」



「お父様はいつも疲れて帰って来るから、どんなろくでなし母娘だろうと思っていたけど想像以上だわ」とルイーズが笑うと


「ルイーズ、もう戻りなさい。こんなところに長くいるのは良くないよ」とレイシスは言うと軽くルイーズの背中を押した。


「わかったわ。それではお兄様、また後でね」とルイーズは去って行った。



「おまえは恥知らずな生まれじゃないか」とセーラが言うと、


「ひどいなぁ、そんな言い方。両親が死んでしまっただけだよ」とレイシスが言うと、


「卑しい女が生んだ卑しい息子じゃないか」とセーラが言うと、


「ほんとうにそうだわ」とリリベルも一緒になって言った。


「まぁ、お好きに言っていいですが」とレイシスは肩をすくめると、



「さて、あなた方にはっきり言いますね。働きが悪いと食事はないですよ。それともすぐに娼館に行きますか?少なくとも食事は出るかもですね。骨が浮き出た女は、娼館向きじゃないですからね」とレイシスが言うと、



「リリベル、お母さまの為に娼館へ行きなさい」とセーラが言った。


「なんですって・・・・よくもそんな事を」とリリベルが、セーラに掴みかかった。



「娘らしく親に尽くしなさい」と言いながらセーラも負けずに、リリベルの髪を掴んだ。




「自分で仕向けた事とは言いながら・・・・怖い」とレイシスは呟いた。



 唸りながら地面を転げまわっていた二人が、動かなくなるとレイシスは二人に近づいた。


「あらら」と二人をそのままにして、人手を借りるためにそこを離れた。





「あらこれはひどいね、薪でなぐり合うなんて。見てたなら止めてよ」と笑いながら言う男に、レイシスは、


「怖くてさ。近寄れなかったんだ。歯が飛んだ時は肝がつぶれたよ」とレイシスが言うと


「歯がなくて、片目が・・・・・うーーん、もしかして両方とも・・・・こっちのお嬢さんもひどいね。随分憎み合ってる同士なのかい?」


「違うよ、母娘だよ」


「なるほどな。まぁ引き取るよ。このまま連れていく」と男が言った。


 走り去る馬車を見送るレイシスに声がかけられた。


「予想より早かったな」


「そうですね。父上」


「あの方たちに報告するんですか?」


「いや、ご存知だろうから・・・・」


「そうですね」とレイシスは言った。父の顔を見ないようレイシスは振り向かなかった。

誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。

とても助かっております。


いつも読んでいただきありがとうございます!

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