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妹がいらないと言った婚約者は最高でした  作者: 朝山 みどり


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20/30

20 母娘は

「お母様が、無駄使いしたから」


「なにを言うの、こんなものまで、抵当に入れていたなんて知らないわよ」


「入れてないわ。署名しただけよ。そうやってお金が入ったらお母様、さすがリリベルって・・・・・そして宝石をお買いになったわ」


「すぐに増えるってあなたが・・・・・」



「あの、奥様。王宮から・・・・」と侍女が言うと、


「あぁ、助けに来たのね。お通しして」とリリベルが言うと、


「わたしは部屋に行ってるわ」と母親のセーラは部屋を出ようとした。すると侍女は、


「いえ、お二人ともです」言った。言いながら侍女は、部屋に散らばったクッションを元の位置に戻し、クッションが当たって、傾いだ壁の絵をまっすぐにした。それから部屋を出ると客を案内して戻って来た。



「王よりの通達でございます」すぐに礼を取ろうとすると、その男は、


「どうぞ、お座りください。座って聞いていただいた方が・・・・・その倒れると危ないですので」と椅子をすすめた。


「はい、そのまま聞いて下さい。デステ侯爵閣下は投資詐欺をかなり、派手におやりになりました。被害は少なく、欲に目がくらんだ者に、いい薬となったようだ。だが、このデステ家は借金が膨らみこのままでは領民に被害が出る」


「領民は働いてますよ。税金を増やしても大丈夫ですよ。領主が困っているんですよ。被害なんて出てません」とリリベルが反論すると、


「そうですよ。領主につくすって当たり前ですよ。貴族なのにそんな事も知らないんですか?」


母親のセーラも続いてこう言った。


男は二人の反論を無視して、続けた。


「黙って聞いて下さい。わかりやすくいいますから。デステ侯爵は爵位を返還。領地は王家が一時預かる。二人は用意された家に移ること」


「それでは、手伝いの者が来ておる。身のまわりの物は持って行っても良い」と男が合図すると、女性が二人入って来て、


「わたしたちが手伝います。お部屋はどこですか?」


二人は、力なく女性を見上げたが、返事をしなかった。






翌日、セーラとリリベルは馬車二台に荷物を乗せて、長く暮らした屋敷を出た。


馬車が門を出た時、リリベルが泣き出し続いてセーラも泣き出したが、慰める者はいなかった。


夜になって、宿屋にはいり部屋に案内されたが、手伝いの者が来なかった為、二人は着替えることも出来なかった。


食事は部屋に運ばれたが、盆の上にパンとスープが載っているだけだった。


「こんなものをわたくしに食べさせるの?」とセーラが盆を二つともテーブルから払い落とした。



返事がなかった。



リリベルは、パンを床から拾うと、食べ始めた。


「なんてことをするの」とセーラは言ったが、


「いらないなら、わたしがいただきますわ」と言うリリベルの返事に、一瞬打とうとするように手を挙げたが、自分もパンを拾い上げた。



翌日の夕方、馬車は感じのいい屋敷の、門をくぐった。


二人と荷物を下ろすと馬車は、裏手に回って行った。


「ここが私たちの家ね」とリリベルが言うと、


「なってない使用人たちだわ。出迎えがない」とセーラが言った。


「ほんと、湯浴みをしたいわ」とリリベルが、自分を嫌そうに見下ろしながら言った。


「えぇ、本当に」とセーラが返した時、玄関が開き男が出てきた。



「あなた!出迎えが遅いわよ。使用人はどこなの?」とセーラが怒鳴った。

誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。

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