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妹がいらないと言った婚約者は最高でした  作者: 朝山 みどり


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18/30

18 良い話

 今日は王家が主催するお茶会だ。レイモンドは久しぶりに夫人とその母親である前侯爵の三人で、参加する。


 ドレスは、来年の小麦をあてにして、無理して新しく作った。だが、装身具は新調できなかったので、せっかく出かけると言うのに、二人共不機嫌だ。


 下手に、なにか言うと面倒なことになるので、黙っていた。




 会場では、二人とも友達に会って楽しそうにしている。レイモンドも友人と話し始めた。


 話題は、鉱山への投資だった。なんでもある領地の鉱山開発に・・・・あの時の鉱山だった。


 レイモンドは失敗したと思った。あの話に乗っていれば、今頃は宝石なんていくらでも買えたはずだった。


 顔色に出さないようにしながら、話に相槌を打っていると、男が話に入ってきた。


「おや、噂をすればボビー。あやかりたいよ」


「うまくやったんだってな」と男たちが声をかければ、


「あぁ、最初、美味い話にはトゲも毒もあると警戒したんだよ・・・・だけど調べてみると確かに鉱山が見つかったみたいで・・・・この話に賭けたんだよ。妹なんか、着飾って出かけたら、見初められていい結婚をしたよ」


 レイモンドは逃がした魚の大きさにため息が出た。




 ため息をつきながら、風にあたりにでたレイモンドは、ある男から声をかけられた。


「王子殿下」


 立ち止まって相手を見たが知らぬ男だった。


「王子ではない、侯爵だ」


「失礼しました。侯爵閣下・・・・少しお話を」


「かまわぬが、歩きながらでいいか?」とレイモンドは答えた。


 サイラス・ブールと名乗った男は


「実は助けていただきたいことが・・・」と話し始めた。



 サイラスの従兄弟の領地に鉱山が見つかった。いろいろな人に出資をお願いしてまわるが上手くいかない。とっても有望な鉱山だから、掘れば大儲けができるのに・・・・


 それで、侯爵閣下が噛んでいるとわかれば、安心して出資するだろうから、名前を貸して貰いたい。


 もちろん、ただとは言わない。お礼もするということだ。


 ようは、儲け話を持ちかけろと言う事か、とレイモンドは思った。


 すぐに返事をするのは、軽はずみだなと思ったレイモンドは後日、会うことにしてその日は別れた。




 その店に、入ると


「レイモンド殿下。こちらです」と大声で名前を呼ばれた。相手もしまったと思ったみたいで、


「騒いでしまってすみません」とまわりのテーブルに向かって頭を下げている。


「うれしくてはしゃいでしまいました。王子殿下のお力添えがあれば、投資も順調です。儲かりますよ」と話しかける声がまだ、大きかった。


 周りのテーブルの者は、投資、順調、などの単語を拾って儲け話だと耳をそばだてた。


 デステ侯爵が、鉱山の開発に加わっていると言ううわさが流れた。


 


 さて、金持ちの伯父さんの遺産を貰ったメッテ子爵は、先日の夜会のおり、バルコニーで客の話を耳にした。


『確かに王子殿下だった。保証するのか?間違いないと思うんだが、伝手がないな』


 さすが王子は慎重だった。話には乗らなかった。子爵は涼しい風にあたりながら、今聞いたことを考えた。


 王子が保証している儲け話のうわさは、耳にしていたが、単なるうわさだと思っていた。だが、どうやら本当のようだ。


 それから、しばらくしたある日、メッテ子爵は街で友人にあった。友人の連れはあの時、バルコニーにいた男だった。




 ビルバオ伯爵は、あの日そばの、テーブルに座っていた。全部は聞こえなかった、王子殿下、投資、儲かると言った単語は、しっかり耳にしていた。


 そして、ある夜会で、サイラスを見かけて、自分から話しかけた。




 レイモンドは、リリベルと園遊会に出かけた。新調のドレスを着たリリベルは、とても機嫌がよかった。


「レイモンド、聞いたぞ」と友人から、話しかけられた。


「なにを聞いたんだ?」


「儲かってるんだろ?」


「なんですって」とリリベルが割り込んだ。レイモンドは、目で合図したが、既に遅かった。まして、レイモンドは儲かってなどいない。


 友人はリリベルの迫力に負けて、鉱山への投資の話をした。



 友人と話すリリベルの姿は、注目を集めた。



 帰りの馬車で、レイモンドとリリベルは喧嘩になった。いくらレイモンドが、自分は話をしたが、投資はしていないと言っても、リリベルは信じなかったのだ。


「いくら、投資したくてもお金は、全部君たち母娘が使ってしまうから、ないんだ。投資する金なんてないんだ」


 レイモンドは、この言葉を繰り返し、


「侯爵家の体面はなにより、大事です」とリリベルも同じ事を繰り返した。



 侯爵邸に馬車が着いた時、サイラスが待っていた。

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