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「山の頂上と星の使者」 第1章-第9話



星の使者は、静かに空を見上げながら言葉を続けました。

「あなたが探し続けている答えは、ただ一つではない。

答えは、あなたがどれだけ深くその問いを掘り下げ、広げ、連動させていくかにかかっている。

自分を理解するための問いは、あなたの思考の枠組みそのものであり、あなたの存在そのものであると言っても過言ではない。」


若者はその言葉を反芻し、目を閉じて思索を深めた。

「じゃあ、問いというのは単なる問題解決のための手段ではなく、それ自体が私という存在を形作るものなのですね。」


使者はゆっくりと頷いた。

「その通りよ。問いはただの疑問ではなく、あなたが自分の内面に向き合うための窓であり、あなたの精神的進化の手段なの。

あなたの内的な世界を理解するための一歩を踏み出すことで、外界との接点をより深く、強く持つことができるわ。」


「だから、私のメモもそのためにあるんですね。」

若者は少しだけ微笑みながら、メモ帳を手に取った。

「私はそれに記録することで、思考を具体化し、整理し、視覚化していった。

でも、その先に進むためには、もっと深い問いかけが必要なんですね。」


使者は優しく微笑みながら、さらに言葉を続けた。

「その通りね。そして、本質を掴んだ思考は、単に知識を積み重ねることではないの。

それは、より深い抽象的なレベルで、異なる要素や概念を繋げ、ひとつの全体像として捉えることよ。」


若者は心の中でその言葉を繰り返しながら、再びその問いを深めていった。


「でも、使者様、ひとつ気になることがあります。」

若者は考えを整理しながら言った。

「私がメモに記録し、思考を深めていくことができても、他の人は私のようには思考できないのではないかと思うんです。

他の人々は、私が思っているように簡単に抽象的な概念や本質を掴むことができるのでしょうか?」


使者は静かに答えた。

「それが、大きな違いよ。

あなたが言うように、思考には深さと広がりがあり、誰もが同じレベルで抽象的な思考に到達するわけではないわ。

それはその人の精神の成熟度や訓練によるものだから。

誰もが最初からそのような高次の思考を持っているわけではなく、それを育てるには決して短くない時間と意識的な努力が必要なの。」


若者は、しばらく黙って考えた後に口を開いた。

「私も最初は、ただ目の前の問題を解決することだけを考えていたし、答えを出すことだけに集中していました。

でも今、本質や普遍性を掴むという視点に立って考え始めている。

それは、何かを成し遂げるための一つの方法論にすぎないのかもしれませんね。」


「その通りね。」使者はゆっくりと語った。

「本質に近づくことで、目の前の出来事に対する解釈や理解が広がる。そして、その深さが、あなたをもっと自由にし、もっと多くのものを掴む手助けとなる。

しかし、その自由さは同時に重責でもある。

自由を得るためには、それに見合うだけの力を持っていることが必要だわ。」


若者は星空を見上げ、深く息を吸った。

「重責、ですか…?」


使者は頷きながら、続けた。

「自由には責任が伴うの、自分が思考し、知識を得ることで、他者との繋がりやその世界の本質への理解も深めていかなくてはならない。

もしも、自分の思考だけに閉じ込められ、他者と共有する力を持たなければ、それは単なる知識の蓄積にすぎないから。」







※解説


この物語では、思考の深さと広がりについて、さらに深く掘り下げた教訓を描きました。

若者がメモを取ることを通じて、思考の整理と視覚化をして来たものの、その先に進むためには深い問いかけを続け、抽象的な概念を理解することが必要です。

使者の言葉は、「彼女」が言っていたことに通じています。思考は深めていくことで本質に近づき、普遍的な真理を理解することができる。

このプロセスで最も重要なのは、単に知識を集めるのではなく、その知識を深く抽象化し、他の事象と繋げて全体像を掴むことです。


物事の本質に迫るために、異なる領域や概念を横断的に繋げ、思考を広げ深化させることを、私は非常に重要視しています。

自分の思考を深め、他の事象と連動させて考えることが出来るからこそ、問題を抽象的に捉えて、他の人々とは違う視点から物事を理解し解決していけるのです。

その知識を共有し、広めていく責任があることを、使者は若者に教えているのです。



この物語を通じて、若者は思考の深さとその重要性を再認識し、次のステップへ進むためには、抽象化の過程をさらに深めていくことが必要だと理解しました。

「彼女」が行っているような、思考の抽象化と横断的な繋がりを通じて本質的な問いに向き合い、その本質を他者にも共有できる力を持つことが、最終的に自己理解を深めていけると信じています。

次回はこの寓話集でキーパーソンになる「彼女」を紹介します。

また読んで頂けると嬉しいです。

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