「山の頂上と星の使者」 第1章-第8話
若者は星の使者の教えに従い、毎日少しずつ自分の思考をメモに書き留めるようになりました。
最初は自分でも気づかない細かな変化が、日々の記録を通じて明確に見えてましたが、若者には疑問があったのです。
ある晩、山の頂上に星の使者が現れると、彼は自分の心にある疑問について質問してみました。
「使者様、私はメモを取ることを続けていく中で、ふと思ったことがあります。
私は自分の考えを整理し理解することができました。
しかし、本当の自分というものをもっと深く知りたい、という気持ちが日に日に強くなっています。
自分をより深く理解するためには、どうすれば良いのでしょうか?」
使者は少し黙って考え、そして静かに言いました。
「自分を理解するためには、深い問いを持ち続けることが重要よ。
あなたはメモを通じて、自分の思考を整理し、記録してきた。
それは大きな一歩なの、でも、次に進むためにはそのメモの中にある問いかけを深めていくことが必要だわ。」
若者は使者の言葉に耳を傾け、続けて尋ねました。
「問いかけを深めるとは、どういうことですか?」
使者は微笑みながら答えました。
「問いかけを深めるとは、自分が何を疑問に思い、どんな方向に思考を進めているかを見極め、その上で自分の思考の根底にあるものを掘り下げていくこと。
例えば、以前話した料理の配置に関する話で言うなら、なぜその秩序が生まれたのか、なぜその秩序が他のものと異なるのかを追い続けることで、その背後にある原理や法則に気づくことができるわ。」
若者は少し考えてから、言いました。
「それは、問いを単に答えを求めるために立てるのではなく、もっと深くその背後にあるものを理解するために立てるということですね。」
使者は頷きました。
「その通りよ、それが自分自身をもっと深く自分を理解するための方法になる。
そして、その問いが深ければ深いほど、あなたの思考はより広がり、あなたの本質に近づいていく、問い深く深く掘り下げていくの。」
若者は再びメモを取り出し、その言葉を心に刻みながら書きました。
「問いを深め思考を広げる。
そうすれば、自分をもっと深く理解できるのですね。」
使者は、再び静かに続けました。
「えぇ。そしてその思考の過程で、あなたが見つけた本質が他の誰かにも通じる普遍的なものなら、あなたはすでに大きな成長を遂げていることになる。
あなたの思考が単なる個人的なものにとどまらず、もっと広い範囲で共感を呼び、他者にも影響を与えるようなものになれば、それこそが本物の成長よ。」
※解説
この物語では、問いかけを深めることの重要性がテーマにしました。
若者は、メモを通じて自分の思考を整理し、自己理解を進めていきましたが、次のステップとして、自分の問いをもっと深く掘り下げていくことが必要だという事が分かりました。
問いかけを深めることで、思考がより広がり、深い理解へと繋がるという教訓が示されています。
自分の思考を単なる答えを求めるために使うのではなく、根本的な原理や法則を掘り下げていくことを大切にして
自己理解や他者理解のプロセスを、単なる表面的な答えを得る事に終始せず、背後にある本質的な問いを深めていくことで、他者にも通じる普遍的な真理を見つけ出す事が出来るのでは?と私は考えます。
問いを深めることが自己の本質を理解するための鍵となり、そしてその深さが他者にも共感を与えるような普遍的なものになったときに、その思考は最も成熟したものと言えるのではないのでしょうか。
若者が問いを深めることで、自分の本質に迫り、成長していく過程は、社会との関わりの中で自分をしっかりと確立するための方法なのです。
そして、その問いを深めることこそが精神や知性をより高次に導く要素であり、最終的には他者にも深い影響を与える力を持つようになるのだと、私は信じています。