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「山の頂上と星の使者」 第1章-第11話



満点の星が夜に瞬く夜、星の使者と若者は山頂を歩きながら、静かな風景に包まれていた。

その時、若者がふと気づいたことを口にした。


「星の使者よ、あなたが言っていた通り、私も思うのです。」

知識の深さを追い求めること、理解し合うこと、どちらも大切だということは…でも、ある日彼女が見せてくれたメモに、私は少し驚いたんです。」


使者は若者に目を向け、静かにうなずいた。

「彼女のメモ帳、貴方も「あれ」を見たことがあるのね。」


若者は少し戸惑いながらも、思い出したことを語り始めた。

「はい。私は初め、彼女が記しているメモが理論的で複雑で難解なものだと思ったんです。

しかし、実際に見せてもらうと其処にはおよそ彼女のイメージからは想像できないような、シンプルで簡単な言葉や数字が縦横無尽に書かれていたんです。」


使者はにっこりと微笑み、言った。

「それは人々が考えるよりも、ずっと深い意味があるのね。


彼女の思考がどれだけ深く、抽象的であれ、最終的にはシンプルで直感的なものに還元されることが多いわ。」


若者はますます興味を引かれた。

「彼女が言っていたのは、これは絵画で言うデッサンのようなものだと。

それを見せてもらった時、私は確かにその言葉の意味を感じました。

彼女が見せてくれたメモは、断片的でまるで一つ一つがまだ完全な形ではなく、あくまで構想の途中のように思えたのです。」


使者はゆっくりと歩みを進めながら、若者の言葉を聞いていた。

「そう、彼女のような存在にとっては、完成された理論や体系的な構築よりも、まずはその最初の断片やアイデアの兆しが大切で、それを形にしていく過程が、彼女の思考法においては重要なの。」


若者は、使者の言葉にさらに深く思考を巡らせながら続けた。

「でも、なぜ彼女はあんな簡単な言葉や数字をメモしているのでしょう?あんなにもシンプルで直感的なものが、何処に繋がっていると感じたのか、それがどんな意味を持つのか、未だ私には理解出来ないのです…。」


使者は再び若者を見つめ、優しく答えた。

「それこそが、深い思考を持つ者の特権なのだ。

シンプルでありながら、非常に豊かな意味が含まれている。

それを他者が理解するのは難しいかもしれないが、彼女自身にとっては、それが最も本質的な理解の始まりなのだ。」


若者は思索を深めながら、再びメモ帳のことを考えていた。

彼女が簡単に思える言葉を使っている理由。

それは、彼女が思考の中で本質的な「原理」を素早く捉え、そこから形を作っていくための道具だったのだろう。

「でも、簡単な言葉や数字の断片がなぜ重要なんでしょうか?」と若者は再度尋ねた。


使者は穏やかに笑い、答えた。

「それはまさに、シンプルさにこそ本質があるからね。

彼女が求めているのは、無駄を省き、余計な装飾を排除した上での真実に迫ることなのよ。

多くの人が、難解な理論や複雑な言葉に固執するけれど

本当に深い思考は、その本質を明快に表現することができるものだということを、彼女はよく知っているわ。

但し、明快と言っても難しくないとは限らないけれど。」


若者は目を開き、少しずつ理解し始めた。

「なるほど、彼女にとっては、それらの断片がまるで構想の青写真のようなもので、あくまで完成される前の形であり、その中に潜んでいる本質を掴むための道具なんですね。」


使者はうなずきながら言った。

「その通りよ、その構想がどんなにシンプルな形であろうとも、その中には計り知れない深さと広がりがあることを彼女は理解しているの」


若者はメモ帳の中の「簡単な言葉」や「数字」に込められた深い意味を思い描きながら、もう一度その事実を受け入れた。

「簡単なものの中にこそ、最も深い本質が隠されている…。


彼女が記しているのは、まさにその本質への道筋なんですね。」


使者は静かに微笑み、空を見上げた。

「そうね。しかしその道は、誰にでも開かれているわけではないけど、誰もが一歩を踏み出すことが出来る、そしてそれこそが思考の始まりなのよ。」






この物語では、シンプルさの中にこそ本質が存在するというテーマが描きました。

若者は、彼女のメモ帳に記された「簡単な言葉」や「数字」が、実は非常に深い思考の断片であり、それを形作ることで彼女が本質に迫ろうとしていることを理解し始めます。


使者の言葉を通じて、深い思考や知識の真髄は、複雑で難解なものに包まれているわけではなく、むしろシンプルな形で本質的な意味が現れることが示唆されています。

思考の本質は、余計な装飾を排除し、簡潔で直感的に表現できるものこそが最も深い理解に繋がるという事を、この物語を通じて共有出来たら嬉しいです。


彼女がメモ帳に記した「簡単な言葉や数字」といった断片的な記録は、彼女が抱える高度な思考の出発点や構想の一部であり、最終的にはこれらのシンプルな要素が一つの完成形に結びつくことを示しています。

彼女の思考は、深い本質に向かうための第一歩として、複雑な理論にこだわらず、シンプルで直感的な部分から組み立てられているのです。

その為、彼女にとっては難解な言葉や理論よりも、まずは直感的に感じることが重要であり、その「直感」を元に思考を広げていく過程が、彼女の知識の核となっている事を理解して頂けるかと思います。

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