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「山の頂上と星の使者」 第1章-第1話

この寓話集は、「彼女」の独特な思考法を象徴的な物語として描いています。

星の使者という少女が、物事の背後にある秩序や全体像をどう捉えるのかを、村の若者との対話を通じて語ります。


「彼女」の哲学は、一つ一つを個別に理解するだけではなく、それらがどのように繋がり、調和しているのかを見抜くことの重要性を説いています。寓話の中には、抽象的な概念を分かりやすく伝える具体例が散りばめられており、「彼女」の深い洞察を描きました。

あるところに、山の頂上に住む星の使者と呼ばれる少女がいました。

彼女は普通の村から来たわけではなく、昔から星々に導かれて生きてきた不思議な存在でした。

村の人々は、彼女の知識の深さに驚き、彼女の話を聞くたびに「彼女はどうしてそんなに賢いのだろう?」と疑問を持ちました。


ある日、村の若者が星の使者に尋ねました。

「あなたはどうして、こんなにも難しいことを理解しているのですか?私たちには、あなたのように物事を深く考えることができません。」


星の使者は静かに微笑んで言いました。

「私が理解しているのは、別に難しいことではありません。ただ、私が考えているのは、すべての事象がどのように繋がり合っているか、そしてその背後に隠れた秩序を見つけることだけ。それは、決して特別な才能ではなく、むしろ普通のことよ。」


若者は疑問を持ちました。

「でも、なぜあなたはその『秩序』を見つけることができるのでしょうか?私たちにはそれができません。」


星の使者は、村の広場に立って空を見上げました。

彼女は手を空にかざし、夜空に浮かぶ星々を指し示しました。

「見て、あの星たち。すべては無数の星々の中で繋がり、また動き続けている。もしあなたが、ただその星を一つ一つ見ているだけなら、その秩序を見逃すかもしれない。でも、全体を見渡し、動きや関係性を感じることができれば、すべてがどう繋がっているか、どう調和しているかを理解できる。」


若者は、星の使者が言ったことをよく理解できませんでした。

「でも、私たちは星々を見るとき、どうしてもそれぞれの星を個別に見てしまいます。その秩序を感じ取ることは難しいです。」


星の使者は静かに答えました。「それはあなたがまだ、自分の思考を限界の中で縛り付けているからよ。『一つ一つを個別に見る』という考え方が、あなたの視点を狭めているの。

だけど、もしあなたが視点を広げ、関係性や動き、そして全体像を意識することができれば、すべての物事は自然と秩序を持っていることに気付けるはずよ。」


「例えば、和食料理を見てみなさい。」と星の使者は続けました。

「あれは一つ一つの料理が並べられているように見えるかもしれないけど、それぞれの料理の配置には必ず意味がある。和食では左にご飯、右にお味噌汁が置かれるる、またそれ以外の料理の配置にも意味があるの。

見過ごしてしまいがちだけど、そうやって配置の背後にある原則を理解すれば、あなたはそれが秩序の一部だと分かるわ。  

音楽だって同じ、音符がどう配置されるか、その間の強弱やリズムの関係性を見ることで、全体の美しい調和が見えてくる。」


若者は、星の使者の言葉に耳を傾けながら、心の中で思いを巡らせました。

彼女の言っていることは、単に星や料理の配置に限ったことではなく、あらゆる物事の本質に存在する秩序を見つける方法について語っていることに気付きました。


「でも、どうすればその視点を持てるのでしょう?」と若者は尋ねました。


星の使者は微笑みながら答えました。

「それは簡単なことよ、あなたの思考が既に全体を理解するための力を持っていると信じること。

自分の頭の中で何でもかんでも簡略化することなく、一つ一つの要素がどのように調和して全体を作り上げるのかを考え続けることが大切よ。」


若者はしばらく黙って考えました。

すると、次第に星々がまるで一つの大きな絵を描いているように見え、彼の思考の中にも新たな秩序が生まれていくのを感じました。




※解説


この物語では、星の使者が「秩序」と「全体像」を見ることを教えています。

彼女が言うように、物事の本質を理解するためには一つ一つを個別に見るのではなく、その相互関係や全体を見渡すのが重要であるという事を示しています。


若者が、初めて彼女の話を聞いて理解できなかったのは、彼が物事を単独で捉えがちだったからです。

星の使者は、物事を個別の存在としてではなく、相互に関係し合う、一つのシステムとして捉える重要性を強調します。この思考法が、彼女にとっては自然であり、かつ普遍的な真理にアクセスするための方法となっているのです。


また、彼女の思考の中で「簡略化」や「分かりやすさ」を避ける理由として、物事を深層的に理解し本質に迫る為には、その深さを見失ってはいけないという考えに基づいています。

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