第3話 エルフの巣箱
「うーん……」
『うーん……』
そのご飯は黒いのも食べてもいいのかな? エルフのご飯を食べても、黒いの食べたりしない?
「どうしようかなぁ……」
『どうしようかな……』
もう少し待とうかな。お腹減ったけど……。
「キュウって鳴くからキュー……」
『お腹キュウってなるよ』
「キューは『九官鳥』ぽい――ん?九官……いや、今は名付け名付け……。えぇっと――あ、クー! クーはどうかな」
『く〜お腹減った』
「よし、クー! キミは今日からクーだ! さぁお食べ」
お、目の前にご飯きた! けど……いいの? これ、いいの? 食べても食べない?
「そんなにボクと餌を交互に見なくても……。見てたら食べにくいとか?」
エルフが何か言ってるけど……もっとわかる言葉で。
「クー、食べて良いよー。クー、お食べ」
くーたべって言ったね。ご飯のことかな? じゃあちょっとだけ試しに……美味っ! はっ! エルフこっち見てる! こっち見てるけど……怒ってないっぽい? じゃあもちょっと……美味っ! これ美味っ! 猪じゃないねこれ。黒いの、これ初めてだよ!
「クー、美味しい? クーってわかってるかな?」
またくーって言った。ははーん。このエルフ、黒いのって言えないんだな。
『黒いのだよ。黒いの』
「クー、わかった? キミはクー! クーだよ、クー。もっとお食べ」
『全然言えてないんだけど……食べるよ? 食べないでよ?』
……食べてもたぶん怒ってないし、たくされたから――いいのかな。いいや食べちゃえ。モグモ……美味っ! ジューシー! うわっ美味っ!
「クー、美味しい?」
とろけるー! これは何だ? ネズミと全然違う! 美味っ! ヘビより味が濃い……気がする!
「クー、こっちもお食べ」
それはヤマブドウだね。この肉の後にそれか。ま、いっか。お腹膨れるし――うん、いつも通りすっぱい……。 肉の味も無くなった……。もう一回肉を――! なんだこれ! 肉の味がわかりやすく! そっか、交互に食べればもっと美味しく! ……美味っ! もっと美味っ! すっぱ! こっち美味っ! あーこの気持ちをエルフに伝えたい!
『黒いの、これ好き!』
「クーってわかったんだね、クー!」
……。もういいや、クーで。黒いのより言いやすいし。今日からクーになるよ。
それから何日か経って巣から出されたよ。クーの脚に紐をつけてエルフが長いとこに革を付けてる。長いとこは羽がない翼だね。その革に留まってればいいっぽい。巣がある箱の外はでっかい巣箱だったよ! 部屋っていうんだって。変なの。その外にもっとでっかい巣箱! エルフは四角が好きなんだね、きっと。
そのもっとでっかい巣箱に、長いエルフ、長いエルフ、一つ飛ばして長いエルフがいた。飛ばしたのは――そんなに長くない。でも見覚えがあるぞ。隣のエルフと一緒に部屋を覗いてた奴だ!
「へぇ、コイツがクーか。クー、よろしくな!」
長いエルフだ。ちょっとご飯の匂いがするね。
「私も初めて見たのよ。よろしく、クーちゃん。お姉様って呼んでね」
こっちも長いエルフだ。渋ーい木の匂いがする。
「母さん、いくらケンジャフクロウでもお姉様は……」
こっちは覗いてたエルフだ。こっちも少し渋い匂い……な気がする。
「オレちょっと見た! やっぱり黒くて格好いいね!」
そして長くないエルフ……エルフ? なんか違う気がする。
「ボクの子、そろそろ『据え廻し』に出そうと思っててさ、その前に換毛だから水浴びかなと思って! 井戸だと毛が入るとマズイからね」
これはご飯をくれるエルフ――って! みんなエルフだよ! 一人多分違うけど……。言いにくいなぁもう!
「なるほど〜、さすが主。だから大桶か〜。解体小屋から持ってきてあるからよ、裏においてあるぜ」
「ありがと!」
「じゃあオレ、水汲み手伝う!」
「主らしいじゃなーい」
「ほんと、主らしいわ」
……あるじ、ね。そうか、あるじって呼べばいいか。ご飯のエルフはクーのあるじだね。他のエルフは――今はいいかな。でも……あるじってなんだろ? ま、いっか。
そしてもっとでっかい巣箱の外は――。おー、空だ! クーも飛んだ空だ! 母も飛んでるかなー? ん? なんかいっぱい色々あるな。四角が多い……やっぱりエルフは四角が好きなんだね。でもこれは丸いね。
ん? 長くないのがなんか持ってきたね。あ、水だ! 飲んでもいいのか? いっぱいあるしちょっとなら良いか。ゴクッ。うん、水だ。もういらない。あれ? あるじ? 水近くね? あるじ? あるじー!
チャポン
あるじー! ――ん? こ、これは……これは! 気持ちいいぞ! おー……なんかいいな、これ。痒いのがなくなる! ……気がする!
んふ。んふふふ。水サイコー!
渋い匂いは革鞣しで使うタンニンの匂いですね。